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5章 決着
これからの形
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その後、場は解散となりました。微妙そうな顔をした貴族たちはゾロゾロと出ていきましたが、私たちは呼び止められました。
「ハルティア陛下、エメリック穣。此度は我が国のいざこざに巻き込んでしまったこと、ここに謝罪する。」
重々しい声で陛下は謝りました。
「謝罪を受け入れます。これからは同じ事態がないようにしてください。」
そしてルークは、国王としてそれを受け入れました。
「肝に銘じよう。望むものはあるかな?」
その質問に、ルークは私の方を向きます。私が決めていい、という事でしょう。
ただ、要求が思いつきません。非情に外交をするならば、ここで無茶な要求をしても多少は呑んでくれると思います。何せ国王の婚約者となれば準王族ですから。ですが私はそんなものは望んではいません。しかし、何も無いのでは貴族たちから侮られる可能性もあります。
そこで、私は一つお願いをする事にしました。
「では、以後も平和の続く限りハルティアと友好関係を続けてくださいませ。」
「もちろんだ。エメリック嬢の寛大な心に感謝する。」
快諾した陛下は、満面の笑みを浮かべました。
◇◇◇
これからのことは、決まっています。
私たちはハルティア王国に帰らなければなりません。いつまでも国王不在とはいきませんから。
クレア様たちは、貴族たちを掌握し続けていかなければなりません。まだ納得しきれていない人も多いようでしたし、こればかりは年月をかけて分からせていくしかありませんから。そこは、クレア様と王太子殿下の手腕に期待ですね。
クレア様が殿下と共に陛下へ向き直りました。陛下はまた、あの茶目っ気ある笑顔で玉座に座っています。
「陛下、先程は……ありがとうございました。」
「はて、なんの事かな?」
頭を軽く掻きながら、もう歳かのぉ、とボヤきました。瞳をうるませているクレア様は、そんな陛下の様子にはにかみながら答えます。
「私を侯爵にして下さったことです。」
「あぁ、そのことか。」
陛下はニッコリと笑って答えます。
「娘にサプライズプレゼントをするのは、父親の嗜みであろう?」
「父親……はい、そうですね。」
二人が穏やかに笑います。そこには新しい親子がありました。
「ありがとうございます。お、お義父さま。」
「はは、年甲斐もなく照れるものだなぁ。」
と、後ろから王太子殿下がクレア様に抱きつきました。か、顔と顔が近いですね。
「れ、レオ様?」
戸惑いつつ、クレア様は頬に赤みがさします。殿下は黙りこくったまま、クレア様の肩に顔を埋めて離しません。
「お前も狭量な奴だのぉ。これしきのことで嫉妬するでない。」
「……余計なお世話です。」
ボソリと呟く殿下。やはりそれは、新たにできた家族の形でした。
ふと、左手に温もりを感じました。そちらに目を落とす、ルークが指をからませています。トク、トク、と心臓の音が小さく聞こえてきそうな気がしました。
殿下のような熱烈な愛情表現では無いものの、ルークの思いやりが伝わってきます。
これが、私たちの形なのだと思いました。
「ハルティア陛下、エメリック穣。此度は我が国のいざこざに巻き込んでしまったこと、ここに謝罪する。」
重々しい声で陛下は謝りました。
「謝罪を受け入れます。これからは同じ事態がないようにしてください。」
そしてルークは、国王としてそれを受け入れました。
「肝に銘じよう。望むものはあるかな?」
その質問に、ルークは私の方を向きます。私が決めていい、という事でしょう。
ただ、要求が思いつきません。非情に外交をするならば、ここで無茶な要求をしても多少は呑んでくれると思います。何せ国王の婚約者となれば準王族ですから。ですが私はそんなものは望んではいません。しかし、何も無いのでは貴族たちから侮られる可能性もあります。
そこで、私は一つお願いをする事にしました。
「では、以後も平和の続く限りハルティアと友好関係を続けてくださいませ。」
「もちろんだ。エメリック嬢の寛大な心に感謝する。」
快諾した陛下は、満面の笑みを浮かべました。
◇◇◇
これからのことは、決まっています。
私たちはハルティア王国に帰らなければなりません。いつまでも国王不在とはいきませんから。
クレア様たちは、貴族たちを掌握し続けていかなければなりません。まだ納得しきれていない人も多いようでしたし、こればかりは年月をかけて分からせていくしかありませんから。そこは、クレア様と王太子殿下の手腕に期待ですね。
クレア様が殿下と共に陛下へ向き直りました。陛下はまた、あの茶目っ気ある笑顔で玉座に座っています。
「陛下、先程は……ありがとうございました。」
「はて、なんの事かな?」
頭を軽く掻きながら、もう歳かのぉ、とボヤきました。瞳をうるませているクレア様は、そんな陛下の様子にはにかみながら答えます。
「私を侯爵にして下さったことです。」
「あぁ、そのことか。」
陛下はニッコリと笑って答えます。
「娘にサプライズプレゼントをするのは、父親の嗜みであろう?」
「父親……はい、そうですね。」
二人が穏やかに笑います。そこには新しい親子がありました。
「ありがとうございます。お、お義父さま。」
「はは、年甲斐もなく照れるものだなぁ。」
と、後ろから王太子殿下がクレア様に抱きつきました。か、顔と顔が近いですね。
「れ、レオ様?」
戸惑いつつ、クレア様は頬に赤みがさします。殿下は黙りこくったまま、クレア様の肩に顔を埋めて離しません。
「お前も狭量な奴だのぉ。これしきのことで嫉妬するでない。」
「……余計なお世話です。」
ボソリと呟く殿下。やはりそれは、新たにできた家族の形でした。
ふと、左手に温もりを感じました。そちらに目を落とす、ルークが指をからませています。トク、トク、と心臓の音が小さく聞こえてきそうな気がしました。
殿下のような熱烈な愛情表現では無いものの、ルークの思いやりが伝わってきます。
これが、私たちの形なのだと思いました。
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