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第三部 未来
婚約者と宮廷勢力
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(エレノア視点)
父様から軽くお叱りを受けた翌日、私は婚約者とお茶を飲んでいた。
「エレノア、ランツキー伯爵を捕らえたのは本当?」
「うん。」
私の返答に、婚約者は苦笑いしながらため息をつくという器用さを発揮した。どことなく父様に似た雰囲気だ。
「父上も心底驚いていたよ。また王女殿下に先を越された、ってね。」
「ライル侯爵様が?」
婚約者のフォルカー・ライル侯爵令息はライル侯爵家の次男だ。
彼の父、ライル侯爵は優秀な法官であり、リアムお祖父様の腹心として活躍している。また、現ユーゼ伯爵と共に外交問題を解決した手腕を認められたことで、数年前に伯爵から侯爵に陞爵した。そんな侯爵からの反応は、私自身も驚きを隠せない。
「けど、もう無茶はしないでよ。君は王女であり、僕の大切な婚約者なんだから。」
『大切な婚約者』の言葉に胸がドキンと跳ねた。けれどそれを悟られるのはなんだか悔しいので、すまし顔で話を続ける。
「次からは気をつけるわ。」
「それ、何回も聞いたよ。」
◇◇◇
父様が王太子だった頃、ハルティア王国では革命が起こった。水面下で勢力を広げていた、エメリック公爵家率いる革命派によって。
王位簒奪を目論んだ二大公爵の片翼は滅亡し、ラウス王は退位となった。誰の血も流れない革命だった。そこから父様が即位し、宮廷は大規模粛清が行われた。ラウス愚王の陰で甘い汁を啜っていた者たちは次々と捕らえられた。この間捕まえたランツキー伯爵もしぶとく残ったその一人だ。
それからは、実力主義を掲げた新しい制度を造り上げている。
「宰相閣下が引退を決めたそうだね。」
「そうね。宮廷内の勢力図が書き変わってしまうかもしれないわ。」
宰相の座に着くお祖父様が引退を決定。この報せはすぐさま宮廷内に駆け巡り、役人たちの間に激震をもたらした。
公爵位はケイト伯父様が継がれるとして、問題は宰相。後任として有力なのはライル侯爵やユーゼ伯爵、加えてノクター伯爵も最近は功績を残している。
お祖父様の引退に上手く適応した者が、十年後は絶大な権力を持つだろう。
「問題は、次の宰相が宮廷を掌握できるかよ。」
「手厳しい意見だね。」
フォルカーは苦笑いしつつ、否定はしない。宰相は役人のトップなのだから、宮廷勢力をコントロールし王家を支える手腕が求められるのは言うまでもない。仕事が出来る、それだけでは務まらない役職だ。だからこそ、望んで宰相にならなかった者は歴史上いくらでもいる。その点、お祖父様はずば抜けた能力を持っていた。
父様から軽くお叱りを受けた翌日、私は婚約者とお茶を飲んでいた。
「エレノア、ランツキー伯爵を捕らえたのは本当?」
「うん。」
私の返答に、婚約者は苦笑いしながらため息をつくという器用さを発揮した。どことなく父様に似た雰囲気だ。
「父上も心底驚いていたよ。また王女殿下に先を越された、ってね。」
「ライル侯爵様が?」
婚約者のフォルカー・ライル侯爵令息はライル侯爵家の次男だ。
彼の父、ライル侯爵は優秀な法官であり、リアムお祖父様の腹心として活躍している。また、現ユーゼ伯爵と共に外交問題を解決した手腕を認められたことで、数年前に伯爵から侯爵に陞爵した。そんな侯爵からの反応は、私自身も驚きを隠せない。
「けど、もう無茶はしないでよ。君は王女であり、僕の大切な婚約者なんだから。」
『大切な婚約者』の言葉に胸がドキンと跳ねた。けれどそれを悟られるのはなんだか悔しいので、すまし顔で話を続ける。
「次からは気をつけるわ。」
「それ、何回も聞いたよ。」
◇◇◇
父様が王太子だった頃、ハルティア王国では革命が起こった。水面下で勢力を広げていた、エメリック公爵家率いる革命派によって。
王位簒奪を目論んだ二大公爵の片翼は滅亡し、ラウス王は退位となった。誰の血も流れない革命だった。そこから父様が即位し、宮廷は大規模粛清が行われた。ラウス愚王の陰で甘い汁を啜っていた者たちは次々と捕らえられた。この間捕まえたランツキー伯爵もしぶとく残ったその一人だ。
それからは、実力主義を掲げた新しい制度を造り上げている。
「宰相閣下が引退を決めたそうだね。」
「そうね。宮廷内の勢力図が書き変わってしまうかもしれないわ。」
宰相の座に着くお祖父様が引退を決定。この報せはすぐさま宮廷内に駆け巡り、役人たちの間に激震をもたらした。
公爵位はケイト伯父様が継がれるとして、問題は宰相。後任として有力なのはライル侯爵やユーゼ伯爵、加えてノクター伯爵も最近は功績を残している。
お祖父様の引退に上手く適応した者が、十年後は絶大な権力を持つだろう。
「問題は、次の宰相が宮廷を掌握できるかよ。」
「手厳しい意見だね。」
フォルカーは苦笑いしつつ、否定はしない。宰相は役人のトップなのだから、宮廷勢力をコントロールし王家を支える手腕が求められるのは言うまでもない。仕事が出来る、それだけでは務まらない役職だ。だからこそ、望んで宰相にならなかった者は歴史上いくらでもいる。その点、お祖父様はずば抜けた能力を持っていた。
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