【完結】虐待された少女が公爵家の養女になりました

鈴宮ソラ

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第二部1章 隣国へ

どうしようもない問題

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「教皇猊下、陛下がお呼びです。」
「おぉ、分かった。」
猊下が立ち去りました。私はティアード様に歩み寄ります。
「少し、お話をしませんか?」


 クレア様と人混みを抜け、二人きりになりました。少し静かな場所から人混みの喧騒を見つめます。
「お話できて嬉しいです。エメリック公爵令嬢。」
「私もです、ティアード様。」

 そうして私たちは、語り合いました。いずれ王妃になる人間として、外交の場に立つ国の代表として。
「エメリック公爵令嬢は凄いですね。革命を起こして自分の手で国を変えてしまうなんて。」
「お父様たちの尽力が大きいと思います。私は手伝っただけですよ。」
「それでもです。私は公爵令嬢のような力強い女性に憧れます。」
「それを言えば、ティアード様も聖女として国を守っているではないですか。」
国を自分の手で守るというのも充分凄い事だと私は思います。

「それでも私はまだまだ未熟なのです……貴族の中でも私を認めてくださらない方は大勢いますし。」
「何故でしょう?国を豊かにする力を持っていると言うのに。」
純粋に湧いた疑問を話すと、ティアード様は悲しそうに微笑みました。
「私が庶民出身だからですよ。」

 シンプルで、それでいてどうしようもない問題でした。だからこそティアード様は悲しそうに笑い、私も悲しくなるのです。やはりどこの国にもいるのだと悟りました。生まれで人を差別して認めない人は。

「お父様……教皇猊下の養女になったのも、レオナルド殿下と婚約したのも、私が後ろ盾を得るためなんです。でも、私自身は庶民だからと………聖女として生まれただけなのにと。」
「………」
「確かにそうだなって思うのです。私は聖女として生まれただけ。レオナルド殿下と婚約したいご令嬢は沢山いただろうに私は……」
「やめてください。」
ほとんど悲鳴のような声でした。気づくと私はティアード様の手を握り、必死に語りかけていたのです。

「そんなにご自分を卑下なさらないで……!!」
「え……?」
苦しかったのです。まるで自分自身に価値などないと言うティアード様が。オラルト伯爵家にいて、養女になったばかりの頃の自分に重なって。とても胸が苦しかったのです。
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