【完結】虐待された少女が公爵家の養女になりました

鈴宮ソラ

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4章 攫われた二人

不可解な犯行

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 ひとまず、ここがグレシアナ王国内の旧聖堂であることは間違いないと見て良さそうです。ですが場所が分かっても脱出の糸口が見つかるとは限りません。

「私たちを攫ったのは何者なのでしょうか。」

私はクレア様に問いかけました。犯人が分かれば手がかりになるかもしれません。

「……分かりません。ですが怪しい人物は何人かいます。」
「それは誰ですか?」
「貴族派の方々です。」

 グレシアナ王国にもやはり派閥争いがあるようで、貴族派と教会派に分かれているそうです。王家は現在教会派に傾きつつあり、それを面白く思わない貴族派から度々嫌がらせを受けていたのだとか。

「特にリシュオン公爵やセウン伯爵は王家の失脚を狙っていましたから。」
「なるほど……ですが、何故今なのでしょう?」
「何故、とは?」

 振り返ってみると、不可解なのです。
 仮に王家の信用を落とす為の犯行だったとするならば、私たちがグリフォンに狙われた件も繋がりがあると考えて間違いないでしょう。そうなると、犯人の意図が分かりません。

 まず、グリフォンの件。急襲のため苦戦したとはいえ、私たちの命を本気で狙うならもっと強力な魔物や魔法があったはずです。それを手に入れる力が無かったにしてもあの隠匿魔法は並大抵の人物では扱えません。攻撃に対して隠れ方が上手すぎるのです。あのレベルの術者を地方の男爵にすぎないオルコット家が雇えるとはあまり考えられません。特に財産が潤沢という訳でも無かったようですし。誰かが裏で糸を引いているのでしょう。

 続いて、この誘拐事件。クレア様を狙うにしてもハルティア次期王妃である私を狙うにしても、何故結婚式だったのでしょうか。式には各国の来賓の方々がおり、それだけ警備体制も厳重に敷かれていました。それを突破するのは至難の業でしょう。そうすると、もっと楽に誘拐できるタイミングがあったように思います。いかに手早く攫っても、大勢の目があればそれだけ早く事件が露呈してしまいます。加えて、苦労して誘拐して来たのにも関わらずクレア様には分かる旧聖堂という場所に縛りもせず放置。逃げやすいとは思わないのでしょうか。

 総じて…

「無闇に事を大きくしている、そんな気がするのです。」
「確かに…手練であればもっと上手いやり方がありますよね。ですが、事件を大きくしても犯人側には何のメリットも無いと思いますが…」
「そこが不可解なんですよね。」

 誰が、何のために。そこが全くと言っていいほど分かりません。犯行手段と目的が一致する様子が無いのです。
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