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第一部番外編

立派な妹②

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 そんなレイも今や国王の婚約者だ。やはり手紙でその事実は伝えられたが、それはそれは衝撃を受けた。
 儚くて、か細い少女は見ないうちに成長したのだった。あれから兄らしい事はあまりできていなかったが、妹の幸せは祝福しなければいけないだろう。私は祖国へ向かった。

 ちなみに、今私は隣国の学院では博士課程を進んでいる。卒業は来年。卒業後は本格的に帰国して爵位継承の準備をする。

 と、帰る最中にトラブルが発生した。乗っていた馬車の御者が体調を崩してしまったのだ。元々あまり余裕の無いスケジュールだったのだが、これでは戴冠式に間に合わない。
「本っ当に、申し訳ありませんでした……」

 御者が回復した後、かなりのスピードで馬車は進んで行ったが、結局戴冠式には間に合わなかった。時間が無いので詫びの品やらを断り、王宮まで着くと両親がバルコニーを眺めていた。あそこからレイと新国王、ルーク陛下が挨拶をするのだそうだ。


 ルーク陛下とは彼が王太子だった頃からパーティーなどでたまに会っていた。生真面目で苦労人と言う印象だ。ミラ王妃譲りの容姿と頭脳を持つ彼は無能な王に代わり執務に奔走していた。しかし婚約者のテレネシア公爵令嬢は目も当てられないほど王妃には向いていない人だった。総じて周囲に恵まれなかった人物だと言えるだろう。
 それでも良く真っ当に育ったものだ。関心すると共にレイと似た人物だと思った。レイもあれだけ能力があるのに周囲の環境に恵まれず、長い間虐げられていたから。



 バルコニーに現れたレイは笑っていた。穏やかに、全てを包み込むようでありながら、胸の内には強い決意を秘めているのだろう。
 しかしルーク陛下とひとたび目が合えば、それとは別の笑みを浮かべる。その表情に含まれているのは、間違いなく愛だろう。堅物だったルーク陛下も同じようにレイに愛を向けている。幸せそうだった。愛し合っていた。

 2人を見ていると、隣国にいる恋人を思い出した。私の愛する、大切な恋人。

 そしてこの2人ならついていけると確信した。ハルティア王国唯一の公爵の位を継ぐものとして、レイの兄として。
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