【完結】虐待された少女が公爵家の養女になりました

鈴宮ソラ

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4章 攫われた二人

実母との邂逅

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 事件を大きくすることで得をする人物が疑わしいことになりますが、今はまだ思いつきません。

「レイ様、私たちは、どうなってしまうのでしょうか。」
「今はまだ、何とも言えません。」

 誘拐された私たち。両王家に身代金を要求されるか、情報を出せと脅されるか、それとも殺されてしまうのか。相手の目的が分からないので予想もつきません。

「脱出を考えた方が良さそうですね。」
私たちは顔を見合せ、そう決めました。

 その時。
 不意に重苦しい音がして、私たちは振り向きました。

「あらぁ、こんな埃っぽいところに閉じ込めて。も酷いことをするのもね。ふふっ。」
緊迫した場にそぐわない明るい声でした。

 振り返って見たもの。それは部屋の扉が開かれ、1人の女性が立っている光景でした。照明器具の光が目に痛く、声以外は女性についてしばらく認識できませんでした。

 コツ、コツ、と石畳を叩く靴の音がして、女性は近づいて来ました。

「久しぶりね、レイ?」
「あ、貴方は……!」

 女性は、母でした。いえ、私はそう呼ぶ事を許されず、伯爵夫人と呼ばされていました。

「ど、どうしてここに……?」

 レナリシア・オラルト。私の実母の名前です。目の前に立つ女性の名前です。

「どうして、って、」
伯爵夫人は緑色の瞳を歪ませると、突然私の髪を引っ張りました。皮膚が痛み、同時に夫人と私の顔が近づきます。

「お前を殺すためよ。」
「あ、あぁ……!」
またです。今度は、本当に身を害されているからか、シンシア王女の話を聞いた時よりもっと震えが止まりませんでした。かつての傷が、それをつけた人物が、目の前にいます。

「レイ様を離してください!」
クレア様が叫びました。ですが夫人は手を緩めません。髪を引っ張り倒し、私を地面に打ち付けました。背中がズキズキと熱を持っています。

「動くんじゃないわよ。お前、レイ様なんて呼ばれるのね。このゴミが。」
夫人が懐から取り出したのは、短剣でした。
「い、や……もうしわけ」
「お黙りなさい!」
私の顔の、横スレスレで短剣は地面に突き刺さりました。石畳の、苔むしたほんの隙間でした。

「誰が喋っていいと言ったの、この出来損ないが!本当に忌々しいのだから!」

夫人は短剣をしまうと、私の首に手をかけました。その力は段々強くなり、息が吸えなくなっていきます。苦しさから口を大きく開けて空気を取り込もうとしますが、上手くいきません。

「やめなさい!」
横からクレア様が夫人に突撃しました。勢いよく夫人は横に転がると、受け身をとってこちらを睨みつけます。どちらも興奮しているのか息を切らしていました。
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