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3章 結婚式
誘い
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どうしてこうなったんでしょう。
賑わう街の中、以前のように変装をした姿で、私は同じく変装したクレア様と共に迷子になっていました。ルークとレオナルド王太子殿下は人混みに揉まれてどこかへ行ってしまいました。
「ど、どうしましょうレイ様。」
「どうしましょうか……?」
ーーーーーー
発端は先日、私たちの元に招待状が来たことでした。主役はクレア・ティアード様とレオナルド・グレシアナ殿下。そう、二人の結婚式です。
国交回復の直後、グレシアナ王国とは一悶着あったばかりですが、ハルティア王国としてはずっと献身的な捜査を続けてもらっているので文句はありません。襲撃事件の情報は限られた人たちしか知りえませんから、ここで出席しないのは不自然です。国交回復を大きくアピールするためにも、出席や祝い品の献上は必須……
とまぁ、色々言ってはみましたが、純粋にクレア様の結婚はおめでたいです。
実を言うと私たちも半年後に本格的な結婚を予定しています。その頃には私も十六歳ですからね。少しでも早く結婚したいというルークの希望が通り、私の誕生日の二週間後になりました。いくらなんでも早すぎやしないかとも思いましたが、私も早く正式な夫婦になりたいので、反対はしませんでした。
国母になるまで半年と決まると、やっぱり身が引き締まる思いです。王妃として国々の情勢や損得を考えるのも大切ですが、純粋な気持ちを忘れてはいけませんよね。大切な友人の結婚ですから、精一杯お祝いしましょう!
ということで、またグレシアナ王国へやって来たのです。アルガス国王陛下への謁見、祝い品の献上などを済ませると、陛下から晩餐会に誘われました。王妃殿下や主役の二人も一緒だそうです。それを快諾し、私たちは王宮で食事をすることになったのです。
やはり白を基調とした室内では、グレシアナの特産品がふんだんに使われた料理が振る舞われました。どれも料理人の方の腕が良い事が伺える品々です。それらに舌づつみを打っていると、穏やかに微笑む陛下からある提案をされました。
「ハルティア陛下、エメリック嬢、今回の婚儀にあたって王都では祭りが行われています。行ってみてはいかがですかな?」
「そうなのですね!」
確かに馬車で王宮へと向かう際、以前より街の雰囲気が賑やかでした。お祭りになっていたのですね。
「楽しそうですね。レイ、行くかい?」
「ぜひ行ってみたいです!」
会談の時は時間の関係で中央教会とその周辺しか回れませんでしたし、せっかくのお祭りも楽しみたいですからね。
「言うと思ったよ、行こうか。」
ルークも同じだったようです。
陛下は向かい側の王太子殿下たちにも微笑みました。
「レオナルド、お前もクレア嬢と行ってはどうだ?」
「私たちもですか?」
陛下の言葉に、二人とも困惑している様子です。
「お二人は王都に詳しくないからなぁ。案内した方が良いのではないかと思ったんだが。」
「ですがお二人は結婚式の準備がありますよね?そこまでして頂かなくても……」
お気遣いはありがたいのですが、優先すべきは私たちの観光より二人の結婚式です。時間を割かせる訳にはいきません。
「行ってきなさい、二人とも。」
「ですが準備が……」
「大丈夫だ。」
陛下は眉を下げる殿下を諭すように続けます。
「心配なのは分かるが結婚式の準備ならもう本番を待つのみだ。それにクレア嬢、」
「は、はい。」
「王太子妃になれば執務やらで今まで通りの行動はできなくなる。婚約期間最後の思い出をつくってきなさい。」
クレア様は何も言えなくなってしまいました。最初からこれが狙いだったのでしょうか。私たちの案内という大義名分をつけているだけで、お二人にも祭りを楽しんでほしいんだと思います。
「それなら、行ってこようと思います。いいよね、クレア?」
「はい、そうですね!」
それを察したのか、二人は破顔しました。
