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第二部1章 隣国へ
感情の行く末は
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「ティアード様、聞いてください。」
「は、はい。」
私の剣幕に押し通されたのか、ティアード様は戸惑いました。それでも続けます。この苦しみは、ティアード様も味わっているのでしょうから。どうしようもない苦しい感情は、行き場を無くせば自分を壊してしまいます。それは私がよく分かっています。
「私は聖女やシアン教については今日詳しく知ったばかりです。それでも、聖女という役職の重さはよく分かりました。」
「で、ですが……」
「聖女として生まれただけで、それだけでもてはやされるのならそれは偽りの賞賛です。ですが多くの貴族の方々はティアード様を尊敬の目で見ていました。偽りのない尊敬です。」
「………」
「それはティアード様が聖女として、王太子の婚約者としてずっと努力してきたからです。分かる人は分かるのです。それでも庶民だからとティアード様を貶す方がいるのなら……」
「そんなの、クソ喰らえです。」
一気にまくし立て、最後は淑女らしからぬ言葉になってしまいました。ハッと我に返ると、私はとんでもない事をしてしまったのではないのかと恐れてきました。この国にグレシアナ王国に来たばかりなのに、凄く上から目線で国の貴族について語ってしまいました。
「あ、あの……」
「ふっ、あは。あははは!」
ティアード様はオロオロする私を尻目に笑いだしました。
「ありがとうございますエメリック公爵令嬢。」
満面の笑みで今度は私に語りかけます。
「私は…自分を見失っていたみたいです。」
「でも目が覚めました。誰になんと言われようと、私は私。聖女でありレオナルド殿下の婚約者です。それは揺るぎないです。」
ティアード様は身体を人混みに向けました。
「次期王妃がこんなに弱気ではいけませんよね。私はグレシアナを、国を守る聖女なんですから!」
そして人混みに向かって歩きだします。私もそれとなくついて行きます。
「私は国を守る聖女として……王妃として生きるんです。誰からも認めてもらえるようになりますよ、きっと。」
その姿は凛々しく美しくて……
「もちろん、レイ様にも劣らない王妃になりますよ?」
神聖な神の加護を受けた女性と言うのが、分かった気がしました。
「えぇ!クレア様!」
「は、はい。」
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「私は聖女やシアン教については今日詳しく知ったばかりです。それでも、聖女という役職の重さはよく分かりました。」
「で、ですが……」
「聖女として生まれただけで、それだけでもてはやされるのならそれは偽りの賞賛です。ですが多くの貴族の方々はティアード様を尊敬の目で見ていました。偽りのない尊敬です。」
「………」
「それはティアード様が聖女として、王太子の婚約者としてずっと努力してきたからです。分かる人は分かるのです。それでも庶民だからとティアード様を貶す方がいるのなら……」
「そんなの、クソ喰らえです。」
一気にまくし立て、最後は淑女らしからぬ言葉になってしまいました。ハッと我に返ると、私はとんでもない事をしてしまったのではないのかと恐れてきました。この国にグレシアナ王国に来たばかりなのに、凄く上から目線で国の貴族について語ってしまいました。
「あ、あの……」
「ふっ、あは。あははは!」
ティアード様はオロオロする私を尻目に笑いだしました。
「ありがとうございますエメリック公爵令嬢。」
満面の笑みで今度は私に語りかけます。
「私は…自分を見失っていたみたいです。」
「でも目が覚めました。誰になんと言われようと、私は私。聖女でありレオナルド殿下の婚約者です。それは揺るぎないです。」
ティアード様は身体を人混みに向けました。
「次期王妃がこんなに弱気ではいけませんよね。私はグレシアナを、国を守る聖女なんですから!」
そして人混みに向かって歩きだします。私もそれとなくついて行きます。
「私は国を守る聖女として……王妃として生きるんです。誰からも認めてもらえるようになりますよ、きっと。」
その姿は凛々しく美しくて……
「もちろん、レイ様にも劣らない王妃になりますよ?」
神聖な神の加護を受けた女性と言うのが、分かった気がしました。
「えぇ!クレア様!」
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