【完結】虐待された少女が公爵家の養女になりました

鈴宮ソラ

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2章 悲劇の王女

帰り道

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 王都を後にし、周辺の貴族の領地をいくつかまわりました。そこで気づいたのですが、やはり教皇猊下とクレア様への信頼が絶大ですね。

 あちこちにある教会では皆さん教皇猊下と聖女クレア様への感謝を述べていました。孤児院の設立、炊き出しの実施、私財を売っての寄付……などなど、上げだしたらキリがありません。

 クレア様は「聖女として生まれただけ」と卑下していましたが、ここまで民衆に慕われるのは容易な事ではありません。やっぱりそこはクレア様の努力の賜物なんだと改めて脱帽する思いです。





◇◇◇




 本日は滞在最終日。いよいよハルティア王国に帰ります。
「お手紙を送ってもいいですか?」
「えぇ、もちろんです!」
クレア様を初めとする親交を深めた方々から見送りを受けました。

「次はもっと深いお話もしましょう。」
「そうですね。ハルティアの地に行ける事を願っています。」

 クレア様と握手を交わした時の感覚、温かいものが身体に流れ込むのを感じました。魔力とはまた違った、何か。


 馬車に乗り込み、ルークと二人きりになりました。揺れの少ない馬車なのでルークと見つめ合う形に。行きの時も思いましたが少し気まずいというか、緊張します。

「レイ、今回はどうだった?」
ふと、窓を見ていたルークに聞かれます。
「一番はシンシア王女についてのお話が衝撃でした。ただ忘れたい事しかなかった伯爵家に、あのような背景があったなんて。」
 伯爵や伯爵夫人から受けた虐待の数々は死ぬまで許せるものではありません。ですがシンシア王女の人生を聞かされると、その許し難さが和らぐ気もします。上手く言えませんが、負の連鎖は終わりにしなければと思ったのです。

「それに、クレア様と仲良くなれた事も良かったです。お互い王妃になる人間ですから、国に対する考えも深まりましたし。」
「それは私も思う。レオナルド殿下とは王太子の時にも度々会っていたが、国王になってからは意見の交流もずっと深くなった。」 
「パーティーの時も……」

 その時です。ズシン、と大きく地面が揺れました。
「きゃっ!」
「どうした!?」
馬車が一瞬傾き、異変を感じた私たちは急いで窓の外を見ます。

 そこにはワシの頭に翼、下半身は獅子のような魔物……グリフォンがいました。
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