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3章 結婚式
祝福
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(レイ視点に戻ります!)
式はつつがなく進んでいき、もう終盤と言って差し支えない所まで来ました。
「それでは、誓約書にサインを。」
グレシアナ王国において結婚誓約書は、結婚式の場で完成させるものなのだそう。本人たちがサインをし、ようやく二人は夫婦となるのです。
クレア様と王太子殿下が共に真っ白な羽ペンを持ち、台に用意された誓約書に名前を書き記しました。すると書面が金色に淡く光り、その文字が宙に浮かび上がってきます。そしてそれは二人の指輪に吸い込まれていきました。陽の光に乱反射したダイヤモンドの中に、美しい金色が交じります。幻想的な光景です。クレア様曰く、互いの署名が入った結婚指輪をつけるのがグレシアナ王族夫婦の慣習なんだそうです。
後方にたたずむ教皇猊下も、どこか晴れやかな雰囲気を感じます。血の繋がりは無いとはいえ、娘のクレア様が幸せそうに結婚することが喜ばしいのでしょう。立会人の教皇として身を包むのはシアン教を象徴する白を基調とした装束。ですがその表情はただの立会人というだけでなく、何か別の感情も感じさせました。
「これにてクレア・ティアード、改めクレア・グレシアナとレオナルド・グレシアナは夫婦となったことを認める!」
猊下の宣言を聞くと、私は真っ先に拍手を送りました。続いて辺りからもあたたかい拍手が巻き起こりました。クレア様はベール越しでも分かるほど頬を赤らめていて、王太子殿下と見つめあっています。殿下も照れくさそうな、嬉しそうな表情をしています。
これでクレア様は正真正銘、王太子殿下の妻、グレシアナ王国の王太子妃になったのです。
心からの祝福を送ります、クレア様。
本当に、おめでとうございます!
「最後に、口づけを。」
クレア様のベールが上げられ、涙で潤んだ瞳と化粧によって普段より華やかさが増したお顔が現れます。そんな彼女に王太子殿下は一瞬見惚れたようでした。
二人はしばし見つめ合い、そして、顔が近づいて行きました。二人の唇が近づくにつれて、何故か私も一緒にドキドキしてしまいます。
その刹那
フッ、と教会が闇に包まれました。
つい先程まで差し込んでいた昼の日差しも潰え、ムードを出すための照明さえひとつ残らず消えてしまったのです。
「レイ…!」
焦りから方向すらも分からず、すぐ隣にいたはずのルークの声が酷く遠く感じました。
ふと、私の意識が朦朧としてきました。ゆらゆら揺れる蝋燭の炎のように、感覚が途切れ途切れになります。
本能は気を確かに持てと叱咤してきます。しかしそれも虚しく、私は完全に意識を失いました。
式はつつがなく進んでいき、もう終盤と言って差し支えない所まで来ました。
「それでは、誓約書にサインを。」
グレシアナ王国において結婚誓約書は、結婚式の場で完成させるものなのだそう。本人たちがサインをし、ようやく二人は夫婦となるのです。
クレア様と王太子殿下が共に真っ白な羽ペンを持ち、台に用意された誓約書に名前を書き記しました。すると書面が金色に淡く光り、その文字が宙に浮かび上がってきます。そしてそれは二人の指輪に吸い込まれていきました。陽の光に乱反射したダイヤモンドの中に、美しい金色が交じります。幻想的な光景です。クレア様曰く、互いの署名が入った結婚指輪をつけるのがグレシアナ王族夫婦の慣習なんだそうです。
後方にたたずむ教皇猊下も、どこか晴れやかな雰囲気を感じます。血の繋がりは無いとはいえ、娘のクレア様が幸せそうに結婚することが喜ばしいのでしょう。立会人の教皇として身を包むのはシアン教を象徴する白を基調とした装束。ですがその表情はただの立会人というだけでなく、何か別の感情も感じさせました。
「これにてクレア・ティアード、改めクレア・グレシアナとレオナルド・グレシアナは夫婦となったことを認める!」
猊下の宣言を聞くと、私は真っ先に拍手を送りました。続いて辺りからもあたたかい拍手が巻き起こりました。クレア様はベール越しでも分かるほど頬を赤らめていて、王太子殿下と見つめあっています。殿下も照れくさそうな、嬉しそうな表情をしています。
これでクレア様は正真正銘、王太子殿下の妻、グレシアナ王国の王太子妃になったのです。
心からの祝福を送ります、クレア様。
本当に、おめでとうございます!
「最後に、口づけを。」
クレア様のベールが上げられ、涙で潤んだ瞳と化粧によって普段より華やかさが増したお顔が現れます。そんな彼女に王太子殿下は一瞬見惚れたようでした。
二人はしばし見つめ合い、そして、顔が近づいて行きました。二人の唇が近づくにつれて、何故か私も一緒にドキドキしてしまいます。
その刹那
フッ、と教会が闇に包まれました。
つい先程まで差し込んでいた昼の日差しも潰え、ムードを出すための照明さえひとつ残らず消えてしまったのです。
「レイ…!」
焦りから方向すらも分からず、すぐ隣にいたはずのルークの声が酷く遠く感じました。
ふと、私の意識が朦朧としてきました。ゆらゆら揺れる蝋燭の炎のように、感覚が途切れ途切れになります。
本能は気を確かに持てと叱咤してきます。しかしそれも虚しく、私は完全に意識を失いました。
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