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第三部 未来
隣国の王族
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「そういえば、お茶会の準備は順調?」
「もちろん。久しぶりにみんなと会えるから、気合いが入るわ。」
隣国、グレシアナ王国はハルティア王国と友好関係にある。特に、両王家は公私共に親交が深いことで有名だ。
その影響もあって、両国の間ではお茶会が年に数回ほどの頻度で行われている。なので、グレシアナの王族とは小さい頃から友人だ。そのお茶会が、一月後に迫っていた。今回はハルティアの王宮で開催される。
あくまでもプライベートなものだが、両王家とそれに近しいものが参加するので、警備や料理にも気は抜けない。いつもなら母様が準備するところだけど、私も成人を間近に控えているということもあって、準備に参加することになっている。今は母様に教わりながら最終調整の真っ最中だ。
「ハルティア王国からはフィーお姉様が初めて参加するのよ。」
「エメリック穣が?」
改めて、私は参加者を思い出す。
グレシアナ王国からは王妃クレア殿下、王太子フェリクス殿下とその婚約者アメリア、第二王子クラウド殿下。
ハルティア王国からは私とフォルカー、エリオス、母様。そして初参加であるエメリック公爵家のフィーお姉様…オフィーリア・エメリック。彼女は私の従姉にあたる人で、小さい頃から優しくて頼りになる大好きなお姉様だ。王家に近しい血筋を持つことから、ハルティアの貴族代表として参加することになっている。
レオナルド陛下は予定が合わず参加できないと残念がっていた。父様もそれに合わせて今回は参加を見送っている。
「今年からリナリア殿下は来られないんだね…」
「遠方に嫁いでしまったものね。」
寂しくなるな、と婚約者は言った。私だってそれは同じだ。
グレシアナ王国の第一王女リナリア。昨年、成人してすぐ海を越えた国の王子妃になった彼女は、そう簡単に他国には渡れない身。恐らくはもうしばらく会えない年月が続くだろう。
「けれど、エレノアが準備したお茶会は楽しみだ。」
「特別なものでは無いわよ。」
「わかってる。でもエレノアが一生懸命準備してきたのをよーく知っているのは、王妃殿下と僕だけだからね。」
「もう…」
フォルカーは私の心を惑わせる。
最近はミルクティーの瞳に見つめられると、何故かドキリとしてしまう。やましい事をしている訳では無いのに、どうしてなのだろう。不思議でたまらない。彼がふにゃりと柔らかく笑うと、ほら、また心臓が跳ねた。
幼い頃の記憶。
今と同じ柔らかい笑顔の彼と、空色の瞳を輝かせる私。婚約したばかりの頃の記憶。
この感覚は、そこから既に始まっていたのかもしれない。
「もちろん。久しぶりにみんなと会えるから、気合いが入るわ。」
隣国、グレシアナ王国はハルティア王国と友好関係にある。特に、両王家は公私共に親交が深いことで有名だ。
その影響もあって、両国の間ではお茶会が年に数回ほどの頻度で行われている。なので、グレシアナの王族とは小さい頃から友人だ。そのお茶会が、一月後に迫っていた。今回はハルティアの王宮で開催される。
あくまでもプライベートなものだが、両王家とそれに近しいものが参加するので、警備や料理にも気は抜けない。いつもなら母様が準備するところだけど、私も成人を間近に控えているということもあって、準備に参加することになっている。今は母様に教わりながら最終調整の真っ最中だ。
「ハルティア王国からはフィーお姉様が初めて参加するのよ。」
「エメリック穣が?」
改めて、私は参加者を思い出す。
グレシアナ王国からは王妃クレア殿下、王太子フェリクス殿下とその婚約者アメリア、第二王子クラウド殿下。
ハルティア王国からは私とフォルカー、エリオス、母様。そして初参加であるエメリック公爵家のフィーお姉様…オフィーリア・エメリック。彼女は私の従姉にあたる人で、小さい頃から優しくて頼りになる大好きなお姉様だ。王家に近しい血筋を持つことから、ハルティアの貴族代表として参加することになっている。
レオナルド陛下は予定が合わず参加できないと残念がっていた。父様もそれに合わせて今回は参加を見送っている。
「今年からリナリア殿下は来られないんだね…」
「遠方に嫁いでしまったものね。」
寂しくなるな、と婚約者は言った。私だってそれは同じだ。
グレシアナ王国の第一王女リナリア。昨年、成人してすぐ海を越えた国の王子妃になった彼女は、そう簡単に他国には渡れない身。恐らくはもうしばらく会えない年月が続くだろう。
「けれど、エレノアが準備したお茶会は楽しみだ。」
「特別なものでは無いわよ。」
「わかってる。でもエレノアが一生懸命準備してきたのをよーく知っているのは、王妃殿下と僕だけだからね。」
「もう…」
フォルカーは私の心を惑わせる。
最近はミルクティーの瞳に見つめられると、何故かドキリとしてしまう。やましい事をしている訳では無いのに、どうしてなのだろう。不思議でたまらない。彼がふにゃりと柔らかく笑うと、ほら、また心臓が跳ねた。
幼い頃の記憶。
今と同じ柔らかい笑顔の彼と、空色の瞳を輝かせる私。婚約したばかりの頃の記憶。
この感覚は、そこから既に始まっていたのかもしれない。
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