【完結】虐待された少女が公爵家の養女になりました

鈴宮ソラ

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4章 攫われた二人

違和感

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「レイ様!だ、大丈夫ですか?」

 レナリシアさんを見送ると、クレア様が駆け寄ってきました。

「はい、私は大丈夫です。」
トラウマに打ち勝てて、反抗できて、胸がスカッとしました。もう私は、あの人を怖いと思わなくなっているのです。

「あの人は、私の実母です。色々あったのですが…もう、大丈夫です。」
自分の口から、大丈夫だといえるようになりました。
「それなら、良かったです!」
クレア様がニコリと微笑むと、少しだけ安心できました。



◇◇◇◇




「問題は、どうやって脱出するかですね。」
 今手元にあって使えそうなのは、旧式ランプとクレア様が護身用に忍ばせていた短剣くらいです。あとは魔法ですが……

 と、ここで違和感に気づきました。何と言うか身体の芯が押さえつけられているような、そんな感覚です。先程までは突然誘拐され、身体が不安や驚きを覚えているからだと思っていましたが…
私は嫌な予感がして少し魔力に冷気を乗せて放ってみました。
 しかし、魔法は出てきませんでした。

「魔法が、使えない…?」
「え……?」

何度試しても、魔力が手を離れることはありませんでした。魔力が消されたと言うより、魔力の放出、つまりは魔法の発動を妨げられているようです。魔道具程度の小さな魔力なら問題無いようなのですが……

 辺りを探っていると、壁にやや大きなタッセルのようなものを見つけました。紫色の宝石がはめ込まれていて、禍々しい風体です。

「このような禍々しいもの、旧聖堂にはありません!」

クレア様も断定していたことから、恐らくこれが原因と見て良さそうです。しかしクレア様が試しに短剣で突いてみたところ、見事に弾かれてしまいました。どうやら盾の魔法がかかっているようです。

「魔法は諦めた方が良さそうですね。」
「はい……」

落ち込む様子を見せたクレア様でしたが。すぐに探索を再開させました。

 そしてなんとか部屋全体を探し回りましたが、使えそうなものはほとんどありませんでした。

「やはり聖遺物では、脱出は難しそうですね…」
「クレア様、ここには隠し通路のようなものはありませんか?」
「えっと……ここは以前は王族の方々が有事の際の避難通路として使っていたそうなのですが、その場所は王族しか伝えられていないので、私には分かりません。」
「そうなのですか……」

 魔力も秘密通路もかなり絶望的、私たちはそう判断しました。
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