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4章 攫われた二人
残された人
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(ルーク視点)
私はレオナルド殿下とティアード嬢 ーいや王太子妃と読んだ方が良いだろうかー の結婚式に出席していた。
しかしどうだ。隣にいたはずのレイと花嫁は攫われてしまった。会場が暗転する前、確かに隣にいたはずのレイは消えていた。婚約者なのに、護ることができなかった。
「これより会場を封鎖します!皆様席から動かないようなお願いします。この短時間でそう遠くにはいけないはずだ、周辺を捜索させろ!」
自分の無力さに拳を握りしめていると、レオナルド殿下の声が聞こえた。そこでハッとした。今私がすべきなのは悔しがることでは無い、一分一秒でも早く二人を見つけ出すことだ。
会場封鎖の後、レイたちを攫った犯人は見つからなかったとの報告を受けた。悔しいが、ここまで大掛かりな犯行をする人物ならそれくらい想定内だ。
それからレオナルド殿下と式場を手当り次第に調べた。魔道具や人為的な細工が行われた可能性が高いからだ。教皇猊下にも手伝ってもらいながら、隅々まで探していく。
そして分かったのは大停電が遠隔操作式の魔道具によって起こされたもので、使用者の特定は不可のであるという事だった。やはり上級の隠匿魔法が使われていた。その他に、意識に干渉する系統の闇魔道具の使用形跡が確認された。これがレイたちの意識を奪い、誘拐の手助けをしたのだろう。
しかし、後は何もめぼしいものは見つからなかった。
何故だ。あれだけ大規模な警備を欺いているのだから、他に細工の痕跡があるはずだ。
だが、無い。
「犯人の目的は、やはり金でしょうか?」
「分かりません。王族を狙うならあの二人より我々を狙うはずですが…」
あの二人は直系の王族ではない。王家に入る立場だ。妃の座を狙うなら暗殺で良いはずであるし、誘拐という選択をとった意図がいまいち見えてこない。女性の方が誘拐しやすいと言えばそうだが、金だけのためにここまでリスキーなことをするのだろうか?
「根拠はありませんが、何かこう、そんなに単純な問題ではない気がするのです。」
「そうですね……」
殿下の言う通りだ。根拠は無いが、本能が告げている。暗闇の中で道を探っているような、嫌な感覚だ。
どれだけ時間が経ったのだろうか。思考にふけっていたから長時間経ったのかもしれないし、思いのほか短時間かもしれない。
「王太子殿下、外で…!」
従者から耳打ちされ、殿下は目を見開いた。すぐに馬を用意する命を出した。
「陛下、すぐに行きましょう。」
「どこへ?」
「王都の外、リシュオン公爵邸付近の森です。」
そこでクレアに持たせていた魔道具が見つかったんです、と殿下は付け加えた。
私はレオナルド殿下とティアード嬢 ーいや王太子妃と読んだ方が良いだろうかー の結婚式に出席していた。
しかしどうだ。隣にいたはずのレイと花嫁は攫われてしまった。会場が暗転する前、確かに隣にいたはずのレイは消えていた。婚約者なのに、護ることができなかった。
「これより会場を封鎖します!皆様席から動かないようなお願いします。この短時間でそう遠くにはいけないはずだ、周辺を捜索させろ!」
自分の無力さに拳を握りしめていると、レオナルド殿下の声が聞こえた。そこでハッとした。今私がすべきなのは悔しがることでは無い、一分一秒でも早く二人を見つけ出すことだ。
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そして分かったのは大停電が遠隔操作式の魔道具によって起こされたもので、使用者の特定は不可のであるという事だった。やはり上級の隠匿魔法が使われていた。その他に、意識に干渉する系統の闇魔道具の使用形跡が確認された。これがレイたちの意識を奪い、誘拐の手助けをしたのだろう。
しかし、後は何もめぼしいものは見つからなかった。
何故だ。あれだけ大規模な警備を欺いているのだから、他に細工の痕跡があるはずだ。
だが、無い。
「犯人の目的は、やはり金でしょうか?」
「分かりません。王族を狙うならあの二人より我々を狙うはずですが…」
あの二人は直系の王族ではない。王家に入る立場だ。妃の座を狙うなら暗殺で良いはずであるし、誘拐という選択をとった意図がいまいち見えてこない。女性の方が誘拐しやすいと言えばそうだが、金だけのためにここまでリスキーなことをするのだろうか?
「根拠はありませんが、何かこう、そんなに単純な問題ではない気がするのです。」
「そうですね……」
殿下の言う通りだ。根拠は無いが、本能が告げている。暗闇の中で道を探っているような、嫌な感覚だ。
どれだけ時間が経ったのだろうか。思考にふけっていたから長時間経ったのかもしれないし、思いのほか短時間かもしれない。
「王太子殿下、外で…!」
従者から耳打ちされ、殿下は目を見開いた。すぐに馬を用意する命を出した。
「陛下、すぐに行きましょう。」
「どこへ?」
「王都の外、リシュオン公爵邸付近の森です。」
そこでクレアに持たせていた魔道具が見つかったんです、と殿下は付け加えた。
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