こうして、私たちは四人で王都に赴くことになりました。図らずともダブルデートのような形になっているのは陛下の意向なのでしょうか。何にしても楽しみです。
賑わう街の中、以前のように変装をした姿で、私は同じく変装したクレア様と共に迷子になっていました。ルークとレオナルド王太子殿下は人混みに揉まれてどこかへ行ってしまいました。
「ど、どうしましょうレイ様。」
「どうしましょうか……?」
ーーーーーー
発端は先日、私たちの元に招待状が来たことでした。主役はクレア・ティアード様とレオナルド・グレシアナ殿下。そう、二人の結婚式です。
国交回復の直後、グレシアナ王国とは一悶着あったばかりですが、ハルティア王国としてはずっと献身的な捜査を続けてもらっているので文句はありません。襲撃事件の情報は限られた人たちしか知りえませんから、ここで出席しないのは不自然です。国交回復を大きくアピールするためにも、出席や祝い品の献上は必須……
とまぁ、色々言ってはみましたが、純粋にクレア様の結婚はおめでたいです。
実を言うと私たちも半年後に本格的な結婚を予定しています。その頃には私も十六歳ですからね。少しでも早く結婚したいというルークの希望が通り、私の誕生日の二週間後になりました。いくらなんでも早すぎやしないかとも思いましたが、私も早く正式な夫婦になりたいので、反対はしませんでした。
国母になるまで半年と決まると、やっぱり身が引き締まる思いです。王妃として国々の情勢や損得を考えるのも大切ですが、純粋な気持ちを忘れてはいけませんよね。大切な友人の結婚ですから、精一杯お祝いしましょう!
ということで、またグレシアナ王国へやって来たのです。アルガス国王陛下への謁見、祝い品の献上などを済ませると、陛下から晩餐会に誘われました。王妃殿下や主役の二人も一緒だそうです。それを快諾し、私たちは王宮で食事をすることになったのです。
やはり白を基調とした室内では、グレシアナの特産品がふんだんに使われた料理が振る舞われました。どれも料理人の方の腕が良い事が伺える品々です。それらに舌づつみを打っていると、穏やかに微笑む陛下からある提案をされました。
「ハルティア陛下、エメリック嬢、今回の婚儀にあたって王都では祭りが行われています。行ってみてはいかがですかな?」
「そうなのですね!」
確かに馬車で王宮へと向かう際、以前より街の雰囲気が賑やかでした。お祭りになっていたのですね。
「楽しそうですね。レイ、行くかい?」
「ぜひ行ってみたいです!」
会談の時は時間の関係で中央教会とその周辺しか回れませんでしたし、せっかくのお祭りも楽しみたいですからね。
「言うと思ったよ、行こうか。」
ルークも同じだったようです。
陛下は向かい側の王太子殿下たちにも微笑みました。
「レオナルド、お前もクレア嬢と行ってはどうだ?」
「私たちもですか?」
陛下の言葉に、二人とも困惑している様子です。
「お二人は王都に詳しくないからなぁ。案内した方が良いのではないかと思ったんだが。」
「ですがお二人は結婚式の準備がありますよね?そこまでして頂かなくても……」
お気遣いはありがたいのですが、優先すべきは私たちの観光より二人の結婚式です。時間を割かせる訳にはいきません。
「行ってきなさい、二人とも。」
「ですが準備が……」
「大丈夫だ。」
陛下は眉を下げる殿下を諭すように続けます。
「心配なのは分かるが結婚式の準備ならもう本番を待つのみだ。それにクレア嬢、」
「は、はい。」
「王太子妃になれば執務やらで今まで通りの行動はできなくなる。婚約期間最後の思い出をつくってきなさい。」
クレア様は何も言えなくなってしまいました。最初からこれが狙いだったのでしょうか。私たちの案内という大義名分をつけているだけで、お二人にも祭りを楽しんでほしいんだと思います。
「それなら、行ってこようと思います。いいよね、クレア?」
「はい、そうですね!」
それを察したのか、二人は破顔しました。
こうして、私たちは四人で王都に赴くことになりました。図らずともダブルデートのような形になっているのは陛下の意向なのでしょうか。何にしても楽しみです。
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