【完結】虐待された少女が公爵家の養女になりました

鈴宮ソラ

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3章 結婚式

探す二人

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 迷子になったのを自覚すると、途端に不安に苛まれました。隣のクレア様も同じようで、顔が真っ青になっています。知らない場所、大勢の人、この中からルークと殿下を見つけ出すのは骨が折れそうです。
 心細そうにしているクレア様は、なんとしても無事に送り届けなければいけません。そのためには私がしっかりしなくては。自分を叱責して、前を見すえます。


「クロエ、とりあえずさっきのお店を探してみましょう。」
「そ、そうですね。」

 とは言っても、ここがどこか分からないことには始まりません。まずは現在地を把握しなければ。

「地図か何かありませんかね?」
「あ、あそこに案内板がありますよ。」

 クレア様が指した方向には確かに大きな板がありました。それによるとここはイベント広場だそうです。恐らく東方面にある出店通りにあのお店があるのでしょう。

「場所は掴めました、行きましょうか。」

 しかし出店通りは相当な面積がありました。案内にあるだけでも五十を超えるお店がありますし、人混みの中での捜索は難しそうです。

「二人が行きそうな場所があるんじゃないでしょうか。」
「確かに。そこも探してみましょう。」

ひとまず私たちは二人が行きそうな場所に当たりをつけ歩きました。武器屋、小物店、本屋、屋台……色々まわりましたが、一向に見つかりません。しかし収穫だったのは、先程の絵を売るお店を見つけた事です。

「あっ、お嬢さんたちまた来たの?冷やかしなら程々にしておくれよ。」
同じお兄さんが店番をしていました。

「あのっ!さっき私たちと一緒にいた二人を見てませんか?はぐれてしまったんです。」
「あぁ…確かに男の二人がいないね。それなら向こう、花屋の方に行ったよ。」

花屋ですか…これは予想外ですね。そちらの方向は女性向けのお店が並んでいるので行かないと踏んでいたのですが。

「ありがとうございます。」
「見つかるといいな、お熱いお二人さん。」

また顔が赤くなるのを感じました。

教えてもらった通りの方に向かうと思った通り、女性が多く歩いていました。それもそのはず、化粧品やアクセサリーのお店が立ち並んでいます。

「あっ、あそこにいるのは…」
クレア様が見つけたのは、雑貨店のウインドーでした。変装したルークと殿下がいます。ですが、何だか様子がおかしいですね。

「少しくらい、いいじゃないですか!」
「そうですよ!私たち、街では美人二人組って言われてたんですよ~」

近づいてみると、二人の女性に囲まれていました。頬は赤らんでいて、完全に二人を狙っているのが分かります。
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