【完結】虐待された少女が公爵家の養女になりました

鈴宮ソラ

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第二部1章 隣国へ

扇子

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「皆の者、今日はよく集まってくれた。」
グレシアナの国王陛下が挨拶を始めました。白髪混じりですが輝く金髪が印象的な方で、堂々とした振る舞いは王としての貫禄を感じます。それは才覚とは別の、年月によって積み重ねられるものなのでしょう。場の雰囲気を一気に掌握してしまいました。

「…そして、紹介しよう。隣国、ハルティア王国からの客人だ。我々との会談の為に遠路はるばるやって来てくれた。」
陛下が私たちを見ました。ルークにエスコートされ、前に出ていきます。視線が集まり、突き刺さってきますね。

「ハルティア王国の新たな国王、ルーク・ハルティア殿とその婚約者、レイ・エメリック殿だ。」
ルークと共に礼をします。


 その時、会場にカシャリと音が響きました。
「……シア……?」
加えて僅かな声も。さほど大きくはありませんが、静まった会場では大きな音に聞こえます。ですが、それを咎めても仕方がありません。進行を続けてもらいましょう。

「……では、今日の宴を楽しもう。」

陛下の声と共に私とルークは人混みの中に戻りました。



「ハルティア陛下、私は伯爵家の……」
「婚約者様!侯爵家から参りました…」
「お二人共、お話しましょう!」

 パーティーが開始されると、私とルークは人に囲まれてしまいました。そして怒涛の挨拶攻めです。いつしかのデビュタントパーティーを思い出す盛況ぶりですね。まぁ陛下からも紹介されましたし縁が欲しいのも頷けますが、相変わらず下心を隠そうともしない方には少し嫌になります。

「お二方、先程はすいませんでした。」
そんな中、出会い頭に謝る方がいました。驚いてルークを顔を見合わせます。

「ど、どうされたのですか?」
その女性は私達より明らかに年上で戸惑います。
「私はお二方が話している最中、扇子を落としてしまったのです。お話を妨害してすみませんでした。」

「あぁ、それほど気にしていませんから大丈夫ですよ。」
意外な事に先程の音の主のようでした。でも、扇を落として音を立てたくらいで咎めたりはしません。
「あ、ありがとうございます。」
女性はホッとしたのか、私たちと目を合わせて話出しました。特に私の瞳をじっと見つめながら。

 その女性はシャーロットと言う名でした。
「国王アルガスの姉で、ディストア辺境伯の妻をしていますの。」
辺境伯夫人であり、王家出身のようです。王女という事もあり大変気品があり、笑顔が優しげな方です。
「これからよろしくお願いしますね。陛下とレイ様。」
「えぇ、もちろんです。」
扇子で口元を隠しつつシャーロット様はまた微笑みました。目じりのシワが彼女の優しさを物語っていますね。
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