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2章 悲劇の王女
不穏
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襲撃事件が無くても、最近のグレシアナは物騒だ。アルガスは机の上に積まれた報告書の数々にまたため息を落とす。
・王都連続窃盗事件への処断
・商人の買い占めによる流通妨害について
・教会への悪質なイタズラへの対処
・トリスタン地方汚職問題についての報告書
数枚めくってこれである。最近は充分な処遇を与えているはずの司祭や商人からも不満が上がっている。誰か唆している輩がいると見ていい数だ。そして平民の動向も不安定と聞く。なんでも王家がしっかりしていないのに聖女様を守れるのか、と口々にボヤいているらしい。
聖女クレアと教皇オルロスの平民への影響力は凄まじい。ここ十数年で明らかに平民は豊かになった。オルロスの支援で識字率は上がり、クレアの奇跡の力で雨が適度に降るようになった土地では格段に農作物が採れるようになった。他にも二人の功績は多く、平民からの圧倒的な支持を得ている。この二人に何かあれば、まず平民が暴動を起こすだろう。
「聖女は今何をしている?」
「妃教育の最中だと思われます。」
聖女クレアは平民出身だが努力家で、レオナルドも一目おいている。れっきとした貴族家の令嬢だったなら誰からも文句を言われず王太子妃になれただろうから惜しい。
「急ぎレオナルドに取り次げろ、私の執務室に来るように、と。」
「了解致しました。」
アルガスは従者に言付け、彼が部屋を出るのを確認すると、また書類仕事を始める。
しばらくすると、レオナルドが執務室にやって来た。
「父上、どう致しましたか?」
「ハルティア陛下御一行が、帰り際に服従されたグリフォンに襲われた。」
「っそれは!?」
レオナルドは動揺して言葉が揺れた。
「早急に調査をさせているが、ハルティア王国から抗議が来るのは時間の問題だろう。そこで、だ。お前にこの件の処理を任せたい。」
断じて面倒な予感がするからではない、レオナルドの成長のためだ。そう自身に言い聞かせながらアルガスは息子に告げた。
「事件の真相解明は絶対、ハルティア王国とは会談を終えたばかりだ、なるべく穏便に済ませなさい。お前の外交手腕を試させてもらうとしよう。もちろん、クレア嬢やオルロス教皇、各省の力を借りてな。」
「…分かりました。最善を尽くします。」
レオナルドは礼儀正しくお辞儀をすると、ブツブツと独り言を発し始めた。
「…公爵家か?いや、最近はセウン伯爵も怪しい。まず法務省から……謝罪文も書こう。私的な手紙でも……」
「レオナルド、」
「はっ、す、すみません」
親子共々、深い思考に入ると周りが見えなくなるのは似ているようで、アルガスは苦笑いした。しかしグレシアナに不穏な出来事が続いている事実に変わりはなかった。
・王都連続窃盗事件への処断
・商人の買い占めによる流通妨害について
・教会への悪質なイタズラへの対処
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数枚めくってこれである。最近は充分な処遇を与えているはずの司祭や商人からも不満が上がっている。誰か唆している輩がいると見ていい数だ。そして平民の動向も不安定と聞く。なんでも王家がしっかりしていないのに聖女様を守れるのか、と口々にボヤいているらしい。
聖女クレアと教皇オルロスの平民への影響力は凄まじい。ここ十数年で明らかに平民は豊かになった。オルロスの支援で識字率は上がり、クレアの奇跡の力で雨が適度に降るようになった土地では格段に農作物が採れるようになった。他にも二人の功績は多く、平民からの圧倒的な支持を得ている。この二人に何かあれば、まず平民が暴動を起こすだろう。
「聖女は今何をしている?」
「妃教育の最中だと思われます。」
聖女クレアは平民出身だが努力家で、レオナルドも一目おいている。れっきとした貴族家の令嬢だったなら誰からも文句を言われず王太子妃になれただろうから惜しい。
「急ぎレオナルドに取り次げろ、私の執務室に来るように、と。」
「了解致しました。」
アルガスは従者に言付け、彼が部屋を出るのを確認すると、また書類仕事を始める。
しばらくすると、レオナルドが執務室にやって来た。
「父上、どう致しましたか?」
「ハルティア陛下御一行が、帰り際に服従されたグリフォンに襲われた。」
「っそれは!?」
レオナルドは動揺して言葉が揺れた。
「早急に調査をさせているが、ハルティア王国から抗議が来るのは時間の問題だろう。そこで、だ。お前にこの件の処理を任せたい。」
断じて面倒な予感がするからではない、レオナルドの成長のためだ。そう自身に言い聞かせながらアルガスは息子に告げた。
「事件の真相解明は絶対、ハルティア王国とは会談を終えたばかりだ、なるべく穏便に済ませなさい。お前の外交手腕を試させてもらうとしよう。もちろん、クレア嬢やオルロス教皇、各省の力を借りてな。」
「…分かりました。最善を尽くします。」
レオナルドは礼儀正しくお辞儀をすると、ブツブツと独り言を発し始めた。
「…公爵家か?いや、最近はセウン伯爵も怪しい。まず法務省から……謝罪文も書こう。私的な手紙でも……」
「レオナルド、」
「はっ、す、すみません」
親子共々、深い思考に入ると周りが見えなくなるのは似ているようで、アルガスは苦笑いした。しかしグレシアナに不穏な出来事が続いている事実に変わりはなかった。
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