【完結】虐待された少女が公爵家の養女になりました

鈴宮ソラ

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第三部 未来

お転婆王女

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「……それで?護衛もつけず、何をしたんだ?」
 ここは執務室。ゴゴゴゴ、という音さえ聞こえてきそうなほど物々しい空気が流れる中、私は父様と一体一で向かい合っている。

「王都民の生活を視察してきました。」
私はすました顔で答える。
「もっと他にあるだろう?」
しかし父様は全てお見通しのようだ。

「…ランツキー伯爵の、人身売買の証拠を掴んできました。」
「その方法は?」
もうこうなれば仕方がない。私は元気よく、正直に答えた。
「現場に乗り込んで、捕まえてきました!」
「………そうか。」

 父様は大きな大きな、特大のため息をついた。
「まぁ、伯爵の罪を暴いたのは良い。むしろ素晴らしい功績だ。だが、もう少し自分が王女であると自覚しなさい、エレノア。」

 私は知っている。父様は手柄さえ立てれば強く怒鳴ったりはしないことを。お父様の胃が限界に達する前に限るけれど。そこまでしてしまうと母様に怒られてしまうから。





 私の名はエレノア・ハルティア。ハルティア王国の第一王女だ。
 近頃きな臭い動きをしているランツキー伯爵を調べていたら、人身売買の疑念が生まれた。そこで彼をつけて王宮を抜け出し、現場を取り押さえた。そして騎士団に突き出したところ、国王である父様に呼び出された訳だ。

「姉上、今度は何をしたんですか?」
「犯罪者を捕まえただけよ。」
「その方法が問題なんじゃないですか……」

 弟のエリオスも呆れる通り、自分でもお転婆だという自覚はある。でも止められない。一度気づいてしまえば、私の正義は鉄槌を下そうと躍起になるからだ。



 悪は許されないことだ。様々な悪の形があり、それに手を染めてしまった理由も千差万別。貧しさ、怒り、欲望…どうしようもない理由もある。けれど、悪は許されないことだ。
 私は王族として、民が悪に染まらないようにしたい。そのために、悪を弾劾し国を豊かにする。そのために、自分の身を捧げることが王族の使命だと思っている。

「その思想は良いんですけど、せめて事前に連絡するとか、そういうことはできないんですか?」
「考えるより先に動いちゃうんだよねぇ…」
むしろ動きながら考えている気もするなぁ、としみじみ思う。

 やっぱり呆れ顔のエリオスと話していると、心地よい春風が顔を撫でた。春を告げる鳥の声も聞こえる。もうすぐ、父様と母様の結婚記念日だ。せめて、記念日までは大人しくしていよう。そう誓った春の日だった。












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 第三部は、ルークとレイの娘エレノアが主人公になります。ですがエレノア視点とレイ視点が多く入れ替わります。
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