124 / 181
4章 攫われた二人
聖遺物
しおりを挟む
「これは聖騎士の防具と呼ばれるもので、刻まれている古代聖語がその証拠です。世界中でただ1箇所、この旧聖堂のみで保管されている代物です。」
「なるほど。」
「後に初代聖女と呼ばれる、フローラ様を巡って起こった争いに用いられたのがこの甲冑なのです。フローラ様を守る聖騎士たちは彼女の祈りにより鉄壁の防御を誇り、敵を圧倒したと言われています。」
聖騎士や古代聖語という言葉から、シアン教関係であるという予想は正しいものでした。
「聖騎士の防具が保管されているのは旧聖堂の中でも「聖戦の間」……となれば」
壁伝いにクレア様は何かを探し始めました。
「あっ、レイ様、ありましたよ!」
そう言って差し出されたのは、恐らく旧式と思われる魔道具でした。魔力を流し込むことで光を発します。私はそれに魔力を流し、ランプをつけました。真っ暗な室内に仄かな光が灯りました。
「これは…暗いですね。」
ただ最新式の魔道具と比べると明るさも悪く必要魔力も多いのが難点です。
「すみません、ここにあるのは全部聖遺物と呼ばれる古いものなので……」
「そんな、クレア様が謝ることではありません!それにあまり明るくても私たちが起きたことがバレる恐れがありますから。」
というか、聖遺物ということはこのランプもかなり貴重なものなのでは?そう思うと途端ランプを持つ手に力が入りました。間違っても落とさないようにしなければ。
色々ありますが、私たちは灯りを手に入れました。これで探索しやすくなりますね。
「クレア様、この絵は……?」
しばらく部屋を見回していると、壁に掲げられた一枚の絵が目に留まりました。光り輝く女性と、それを守る数人の騎士。彼らが対峙するのは黒いオーラを纏った大軍です。
「これは先程言った「聖戦」を描いた絵画です。」
となると女性は初代聖女のフローラ様、周囲にいるのは聖騎士。大軍はフローラ様を狙う人々でしょうか。
その隣に、もう一枚並んでいました。私はその絵画を見た瞬間寒気がはしりました。先程と同じく光り輝く女性とやはり同じ数人の騎士。異なる点は血塗れになった敵が地に転がっており、騎士たちが喜びを表すように血のついた剣を高く上げていることでした。黒々しい背景と血の鮮やかな赤のコントラストが何とも不気味です。
「これは…惨いですね。」
「はい。タイトルは「聖戦の終わり」。こうも酷く描かれているのは、正義のためとはいえ人を殺すことは正しいと言えるのか、という皮肉が込められているからなんです。」
正義の正しさ。込められた重々しい意味も相まって、絵画はやはり物々しい雰囲気を放っていました。
「なるほど。」
「後に初代聖女と呼ばれる、フローラ様を巡って起こった争いに用いられたのがこの甲冑なのです。フローラ様を守る聖騎士たちは彼女の祈りにより鉄壁の防御を誇り、敵を圧倒したと言われています。」
聖騎士や古代聖語という言葉から、シアン教関係であるという予想は正しいものでした。
「聖騎士の防具が保管されているのは旧聖堂の中でも「聖戦の間」……となれば」
壁伝いにクレア様は何かを探し始めました。
「あっ、レイ様、ありましたよ!」
そう言って差し出されたのは、恐らく旧式と思われる魔道具でした。魔力を流し込むことで光を発します。私はそれに魔力を流し、ランプをつけました。真っ暗な室内に仄かな光が灯りました。
「これは…暗いですね。」
ただ最新式の魔道具と比べると明るさも悪く必要魔力も多いのが難点です。
「すみません、ここにあるのは全部聖遺物と呼ばれる古いものなので……」
「そんな、クレア様が謝ることではありません!それにあまり明るくても私たちが起きたことがバレる恐れがありますから。」
というか、聖遺物ということはこのランプもかなり貴重なものなのでは?そう思うと途端ランプを持つ手に力が入りました。間違っても落とさないようにしなければ。
色々ありますが、私たちは灯りを手に入れました。これで探索しやすくなりますね。
「クレア様、この絵は……?」
しばらく部屋を見回していると、壁に掲げられた一枚の絵が目に留まりました。光り輝く女性と、それを守る数人の騎士。彼らが対峙するのは黒いオーラを纏った大軍です。
「これは先程言った「聖戦」を描いた絵画です。」
となると女性は初代聖女のフローラ様、周囲にいるのは聖騎士。大軍はフローラ様を狙う人々でしょうか。
その隣に、もう一枚並んでいました。私はその絵画を見た瞬間寒気がはしりました。先程と同じく光り輝く女性とやはり同じ数人の騎士。異なる点は血塗れになった敵が地に転がっており、騎士たちが喜びを表すように血のついた剣を高く上げていることでした。黒々しい背景と血の鮮やかな赤のコントラストが何とも不気味です。
「これは…惨いですね。」
「はい。タイトルは「聖戦の終わり」。こうも酷く描かれているのは、正義のためとはいえ人を殺すことは正しいと言えるのか、という皮肉が込められているからなんです。」
正義の正しさ。込められた重々しい意味も相まって、絵画はやはり物々しい雰囲気を放っていました。
2
お気に入りに追加
1,599
あなたにおすすめの小説
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星里有乃
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています
水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。
森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。
公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。
◇画像はGirly Drop様からお借りしました
◆エール送ってくれた方ありがとうございます!
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。
辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる