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5章 決着
旧聖堂にて
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暗い道を少し進むと、また同じデザインの燭台が壁にかけられていた。シンシア様がそれを弄ると、何も無かった目の前の壁が突如開けた。一気に光が差し込み、思わず目を瞑る。
「ここが、旧聖堂です。」
目を光に慣らし、私は通路を飛び出した。ここにレイが囚われている。早く助けなければ。
「行きましょう、殿下。」
「はい。シンシア様も……」
殿下が振り返るも、シンシア様の返答は無い。それどころか、彼女の姿が見えない。
「シンシア様…?」
私達は呆然とその場に立ち尽くす。つい、ほんの先程まで私達を導いてくれていたシンシア様は、霧のように消えてしまった。
ここで、シンシア様の言葉を思い出す。
『私が呼び戻された理由は、あなたがたを聖女クレアとレイの元まで案内するため。それ以外のことはできません。教えることもできません。』
彼女は私達を旧聖堂まで案内した。つまり、もう役目を終えたということなのだろうか。そして役目を終えたから、再びこの現世を離れた。
「シンシア様は、役目を終えたのでしょうか。」
殿下はどこか遠い場所を眺めながら私に問いかけた。
「そうだと思います。」
ならばより一層早く行かなければ。シンシア様の尽力に報いる為にも。
私達は足音をたてないよう、かつできるだけ急いで進む。敵は何人かわからないがこちらは二人しかいない。嫌でも慎重にならざるをえないのがもどかしい。
途中、手下と見られる若い男を捕まえ、軽く尋問した。
「おっ、俺はあの方の部下の命令で来たんだ。ここの掃除にな。それ以外は何も知らねぇよ。」
「あの方とは誰だ?」
「知らねぇ!部下がそう呼んでるだけだ。けどいい人だ。」
男はそう供述したが、どうにも嘘くさい。目が泳いでいるし、汗もかいている。というか既に使われていない旧聖堂を一般人が掃除する必要は無い。
なので少しだけ痛めつけた。少しだけだ。
「他に知っていることは全て吐くんだ。少しは罪を軽くしてやらないことも無い。」
殿下の深い海色の瞳がより一層深みを増している気がした。男は怯え、とうとう観念したように自白した。
「あっ、あの方の部下に命令されて、部屋に食事を運んだんだ。そこに人を保護してて、そいつらの食事だ。そんでもって何か聞かれたら適当に誤魔化せって。でも、あの方の正体は本当に知らねぇんだよ!信じてくれよ!」
「その部屋というのは?」
「わからねぇ。俺、文字が読めねぇんだ。でも、中にはデケェ絵が2枚飾ってあった。片方は血塗れで、すっげえ不気味だったな。」
「『聖戦の終わり』……となると聖戦の間か?」
殿下は情報を引き出し終えると、男を気絶させて柱に縛った。恐らく小間使いなのだろう、有益な情報をくれたのには感謝しなくては。
「ここが、旧聖堂です。」
目を光に慣らし、私は通路を飛び出した。ここにレイが囚われている。早く助けなければ。
「行きましょう、殿下。」
「はい。シンシア様も……」
殿下が振り返るも、シンシア様の返答は無い。それどころか、彼女の姿が見えない。
「シンシア様…?」
私達は呆然とその場に立ち尽くす。つい、ほんの先程まで私達を導いてくれていたシンシア様は、霧のように消えてしまった。
ここで、シンシア様の言葉を思い出す。
『私が呼び戻された理由は、あなたがたを聖女クレアとレイの元まで案内するため。それ以外のことはできません。教えることもできません。』
彼女は私達を旧聖堂まで案内した。つまり、もう役目を終えたということなのだろうか。そして役目を終えたから、再びこの現世を離れた。
「シンシア様は、役目を終えたのでしょうか。」
殿下はどこか遠い場所を眺めながら私に問いかけた。
「そうだと思います。」
ならばより一層早く行かなければ。シンシア様の尽力に報いる為にも。
私達は足音をたてないよう、かつできるだけ急いで進む。敵は何人かわからないがこちらは二人しかいない。嫌でも慎重にならざるをえないのがもどかしい。
途中、手下と見られる若い男を捕まえ、軽く尋問した。
「おっ、俺はあの方の部下の命令で来たんだ。ここの掃除にな。それ以外は何も知らねぇよ。」
「あの方とは誰だ?」
「知らねぇ!部下がそう呼んでるだけだ。けどいい人だ。」
男はそう供述したが、どうにも嘘くさい。目が泳いでいるし、汗もかいている。というか既に使われていない旧聖堂を一般人が掃除する必要は無い。
なので少しだけ痛めつけた。少しだけだ。
「他に知っていることは全て吐くんだ。少しは罪を軽くしてやらないことも無い。」
殿下の深い海色の瞳がより一層深みを増している気がした。男は怯え、とうとう観念したように自白した。
「あっ、あの方の部下に命令されて、部屋に食事を運んだんだ。そこに人を保護してて、そいつらの食事だ。そんでもって何か聞かれたら適当に誤魔化せって。でも、あの方の正体は本当に知らねぇんだよ!信じてくれよ!」
「その部屋というのは?」
「わからねぇ。俺、文字が読めねぇんだ。でも、中にはデケェ絵が2枚飾ってあった。片方は血塗れで、すっげえ不気味だったな。」
「『聖戦の終わり』……となると聖戦の間か?」
殿下は情報を引き出し終えると、男を気絶させて柱に縛った。恐らく小間使いなのだろう、有益な情報をくれたのには感謝しなくては。
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