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3章 結婚式
肖像画
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王都は色とりどりの花とガーランドで賑やかに飾られていました。結婚式期間中に臨時で出店しているのかテントや屋台も多く、人でごった返した明るい風景が広がっています。
「そこの若者たち、串焼き買ってかない?安くするよ!」
「西地方のタペストリー、買えるのは祭りの間だけだよー!」
「美しいお嬢さんに花はどうだい?」
活気溢れる市場では様々な声が聞こえます。その中に気になるものを見つけました。
「これは…」
それは、絵でした。気品溢れる顔立ちをした二人の男女が向かい合って微笑んでいます。女性は暗めの茶髪、男性は金髪…もう分かりますよね?
「お目が高いねお嬢さん。それは肖像画だよ。王太子殿下と聖女様のね。」
やはり、お二人のものでした。それにしても誰が描いているのでしょうか。とくに穏やかそうな雰囲気がそっくりです。
「素敵ですね。」
「そうだろう、我が国が誇るお二人だよ。」
後ろのクレア様はほのかに頬が赤らんでいました。自分の肖像画を見ることになるとは思っていなかったんでしょうか。王太子殿下がにんまりと笑いました。
「特に女性…聖女様は美しいですね。」
「も、もういきましょう皆さん。」
「えぇ…買おうかなと思ったんだけど。」
「本気ですか!?」
「冗談だよ。」
クレア様が頬を膨らませて怒りました。宥めるように殿下は手を絡めました。
「こっちの方が綺麗だ。」
と言いながら、手の甲にキスをします。
「も、もうっ!!」
私とルーク、それから店番の方は置いてけぼりで2人を見ています。見てるこっちも熱くなってきますね。チラリとルークの方を見ると、同じような笑みを浮かべてなんと私の髪に口付けたのです。
「なっ!?」
「やってほしいんだと思ったんだけど、違った?」
違うとは言えませんでした。確かに羨ましいとは思ったのですから!
「ひゅーひゅー、お熱いねぇ二組とも。」
私もクレア様も顔を真っ赤にしました。
「い、行きましょう!」
「そそそうですよ!」
そして後ろを振り返らず駆け出したのが間違いでした。
慣れない場所、祭りによってできた人混み、恥ずかしさ。全てが相まって、まずいと気づいた時にはもう遅かったのです。
「レイ…ナ」
「クロエ…」
その時にはルークと殿下の姿は消え、見知らぬ人たちに完全に交ざっていました。かろうじてクレア様は見つかったものの、完全なる迷子です。
「そこの若者たち、串焼き買ってかない?安くするよ!」
「西地方のタペストリー、買えるのは祭りの間だけだよー!」
「美しいお嬢さんに花はどうだい?」
活気溢れる市場では様々な声が聞こえます。その中に気になるものを見つけました。
「これは…」
それは、絵でした。気品溢れる顔立ちをした二人の男女が向かい合って微笑んでいます。女性は暗めの茶髪、男性は金髪…もう分かりますよね?
「お目が高いねお嬢さん。それは肖像画だよ。王太子殿下と聖女様のね。」
やはり、お二人のものでした。それにしても誰が描いているのでしょうか。とくに穏やかそうな雰囲気がそっくりです。
「素敵ですね。」
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後ろのクレア様はほのかに頬が赤らんでいました。自分の肖像画を見ることになるとは思っていなかったんでしょうか。王太子殿下がにんまりと笑いました。
「特に女性…聖女様は美しいですね。」
「も、もういきましょう皆さん。」
「えぇ…買おうかなと思ったんだけど。」
「本気ですか!?」
「冗談だよ。」
クレア様が頬を膨らませて怒りました。宥めるように殿下は手を絡めました。
「こっちの方が綺麗だ。」
と言いながら、手の甲にキスをします。
「も、もうっ!!」
私とルーク、それから店番の方は置いてけぼりで2人を見ています。見てるこっちも熱くなってきますね。チラリとルークの方を見ると、同じような笑みを浮かべてなんと私の髪に口付けたのです。
「なっ!?」
「やってほしいんだと思ったんだけど、違った?」
違うとは言えませんでした。確かに羨ましいとは思ったのですから!
「ひゅーひゅー、お熱いねぇ二組とも。」
私もクレア様も顔を真っ赤にしました。
「い、行きましょう!」
「そそそうですよ!」
そして後ろを振り返らず駆け出したのが間違いでした。
慣れない場所、祭りによってできた人混み、恥ずかしさ。全てが相まって、まずいと気づいた時にはもう遅かったのです。
「レイ…ナ」
「クロエ…」
その時にはルークと殿下の姿は消え、見知らぬ人たちに完全に交ざっていました。かろうじてクレア様は見つかったものの、完全なる迷子です。
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