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4章 攫われた二人
祈り
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それからどれくらい時間が経ったのでしょう。闇雲に辺りを探せど一向に手がかりは見つからず、不安が大きくなっていくばかりです。
「レオ様……」
ポツリ、クレア様が呟きます。王太子殿下のことを愛称で呼ぶところは初めて見ました。気丈に振る舞う姿に見慣れていましたが、このような場面ではやはり不安なのでしょう。私もルークが恋しくてたまりません。
「うっ……!?」
すると、突如クレア様は頭を抑えました。僅かに痙攣もしているようです。
「ど、どうしましたか!?」
「…見えたんです。」
クレア様は私たちから見て右側の壁を指さしました。
「あの方向に、レオ様たちがいます。」
なんの根拠もありません。しかし不思議と嘘とは思えませんでした。もしや、これが創造神シアンに選ばれたクレア様のみが扱える、奇跡の力なんでしょうか。
「クレア様、殿下たちにこちらの居場所を伝えることはできますか?」
これが上手くいけば、救援に来ることが可能になるかもしれません。
「やってみます。」
クレア様は手を組み、祈りを捧げる体勢になりました。呪文も道具もありません。ただ魔道具のランプが彼女を照らしているだけです。しかし、どこか神聖な雰囲気を纏っていました。
祈りの時間が長くなるにつれ、クレア様の周囲には淡い桃色の光が飛び交うようになりました。それはクレア様を守る騎士ようであれば、クレア様のことが好きな友人のようにも見えます。けれど伝わってくるのは、クレア様でなくてはダメだ、という雰囲気でした。目を瞑っている彼女には見えていないのでしょう。彼女を優しく、撫でるようにそれらは回っています。
しばらくその幻想的な光景を眺めていると、小さな光の粒たちは、集まって球体を形成し始めました。何となく、祈りの終盤まできているのが分かります。先程から何だか光の感情が伝わってきているように感じるのも、クレア様の力の一旦なのだと思います。
しん、と静まっている部屋の中に、コンコン、と扉の音がなりました。淡い光を帯びたクレア様の祈りはまだ終わっていませんが、またレナリシアさんでもきたのでしょうか。
扉が開くと、そこにいたのは教皇猊下でした。
「猊下…!?」
助けに来たならば随分早いですね。
私の「猊下」という単語に反応したのか、クレア様は祈りを止めてしまいました。顔を明るくして、猊下に駆け寄ります。
「お義父さま!」
しかし、
「気安く近寄るな、平民風情が。」
猊下は駆け寄って来たクレア様を弾き飛ばし、まるで氷のような冷たい目で見つめたのでした。
ーーーーー
あけましておめでとうございます。新年早々急展開です。今年もこの作品をよろしくお願いします。
鈴宮ソラ
「レオ様……」
ポツリ、クレア様が呟きます。王太子殿下のことを愛称で呼ぶところは初めて見ました。気丈に振る舞う姿に見慣れていましたが、このような場面ではやはり不安なのでしょう。私もルークが恋しくてたまりません。
「うっ……!?」
すると、突如クレア様は頭を抑えました。僅かに痙攣もしているようです。
「ど、どうしましたか!?」
「…見えたんです。」
クレア様は私たちから見て右側の壁を指さしました。
「あの方向に、レオ様たちがいます。」
なんの根拠もありません。しかし不思議と嘘とは思えませんでした。もしや、これが創造神シアンに選ばれたクレア様のみが扱える、奇跡の力なんでしょうか。
「クレア様、殿下たちにこちらの居場所を伝えることはできますか?」
これが上手くいけば、救援に来ることが可能になるかもしれません。
「やってみます。」
クレア様は手を組み、祈りを捧げる体勢になりました。呪文も道具もありません。ただ魔道具のランプが彼女を照らしているだけです。しかし、どこか神聖な雰囲気を纏っていました。
祈りの時間が長くなるにつれ、クレア様の周囲には淡い桃色の光が飛び交うようになりました。それはクレア様を守る騎士ようであれば、クレア様のことが好きな友人のようにも見えます。けれど伝わってくるのは、クレア様でなくてはダメだ、という雰囲気でした。目を瞑っている彼女には見えていないのでしょう。彼女を優しく、撫でるようにそれらは回っています。
しばらくその幻想的な光景を眺めていると、小さな光の粒たちは、集まって球体を形成し始めました。何となく、祈りの終盤まできているのが分かります。先程から何だか光の感情が伝わってきているように感じるのも、クレア様の力の一旦なのだと思います。
しん、と静まっている部屋の中に、コンコン、と扉の音がなりました。淡い光を帯びたクレア様の祈りはまだ終わっていませんが、またレナリシアさんでもきたのでしょうか。
扉が開くと、そこにいたのは教皇猊下でした。
「猊下…!?」
助けに来たならば随分早いですね。
私の「猊下」という単語に反応したのか、クレア様は祈りを止めてしまいました。顔を明るくして、猊下に駆け寄ります。
「お義父さま!」
しかし、
「気安く近寄るな、平民風情が。」
猊下は駆け寄って来たクレア様を弾き飛ばし、まるで氷のような冷たい目で見つめたのでした。
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あけましておめでとうございます。新年早々急展開です。今年もこの作品をよろしくお願いします。
鈴宮ソラ
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