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3章 結婚式
晒される悪意
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「あら、誰かと思えば聖女様じゃありませんか!中々社交場に出てこられないので、体調を崩されているのかと思っておりましたわ。」
「まぁ!王太子殿下の婚約者ですのに、社交をされてなかったのですか?」
「聖女様は平民だったのですよ?社交はハードルが高いに決まってますわ。」
「あら、そうでしたわね。私ったらうっかりしてました。聖女様のご出身は、子爵領の小さな村でしたものね。」
くすくす、くすくす。
パーティーが始まってすぐに、令嬢たちから囲まれました。殿下の婚約者候補だった顔ぶれです。
この時、私と殿下の不仲は社交界に周知の事実として広まっていたのです。殿下は改心して勉学に打ち込むようになってから社交場に出ていませんでした。そのため古い情報の独り歩きによって、貴族家の当主たちは同じようなことを考えるようになったのです。
「愚かな王太子に娘が取り入れれば、必ず王妃になれる。そうすれば自分の家紋に権力を集められる。」
と。
令嬢たちも顔は麗しい王太子殿下(この時殿下の中身もまた麗しい事を知っている女性は私だけです。)の目に留まるために、殿下から嫌われている私を貶めることを選んだようでした。
「顔色が悪いですよ、聖女様。国母となる方がそうも貧弱では、殿下もさぞ大変でしょうね。同情致しますわ。」
殿下の左腕に、侯爵家のご令嬢がそっと触れました。熱を含んだその瞳は、言葉とは裏腹に殿下以外目に入っていないようです。
私は何も言えませんでした。小さな村の平民出身なのは事実ですし、勉強を理由に社交を全くと言って良いほど疎かにしていたのもまた事実ですから。
「本当、聖女様が羨ましいですわ~。聖女に生まれただけで、殿下のような素敵な殿方と婚約できるのですから。」
伯爵家のご令嬢が含み笑いをしながら言いました。何も言い返す事ができませんでした。聖女として生まれたその偶然で、私はその偶然でここにいるのですから。それが無かったら私はただの村娘であり、貴族として教育受けることさえ一生できなかったのです。そう考えると、私自身がひどくちっぽけで、読み込んだ教科書が意味の無いものに思えてきました。
聖女だから、王太子と婚約できる。
聖女なら、私では無くても誰でもいい?
聖女の称号だけが必要なら、私がこれまで学んだ意味は?
答えの出ない自問自答を繰り返しその結果、自分の存在意義がよく分からなくなりました。悩み苦しめば相手の思うつぼだと言うのに、それすらも分からなくなっていました。
「私の婚約者を侮辱するのはやめてもらおうか。」
この声が聞こえるまでは。
「まぁ!王太子殿下の婚約者ですのに、社交をされてなかったのですか?」
「聖女様は平民だったのですよ?社交はハードルが高いに決まってますわ。」
「あら、そうでしたわね。私ったらうっかりしてました。聖女様のご出身は、子爵領の小さな村でしたものね。」
くすくす、くすくす。
パーティーが始まってすぐに、令嬢たちから囲まれました。殿下の婚約者候補だった顔ぶれです。
この時、私と殿下の不仲は社交界に周知の事実として広まっていたのです。殿下は改心して勉学に打ち込むようになってから社交場に出ていませんでした。そのため古い情報の独り歩きによって、貴族家の当主たちは同じようなことを考えるようになったのです。
「愚かな王太子に娘が取り入れれば、必ず王妃になれる。そうすれば自分の家紋に権力を集められる。」
と。
令嬢たちも顔は麗しい王太子殿下(この時殿下の中身もまた麗しい事を知っている女性は私だけです。)の目に留まるために、殿下から嫌われている私を貶めることを選んだようでした。
「顔色が悪いですよ、聖女様。国母となる方がそうも貧弱では、殿下もさぞ大変でしょうね。同情致しますわ。」
殿下の左腕に、侯爵家のご令嬢がそっと触れました。熱を含んだその瞳は、言葉とは裏腹に殿下以外目に入っていないようです。
私は何も言えませんでした。小さな村の平民出身なのは事実ですし、勉強を理由に社交を全くと言って良いほど疎かにしていたのもまた事実ですから。
「本当、聖女様が羨ましいですわ~。聖女に生まれただけで、殿下のような素敵な殿方と婚約できるのですから。」
伯爵家のご令嬢が含み笑いをしながら言いました。何も言い返す事ができませんでした。聖女として生まれたその偶然で、私はその偶然でここにいるのですから。それが無かったら私はただの村娘であり、貴族として教育受けることさえ一生できなかったのです。そう考えると、私自身がひどくちっぽけで、読み込んだ教科書が意味の無いものに思えてきました。
聖女だから、王太子と婚約できる。
聖女なら、私では無くても誰でもいい?
聖女の称号だけが必要なら、私がこれまで学んだ意味は?
答えの出ない自問自答を繰り返しその結果、自分の存在意義がよく分からなくなりました。悩み苦しめば相手の思うつぼだと言うのに、それすらも分からなくなっていました。
「私の婚約者を侮辱するのはやめてもらおうか。」
この声が聞こえるまでは。
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