【完結】虐待された少女が公爵家の養女になりました

鈴宮ソラ

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4章 攫われた二人

聖遺物

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「これは聖騎士の防具と呼ばれるもので、刻まれている古代聖語がその証拠です。世界中でただ1箇所、この旧聖堂のみで保管されている代物です。」
「なるほど。」
「後に初代聖女と呼ばれる、フローラ様を巡って起こった争いに用いられたのがこの甲冑なのです。フローラ様を守る聖騎士たちは彼女の祈りにより鉄壁の防御を誇り、敵を圧倒したと言われています。」

 聖騎士や古代聖語という言葉から、シアン教関係であるという予想は正しいものでした。

「聖騎士の防具が保管されているのは旧聖堂の中でも「聖戦の間」……となれば」
壁伝いにクレア様は何かを探し始めました。
「あっ、レイ様、ありましたよ!」
そう言って差し出されたのは、恐らく旧式と思われる魔道具でした。魔力を流し込むことで光を発します。私はそれに魔力を流し、ランプをつけました。真っ暗な室内に仄かな光が灯りました。

「これは…暗いですね。」
ただ最新式の魔道具と比べると明るさも悪く必要魔力も多いのが難点です。
「すみません、ここにあるのは全部聖遺物と呼ばれる古いものなので……」
「そんな、クレア様が謝ることではありません!それにあまり明るくても私たちが起きたことがバレる恐れがありますから。」

 というか、聖遺物ということはこのランプもかなり貴重なものなのでは?そう思うと途端ランプを持つ手に力が入りました。間違っても落とさないようにしなければ。
 色々ありますが、私たちは灯りを手に入れました。これで探索しやすくなりますね。


「クレア様、この絵は……?」
しばらく部屋を見回していると、壁に掲げられた一枚の絵が目に留まりました。光り輝く女性と、それを守る数人の騎士。彼らが対峙するのは黒いオーラを纏った大軍です。

「これは先程言った「聖戦」を描いた絵画です。」
となると女性は初代聖女のフローラ様、周囲にいるのは聖騎士。大軍はフローラ様を狙う人々でしょうか。

 その隣に、もう一枚並んでいました。私はその絵画を見た瞬間寒気がはしりました。先程と同じく光り輝く女性とやはり同じ数人の騎士。異なる点は血塗れになった敵が地に転がっており、騎士たちが喜びを表すように血のついた剣を高く上げていることでした。黒々しい背景と血の鮮やかな赤のコントラストが何とも不気味です。

「これは…惨いですね。」
「はい。タイトルは「聖戦の終わり」。こうも酷く描かれているのは、正義のためとはいえ人を殺すことは正しいと言えるのか、という皮肉が込められているからなんです。」

 正義の正しさ。込められた重々しい意味も相まって、絵画はやはり物々しい雰囲気を放っていました。
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