【完結】虐待された少女が公爵家の養女になりました

鈴宮ソラ

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3章 共同作戦

誕生パーティーでの事

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 そんなルークにも、14回目の誕生日パーティーがやって来た。しかし去年と大して変わらず、欲に塗れた貴族たちに挨拶と贈り物をされ、ディアナと踊る。それだけだった。

 しかし今回の贈り物には、珍しい物があった。エメリック公爵家から贈られた魔道具だ。記憶を映像化して映し出すという。
「素晴らしいですね。どう言った構造なのでしょうか?」
「公爵領の魔鉱石を使っているんです。ここは錬金……」
勤勉なルークには至極興味深い話だった。しかし今も昔も息付く暇なんて無かったルークにとって、過去を思い出す必要は無いように感じられた。


 挨拶も一通り終わり、ルークは会場から抜け出すことにした。前日に徹夜して執務をしていた状態でパーティーに臨んだため、少しばかり体調が悪かった。地に足が着いている感覚がしない。
 庭園に歩いていくと、変わらず美しい花々が咲いていた。だが庭園には、見覚えのない景色があった。

 青い薔薇が咲き誇る庭園の中に、水色の花が1輪咲いていた。花は椅子に座り、リラックスしている。
「レイ・エメリック公爵令嬢か……」
花は人だった。デビュタントパーティーで婚約者が迷惑をかけた令嬢だ。

 心身ともに疲弊していたルークは、レイを花の妖精だと思った。それほどレイは美しく、凛としていたのだ。
 吸い込まれるようにルークは庭園に向かった。足を踏み入れた瞬間ハッと我に返り、あくまで偶然を装った。

 レイも外の空気を吸いに来たようで、パーティーに息苦しさを感じていたルークは共感した。


「殿下、余計なお世話かもしれませんがよろしいですか?」
「構わない。」
「少し、お顔の色が悪いように見えます。」

 レイの指摘に、ルークは図星をつかれドキリとした。未来の王たるもの、少しの不調は隠して仕事をする必要があるからだ。しかしレイはいとも簡単に不調を見抜いてしまった。そうか、と力のない返答をする。
 レイがルークを見つめる。滅多に見ない水色の瞳は幻想的で、ルークの胸は静かに高鳴った。

「あまりご無理をなさらないでください。」

そしてレイは言った。ルークは驚いた。今まで体調不良になっても臣下たちは心配はするが、それは執務が滞らないようにする為だ。

「身体を壊さない程度に無理をして仕事を進めてください。」

と心の中で思っているが丸分かりだ。それでもルークは臣下に、国民に迷惑をかけない為に身体を無理やり働いた。”無理をするな”という言葉を聞いたのは初めてで、ルークの心に響いた。


 ルークは自分でも不思議なくらい、レイに心を許してしまっていた。誰にも言っていない婚約破棄の話までポロリと話してしまうくらいに。

 庭園を出ると、ルークの身体は幾分か楽になったように思えた。爆弾発言をしたにも関わらず心も穏やかだ。それが何故なのかはルークにも分からなかった。
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