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5章 決着
再会
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(レイ視点)
不意に、重い音を鳴らしながら扉が開かれました。瞬く間に差し込む光が、来訪者たちの輪郭を映し出します。初めはまた猊下かと思いました。しかしそこにいたのは、誰よりも会いたいと思っていた人。
「ルーク!」
「レオ様!」
私とクレア様は同時に駆け出しました。それぞれの愛しい人の元へ。
飛び込んだルークの胸は硬いけどあたたかくて、心の不安を全て溶かしていくようでした。ルークの両腕が私を包み込むと、お互いの心臓の音が響きます。早鐘を打つそれは、二人の想いをリンクさせていくように感じました。
「無事でよかった……」
上から落ちてきたのは小さな声。そして、一層強く抱きしめられます。不思議と圧迫感は感じません。それどころかもっと、と求めてしまう自分がいました。ルークと近づくと、段々ふしだらになってしまう自分が恐ろしいです。けれど許されるなら、このままでいたいと思ってしまいました。
しばし彼の体温を感じていると、隣から声が聞こえました。
「帰りましょうか。」
と。王太子殿下の声です。後方のクレア様の顔はリンゴのように真っ赤になって湯気を出しているのは見逃しません。
ルークは名残惜しそうにしながら私を離し、頷きます。
「大変なのは、これからですね。」
「はい。」
二人の会話を聞きつつ、私は茹で上がったクレア様の手を引き、二人の後ろに付きながら旧聖堂を歩きます。
「と、溶かす……優しく……」
クレア様のうわ言の意味は、よく分かりませんでしたが。
途中、気絶した教皇猊下を見つけました。二人に問うと、後から騎士が回収しに来ると言っていました。
「そういえば、どうして監禁場所がここだとわかったのですか?」
猊下の話だと、ここに乗り込んできたら悲劇を演出するために殺されるという話でしたが、そんな素振りはありませんでした。
ルークは遠くを見つめながら、呟きます。
「ある人に手伝ってもらったんだ。そして隠し通路を通って、ね。」
「ある人?」
「…秘密だ。」
ルークはウインクしながら、口に人差し指をあてます。どちらかと言えば王太子殿下のような所作に、不覚にもドキッとしてしまいます。そして知らぬ間に繋がれていた手からあたたかさが伝わって、ある人の正体なんて頭から吹き飛んでしまいました。
不意に、重い音を鳴らしながら扉が開かれました。瞬く間に差し込む光が、来訪者たちの輪郭を映し出します。初めはまた猊下かと思いました。しかしそこにいたのは、誰よりも会いたいと思っていた人。
「ルーク!」
「レオ様!」
私とクレア様は同時に駆け出しました。それぞれの愛しい人の元へ。
飛び込んだルークの胸は硬いけどあたたかくて、心の不安を全て溶かしていくようでした。ルークの両腕が私を包み込むと、お互いの心臓の音が響きます。早鐘を打つそれは、二人の想いをリンクさせていくように感じました。
「無事でよかった……」
上から落ちてきたのは小さな声。そして、一層強く抱きしめられます。不思議と圧迫感は感じません。それどころかもっと、と求めてしまう自分がいました。ルークと近づくと、段々ふしだらになってしまう自分が恐ろしいです。けれど許されるなら、このままでいたいと思ってしまいました。
しばし彼の体温を感じていると、隣から声が聞こえました。
「帰りましょうか。」
と。王太子殿下の声です。後方のクレア様の顔はリンゴのように真っ赤になって湯気を出しているのは見逃しません。
ルークは名残惜しそうにしながら私を離し、頷きます。
「大変なのは、これからですね。」
「はい。」
二人の会話を聞きつつ、私は茹で上がったクレア様の手を引き、二人の後ろに付きながら旧聖堂を歩きます。
「と、溶かす……優しく……」
クレア様のうわ言の意味は、よく分かりませんでしたが。
途中、気絶した教皇猊下を見つけました。二人に問うと、後から騎士が回収しに来ると言っていました。
「そういえば、どうして監禁場所がここだとわかったのですか?」
猊下の話だと、ここに乗り込んできたら悲劇を演出するために殺されるという話でしたが、そんな素振りはありませんでした。
ルークは遠くを見つめながら、呟きます。
「ある人に手伝ってもらったんだ。そして隠し通路を通って、ね。」
「ある人?」
「…秘密だ。」
ルークはウインクしながら、口に人差し指をあてます。どちらかと言えば王太子殿下のような所作に、不覚にもドキッとしてしまいます。そして知らぬ間に繋がれていた手からあたたかさが伝わって、ある人の正体なんて頭から吹き飛んでしまいました。
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