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2章 悲劇の王女

父親の話

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 午後からの会談は取り引きなどの話ははほとんど無く、互いの国について紹介するのが多くなりました。協議は終わったようで一安心です。

「ときにエメリック嬢。」
 グレシアナ陛下から名を呼ばれ、ドキリと心臓が鳴りました。あぁ、これはいつもの何かが起こる時の予兆です。体内の魔力が、警告しています。油断するな、何かがあると。

「貴方の父君について知らせておきたい事がある。今日この会談に出席してもらったのはそのためだ。」
「お父様が…どうされたのですか?」
私が緊張感を持ったのを察したのか、ルークが大丈夫かと視線を送ってきます。
「エメリック公爵に何かあるのですか?」

私とルークの質問に、陛下は首を横に振ります。


「違う、エメリック嬢。貴方の父君の事だ。」
実の父君と聞こえたところで、心音が一層大きくなります。わざわざその言い方をするくらいですから、ここでの父君とはオラルト伯爵を指しているのでしょう。
「どういう事でしょうか?」
私が虐待を受けていた事実を知っている人はそれほどいません。お父様が気を使って広めていないからです。私自身も同情されるのは好きではありませんしね。陛下は、どこまで知っているのでしょうか。

「陛下。レイの過去については、彼女が酷く傷つく可能性がある事もご存知ですよね?」
「あぁ、勿論。しかしこの話は必ずエメリック嬢に伝える必要があると判断した。」
「ですが……」
「ルーク、大丈夫です。」
気を使って陛下に意見するルークを止め、陛下に向き直ります。一国の主がそれほどまでに重要視している話を、私情で聞かない訳にはいきません。それがたとえ、伯爵の事だとしても。

「陛下、私は過去についてはもう清算したつもりです。受け止める覚悟はあります。」
「そうか、では。」
陛下はその紫色の瞳で私を見つめて、
「ここからの話は他言無用でお願いする。」
語り始めました。



 その時陛下から聞いた話はまさに悲劇。一人の女性の数奇な人生とそして、私の実の家族に通ずる衝撃的なお話です。
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