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第三部 未来
父と母
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(レイ視点)
「そうか、なら安心だな。」
エレノアの思いを聞き届けた後、時を同じくしてエリオスの意志を確認したルークと話をしました。
「では、次期国王は…」
「エレノアだ。」
先程見せられた、決意。自分と同じ空色の瞳に宿った熱い思い。それは、私の胸を撃ち抜きました。
先陣を切って進むエレノアと、後方で支えるエリオス。この二人なら、私たちの後に国を任せていけるはずです。
ふと心を落ち着かせると、嬉しい反面、どこか寂しい思いがあるのに気が付きました。
「二人とも、立派に育ちましたね。」
「そうだな。正直、エリオスがエメリック家の展望まで考えているとは思わなかった。」
そう言って笑うルークは、今も昔も変わりません。翡翠の瞳は今でも様々なものを見通し、私に大切なものを授けてくれます。
「子供というのは、親の知らぬ内に大きくなるものですね。」
「あぁ、親の心子知らずと言うが、知らずとも子は親の想像を遥かに超えていく。」
エレノア、エリオス。大切な大切な、私たちの子供たち。
養女になり、妻になり、親になり。他者から沢山の幸せを貰いました。その分、私も幸せを与えられる人間になろうと努力しました。
二人が幸せに過ごせるなら、どちらが王になっても構いません。けれど私は王妃。国のことも幸せにしなければなりません。
なので、次代の王となるエレノアにはもう少しお転婆を収めてもらうとしましょう。それを伝えるのは、母の務めです。
窓から吹き込んだ優しい風が頬を撫でます。季節は初夏。ここ最近は天気が安定しているので、秋には豊作が見込めるでしょう。冬が来れば、みんなで手を取り合って寒さを越します。そして、また、春が来ます。
とめどなく巡る季節と時間は誰にも止められません。隣に立つルークも国王となり、父となりました。だからこそそれに振り落とされないよう、一生懸命生きるのです。未来に種を残す植物のように、私たちもより良い未来のために様々なもの残します。
とはいえ私は、私の務めを全うするだけなのです。
それが、私の義務であり幸せですから。
「そうか、なら安心だな。」
エレノアの思いを聞き届けた後、時を同じくしてエリオスの意志を確認したルークと話をしました。
「では、次期国王は…」
「エレノアだ。」
先程見せられた、決意。自分と同じ空色の瞳に宿った熱い思い。それは、私の胸を撃ち抜きました。
先陣を切って進むエレノアと、後方で支えるエリオス。この二人なら、私たちの後に国を任せていけるはずです。
ふと心を落ち着かせると、嬉しい反面、どこか寂しい思いがあるのに気が付きました。
「二人とも、立派に育ちましたね。」
「そうだな。正直、エリオスがエメリック家の展望まで考えているとは思わなかった。」
そう言って笑うルークは、今も昔も変わりません。翡翠の瞳は今でも様々なものを見通し、私に大切なものを授けてくれます。
「子供というのは、親の知らぬ内に大きくなるものですね。」
「あぁ、親の心子知らずと言うが、知らずとも子は親の想像を遥かに超えていく。」
エレノア、エリオス。大切な大切な、私たちの子供たち。
養女になり、妻になり、親になり。他者から沢山の幸せを貰いました。その分、私も幸せを与えられる人間になろうと努力しました。
二人が幸せに過ごせるなら、どちらが王になっても構いません。けれど私は王妃。国のことも幸せにしなければなりません。
なので、次代の王となるエレノアにはもう少しお転婆を収めてもらうとしましょう。それを伝えるのは、母の務めです。
窓から吹き込んだ優しい風が頬を撫でます。季節は初夏。ここ最近は天気が安定しているので、秋には豊作が見込めるでしょう。冬が来れば、みんなで手を取り合って寒さを越します。そして、また、春が来ます。
とめどなく巡る季節と時間は誰にも止められません。隣に立つルークも国王となり、父となりました。だからこそそれに振り落とされないよう、一生懸命生きるのです。未来に種を残す植物のように、私たちもより良い未来のために様々なもの残します。
とはいえ私は、私の務めを全うするだけなのです。
それが、私の義務であり幸せですから。
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