【完結】虐待された少女が公爵家の養女になりました

鈴宮ソラ

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3章 結婚式

待つ二人①

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<ルーク視点>

「い、行きましょう!」
顔を真っ赤にしたレイが駆け出した。ティアード嬢もそれに続く。その腕を掴もうとしたが、届かなかった。レオナルド殿下も同じだったようだ。

「ま、待つんだ!」
その呼び掛けも虚しく、二人は人混みに溶けていく。それは私たちの行方をも阻み、二人を見失わせるのに充分な役割を果たしていた。



 結果、レイとティアード嬢がいなくなってしまった。便乗してからかい過ぎたせいだろう。
「すみません、調子に乗ってしまいました。」
「いえ、これは私も悪いです。」
レオナルド殿下は露骨にしぼんでいる。

「で、どうしましょう。下手に動かない方が良いと思いますが。」
「同感です。二人なら戻ってくるでしょうし。」
ひとまず店の壁にもたれて待つことに決めたが、心配だ。人は多いしレイもティアード嬢も変装しているとはいえ仕草は完全に貴族のそれ。変な輩に絡まれないと良いのだが。
 王太子と聖女の婚姻とあり、街は非常に活気づいている。人々の密度や盛り上がりからもそれは分かるが、迷い人を探すとなるといささか不安になるものだ。



「さぁご覧なされ!今から超割引だよ~!!」


 ふと聞こえた威勢のいい声は、人混みの耳を引き付けた。方角から察するに女性向け店のどれかだろう。
 ここで予想外だったのは、露店の店主と話していた殿下が一瞬人混の付近にいたことと、周辺にいたほとんどの人がその方向に向かったことだ。人混みは波となり、ほとんど一方通行のようになった。私は殿下を追っていく。つまり、だ。私達もその波押し流される。待たなければいけないのに、流され身体は運ばれていく。

 気づいた時にはかなり流されていて、雑貨屋の前にいた。
「大丈夫ですか…?」
「えぇ、まぁ。割引ってすごい影響力ですね。」
くだんの割引を行っている店は相当客を集めているのか、人だかりで商品が見えない。主に女性が集まっているが、その目は何と言うか、血走っているように見えた。しばらく波は去りそうに無い。

 一息ついて雑貨屋の品に目を落とすと、空色のビーズがあしらわれたブレスレットがあった。レイの髪と瞳の色にそっくりだった。

「ルーカスは本当にレイナを想っているんですね。」
そう殿下に言われた。
 確かに、前までなら考えられなかったことだ。こんなにも誰かに恋をし、想い、支え合って生きていくなんて。こんなにも愛しい人ができるだなんて。

「レオンはクロエをどう思っているんですか?」
そう殿下に聞いた。今日のようにプライベートの雰囲気が強くなると、殿下からはパーティーでは見られなかった独占欲のようなものが垣間見える。
「愛しています。」
するのとてもシンプルな答えが返ってきた。
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