【完結】虐待された少女が公爵家の養女になりました

鈴宮ソラ

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2章 王太子と公爵令嬢

反撃

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 私は思い出しました。元父、オライト伯爵の愛人の名前が、モニカ・ルマーリンだったことを。あの方はドロシー様の母君だったのですね。

「こんな偶然もあるものですのね。」
「やはり、そんな血筋のレイ様は公爵令嬢なんて相応しくない人物なのでは?」
「ドロシー様も、いい気味ですわ。」
 取り巻きの方がまた口々に言います。


 もう、我慢の限界です。
「おやめください。」
 私は声を上げます。ハッキリと、お腹からの声です。

「いくら夫人が浮気をしていようと、ドロシー様の人柄には何の関係もありません!」
 私の言葉に反応して、ディアナ様が鼻で笑います。
「レイ様、遺伝と言うものをご存知で………」

「ディアナ様、性格とは生まれ持った『魔力波』に大きく左右され、遺伝は少ない事が研究によって証明されています。」
 ディアナ様の言葉を遮り、カレン様がそう言います。途端にディアナ様は不機嫌そうになりました。

「う、嘘よ。大体、魔力波なんて聞いた事が無いわ!」
「魔力波とは、人の魂に眠る魔力を制御するものです。魂に近い魔力の器の制御によって性格の個人差が出てくるのです。人体学の専門分野になります。」
「黙りなさい!伯爵令嬢ごときが!」
「それに加え魔力波は制御能力の差の他にも、数十もの種類があり、混合型も………」
「黙れと言っているでしょ!!」

 ナイス援護射撃です、カレン様。明晰なカレン様が言うと説得力があります。

「ディアナ様、これはドロシー様に対する侮辱です。謝罪を。」
 肝心のドロシー様は俯いて震えています。

「い、嫌よ!高貴な私が……!」
「高貴でも何でもマナーは存在しています。」

 ディアナ様は歯ぎしりして睨みをきかせています。謝罪するのがそんなに嫌なのでしょうか。

「ドロシー様、この件は大ごとにした方が良いと思いますか?」
「え……?」
「王太子殿下の誕生日パーティーに婚約者様が問題を起こしたのです。国王陛下や王太子殿下に報告するのも可能です。」
「そ、そんな!?ルーク殿下だけは……!」

 ドロシー様は何か考え込み、前を、ディアナ様の方を向きました。
「私はそこまで大ごとにはしたくないと考えています。今日は祝いの席ですもの。ですが、何も無しに水に流すのは……」
「ディアナ様、当事者のドロシー様はこう言っていますが、どうしますか?」


 謝らなければ王太子殿下に報告。報告されたくなければ謝罪。ディアナ様の表情が追い詰められていきます。

「っ!も、申し訳、ありませんわ……」
「いえ、良いのです。」

 これは勝ちましたね。ドロシー様の侮辱も謝罪してもらいましたし。
 ディアナ様は取り巻きを連れて逃げて行きました。

「良かった……良かったです本当に…!」
 ドロシー様が涙声で言いました。相当怖かったのでしょう、全身が小刻みに震えています。

「ドロシー様は悪くありません。」
「ですが、母の事が……」
 夫人のことを気にしているのですね。

「ドロシー様、夫人が何をしていようと、ドロシー様が酷い人だとは思いません。そうですよね?カレン様。」
「ええ、もちろんです。」

「本当ですか…?私、怖くて…」
「私も犯罪者の娘ですもの。ドロシー様は私が犯罪者に見えますか?」
「いいえっそんな!」
「じゃあ、ドロシー様も同じですよ。」

「そうですね!!」
 ドロシー様が見せた笑顔はとても可愛らしく、ひまわりのような明るさでした。
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