【完結】虐待された少女が公爵家の養女になりました

鈴宮ソラ

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2章 悲劇の王女

お忍び

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 滞在3日目、今日からは公式な予定は入っていません。今日から2日ほどかけて、グレシアナの各地、具体的には王都とその周辺領地をまわります。


「行こうか、。」
「そうですね、。」

 とはいえ私たちは国賓。表立って動くと警護やらで大変です。私もルークも街歩き程度の散策を望んでいるので、たくさんの馬車や人を引き連れて行くと迷惑になってしまいます。それに、ハルティアからの客と言うよりありのままの生活の様子が見てみたいのです。
 ですから変装して、いわゆるお忍びで行くのですよ。

 私の特徴的な髪と瞳は魔法で変えました。今の私は茶髪に緑色の目。ついでに変えたルークは赤毛に焦げ茶の瞳。色が変わるだけでかなり雰囲気が様変わりして新鮮ですね。婚約している地方貴族が王都にやって来た、という設定です。名前も偽名を使っています。



 グレシアナの王都は馬車で通った時も思いましたが白を基調としており格式の高さを感じます。お店もほとんど白い壁で並んでいます。
 その中でも王宮と双璧をなす立派な建物がありました。
「あれが中央教会……」

 シアン教の教会は国のいたるところにあるそうなのですが、一際大きいのが王都にあるこの中央教会。やはり白い壁と、三本の槍のような屋根とが鐘が聳えています。主に洗礼と呼ばれる子供の貴族を集めた最初の礼拝と、高位貴族や王族の結婚式に使われるそうです。
 隣接した孤児院からは賛美歌と思われる歌が響いています。

「教会に孤児院を隣接するよう働きかけたのはオルロス教皇猊下らしい。」
「そうなんですか?」
「それで何の知識もないまま大人になる孤児が格段に減り、識字率の上昇にも一役買っているそうだ。」

 識字率は国にとって大切です。小さい頃から良質な教育を受けられる貴族の識字率はもちろん100%ですが、庶民はそうはいきません。お金が無くて学校に通えなかったり、孤児のためどこに行っても学ぶ機会が得られなかったり。
 しかし、民の能力が上がれば必然的に生活の質も向上します。そうなると所得も上がり、税を納めやすくなったり、経済活動が活発になりますから国全体が豊かになるのです。

 そういった意味ではオルロス教皇猊下の功績は大きいと言えるでしょう。先を見すえる頭脳はパーティーで見た時とは違った一面ですね。
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