【完結】虐待された少女が公爵家の養女になりました

鈴宮ソラ

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3章 共同作戦

ミラ王妃

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 お父様と、ミラ王妃様が親戚…?
 意外な繋がりに私は驚きました。そして、お父様は淡々と語ったのです。


 現国王ラウス・ハルティアがまだ王太子ではなかった頃、ミラ・エルラインと言う侯爵令嬢がいた。彼女は私の父の姉の娘…私の従姉だった。

 ミラは侯爵令嬢でありながら孤児院やスラムの環境改善について役人たちと対等に議論するような人だったから、私もよく知識を貰っていた。その優秀さを変われラウスと政略結婚をした。その明晰さには宰相も舌を巻き、妃教育も短期間で終えたと言う。私はミラが誇りだった。

「王宮は新しい知識の宝庫で、とっても楽しいの!リアムも王宮仕えになったらいいのに!」

 それに対して王子ラウスは勉学を軽んじ、下町を遊び歩く日々を送っていた。そんな人間が何故国王に即位できたのか。理由は単純、他の王位継承者が軒並み継承レースからいなくなったからだ。ある者は事故死し、ある者は航海に目覚めたと言って旅に出た。どんどん継承者たちがいなくなり、最後に残ったのがラウス王子だったのだ。若かった私もいい印象は抱いていなかった。

「ラウス殿下は……うん。平民の方にも目を向ける方だわ。」

 ミラとラウスは結婚し即位したものの、仲は冷えきっていた。婚約期間中、何度もラウスは不真面目さを叱責するミラに対して逆上し、学のある女は生意気だとミラや周囲に言い放っていた。

「どうしたら王族の威厳を持ってもらえるのかしら…正式に王太子になられたというのに。」

 国王に即位しても夜会で令嬢を口説いているのは有名な話だ。そこで出会った伯爵令嬢を愛人に迎え入れ、後宮に入り浸っているのもまた然り。その姿を見る度軽蔑の視線を送っていた。

「陛下は私を愛してはいないの。でも、私は良いのよ。国民の皆の為に最大限の力を発揮できる役職であるなら。」

 即位して1年ごろ、ミラが懐妊した報告を受けた。その頃から王宮の財務部に勤めていた私は心から祝ったが、ミラの顔は明るくなかった。
「陛下は……私の妊娠を喜んでくださらなかったの。それどころか、不貞を疑われたわ……」

 流石に国王の人格を疑った。しかもミラの机には大量の書類。その頃からだろう。国王に向ける感情が並外れた嫌悪になったのは。

「最近、凄くつわりが酷いの…不安だわ。」

 婚約期間中の、明るいミラはもういなかった。日に日に衰弱し、後ろには暗い影がまとわりついていった。ルーク殿下が生まれた時、王国は歓喜に湧いた。
 しかし程なくしてミラは亡くなった。衰弱死だった。

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