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第一部番外編

元王の独白①

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 薄暗く、汚れた部屋の中には私とリリアーナの2人きり。普段なら愛するリリアーナと茶を飲んだりスキンシップをしているのだが、今はそんな事をする余裕はない。

 ここは、群青の塔。罪を犯した王族が入る為、数百年前に造られたは良いものの、全くと言っていいほど使われてこなかった場所らしい。使われるのは私達で2回目だと看守が言っていた。
 ついこの間までは、国民の誰よりも豪華で贅沢な暮らしをしていた。しかし今はどうだ。不気味な空間に閉じ込められ、魔力も道具で封じられ、最低限度の食事。娯楽は一切無い。はめ込まれた格子窓から差し込む光だけが時の流れを教えてくれるだけで、今が何日かなんて数えるのはとっくに止めた。
 愛するリリアーナもこの最低な生活のせいで美しさを失ってしまった。艷めく金髪は埃が被り、白くていつでも触れたくなるような肌は荒れ放題。桃色の瞳は光を失った。差し出される食事にいつも品なくがっつき、私の分も食べるのだから初めてリリアーナ腹が立った。

 あれだけ、愛しかったのに。愛しくてたまらなかったのに。極限状態というのは真実の愛すらも曇らせてしまうのか。


 ふと窓の外を見ると、王宮前に人が溢れていた。平民、貴族、様々だった。口々に「新国王」や「ルーク陛下」と叫んでいる。今日はルークが即位するらしい。

 ルーク・ハルティア。あいつを息子と呼んだ事はなかった。王太子の地位を与えていたのも不本意ながらの事だった。私の後を継ぐのは愛するリリアーナとの子だけだと思っていたから。ましてや憎き女との子が王位につくなどありえないと。

 アイツの母親はミラ・ハルティア。私がこの世で最も嫌っていた女。
 あいつと婚約したのは10歳か、11歳かその位の時のこと。その頃私は第二王子だった。初対面であいつの全てを見透かすような翡翠の瞳に寒気がした。そしてそれからというもの、アイツはことある毎に

「王族としての自覚をお持ちください。」
「庶民がいてこその貴族なのですよ。庶民も大切にしなければ。」
「課題は自分の力をつける為のものです。自分でやってください。」

と王族である私に上から目線で意見してきた。侯爵令嬢の分際で、第二王子たる私に。まったく可愛げのない女だった。少しばかり勉学の才があるからと言っていい気になっている生意気な女だった。
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