【完結】虐待された少女が公爵家の養女になりました

鈴宮ソラ

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1章 新しい家族

信じる

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 それから、公爵様は色々な事を話されました。信頼できる人にも話すのは慎重になること。
近いうちに口の固い家庭教師を付けること。
身体に異変があったらすぐに言うこと。

 そして、
「私は、いや……この公爵邸の人間は、誰も君を虐げたりしない。安心して過ごしてくれ。私達も精一杯愛を注ぐつもりだ。」
そうおっしゃいました。私の頭を撫でると、部屋の扉を開けます。外にはポーラさんが待っていました。
「流石だね、ポーラ。それから、急だけど人事異動だ。君とエリカをレイの専属侍女に任命する。引き受けてくれるね?」
「勿論でございます。エリカも喜んで引き受けると思います。」
「ありがとう、エリカには伝えておいてくれ。今日から頼みたいから、早めにね。」
「了解いたしました。」
ポーラさんはお辞儀をすると、きっちりした姿勢で戻って行きました。

 私は部屋に戻ると、ベットに倒れ込みました。朝早くから色んな事が起こり過ぎました。時刻はまだ8時。しっかり寝た筈なのに、ドっと疲れてしまいました。

 そういえば、部屋の氷が溶けていますね。あんなに凍りついていたのに、綺麗に無くなっています。
「レイ、いいかしら?」
上品なノックの後、公爵夫人様の声が聞こえてきました。驚いてベットから飛び上がり、恐る恐る扉を開けます。
「突然ごめんなさいね。リアムから聞いたの。貴方のことを。」
「………」
「あ、ここの氷は私の魔法で溶かしたのよ。私の光魔法で。」
そう言うと、公爵夫人様は私を抱きしめました。公爵様と同じで、とても温かく、優しいです。
「私は、レイと本当の家族になりたい。そして、レイが背負った悲しみや傷を全部、受け止めたいの。」
「………」

 言葉が、出ませんでした。
 本当に、信じていいのでしょうか。心のどこかで分かっていたのです。公爵邸の方々は私を大切に思ってくれる人だと。ですが、怖くてたまらないのです。また、伯爵様と伯爵夫人様のように豹変して、私をゴミのように扱うのではないのかと。あの日々に戻るのではないのかと。

 公爵夫人様の体温は、私の身体を包み込んでいきます。涙が私の頬、公爵夫人様の身体を伝い流れていきます。
「……っ!………っ……!」
喉がとても熱くなって、声にならない声だけが溢れ出しました。


「話せるようになったら、私の事はお母様と呼んでね!」
私の嗚咽と涙が治まると、公爵夫人様はそう言いました。
「……………」
しばらく反応出来ませんでした。公爵夫人様を母親だなんて恐れ多すぎます。
「もう貴方は私の可愛い娘なのよ。」
公爵夫人様の慈悲深さが、とても心に染み渡ります。

 あぁ、私の心に、今まで感じたことの無い温かい感情が流れ込んで……
「お、か、おかぁ様………」
出したくても出せなかった声が、いつの間にか出ていました。
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