【完結】虐待された少女が公爵家の養女になりました

鈴宮ソラ

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第二部1章 隣国へ

王太子と聖女

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「陛下、エメリック公爵令嬢。」
シャーロット様と話していると、よく通る声が耳を抜けました。振り返ると一際身なりのいい男女がいました。

「「王太子殿下、聖女殿!」」
周囲から驚きの声が起こります。そう、この方々がグレシアナ王国の王太子とその婚約者である聖女様の2人なのです。
「皆、そう固くならなくとも大丈夫だ。」
「王太子レオナルド殿下ですね。」
ルークが問いました。そして殿下は大きく頷きます。

「えぇ、ハルティア陛下。エメリック公爵令嬢も初めまして、グレシアナ王国の王太子、レオナルド・グレシアナと申します。」
レオナルド殿下は国王陛下によく似た金髪をお持ちの方です。さすがに気品がある立ち振る舞いで、場の注目が殿下に集まります。
「そしてこちらが婚約者の……」
そう言ったのは私です。レオナルド殿下の隣に立つ、焦げ茶色の髪の女性。彼女こそがこの国の個性を体現していると言っても過言ではありません。

「お初にお目にかかります。レオナルド殿下の婚約者と聖女を任されております。クレア・ティアードです。」
今クレア様が言った「聖女」と言う言葉。これこそ、グレシアナの最大の特徴なのです。ですが私やルークが知るのはそこまで。聖女などに関する情報は私達では知ることができません。文献で分かるのは名前だけなのです。

「私はハルティアの国王、ルークと申します。」
「陛下と婚約させていただいております、レイ・エメリックと申します。」
私達も自己紹介を終えます。そうすると場の緊張感は更に高まります。ルークとレオナルド殿下、2つの国の王族が対面しているのですからね。

「今日は我が国にお越しいただき、ありがとうございます。」
「そんな、とんでもない。グレシアナ王国は美しい国ですね。こちらも楽しませていただいています。」
「そう言ってもらえると嬉しいです。」
「ティアード嬢は聖女と聞きました。聖女とはどういったものなのですか?」
「それは……」

 ティアード様が口を開こうとした、その時。
「私から説明しましょう。」
少し掠れた、太い声が聞こえました。
「お父様……」
クレア様が呟きます。そこに居たのは恰幅のいい男性でした。
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