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1章 新しい家族
公爵様
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伯爵様の声です。続いて大声が聞こえてきました。落ち着きがありつつよく響く声です。
「ここまで証拠が揃っているんです、言い逃れはできませんよ!」
「そんなのでっち上げだ!」
「では、いいです。これから屋敷を調べさせてもらいますね。捜査許可は降りています。」
「そ、そんな!」
声は私が通路の端に行くまで聞こえてきました。
自分の部屋に戻り、イスに腰掛けます。しばらくすると、突然来客がやって来ました。公爵様です。
「! こんな所に人が……」
随分驚いているようです。魔法で辺りを照らされています。
「貴方の名前は?」
「…………」
「答えてくだ……」
「エメリック公爵様!!!」
公爵様の言葉を遮り、ズカズカと伯爵様が部屋に入って来ました。
「その者は下女にございます!公爵様が関わる必要が無い汚き女です。どうか離れてください。」
「オラルト伯爵、私はこの方に用があるのです。口出しなさらないでください。」
そう言って公爵様は伯爵様を部屋から追い出しました。それから、護衛の方でしょうか?伯爵様を遠くで押さえさせました。
「さて、これで良いですね。もう一度聞きます。貴方の名前は?」
「…………」
「何故答えられないのですか?もう伯爵は居ないですよ。」
「…………」
「もしかして………話せないのですか?虐待のせいで心を閉ざしてしまって………?」
「…………」
何故話さないのかは、自分でもよく分かりませんでした。ただ、本能が『話すな』と言っている気がしました。
「では、こうしましょう。貴方はレイ・オラルト伯爵令嬢ですか?」
「!」
「顔を変えましたね。やはりそうなのか………」
「今からここを調べます。話さなくてもいい。首を振るなりして答えてください。」
公爵様は私の部屋を調べ始めました。
「この布は?タオルですか?」
「………ち…ぃます」
久しぶりに聞いた私自身の声は、とても醜いものでした。凄く小さくて、かすれていて、聞き苦しいものです。
「違う?じゃあ何ですか?」
「し……んぐ」
「寝具!?」
また随分驚いていますね。
「では、この木の板は?壊れた壁ですか?」
「ぃ………」
「ゆっくりで良いですよ。い、何ですか?」
「いす………」
「イス………か。酷いな。」
「食事はここで食べてるのですか?」
首を横に振ります。
「ではどこで?丁度昼食でしょう、案内してもらえますか?」
今度は縦に振ります。
私は公爵様を厨房に案内しました。食事は置いてありません。料理人の方々も昼食をとっているのか、厨房は静かです。
「肝心の食事が見当たらないのですが……」
「………」
昼時なのに、無いのがおかしいんでしょうか。
「まさか、食事が与えられて無い?いや、そうだとしたらこの子は餓死してしまうはず……」
公爵、ブツブツ何かを呟いていますね。そのときでした、料理長が厨房に入って来ます。
「またお前か!何度来ても朝以外飯は無いぞ!」
「何ですって?」
公爵様は料理長の言葉に顔色を変えます。公爵様に気づいた料理長も同じです。
「こっ、公爵様!? どうしてここに!?」
「今の話は本当ですか!?」
「い、いえっ!今のはほんの冗談で……」
たじろぐ料理長。公爵様はまた更に顔をしかめました。
「ここまで証拠が揃っているんです、言い逃れはできませんよ!」
「そんなのでっち上げだ!」
「では、いいです。これから屋敷を調べさせてもらいますね。捜査許可は降りています。」
「そ、そんな!」
声は私が通路の端に行くまで聞こえてきました。
自分の部屋に戻り、イスに腰掛けます。しばらくすると、突然来客がやって来ました。公爵様です。
「! こんな所に人が……」
随分驚いているようです。魔法で辺りを照らされています。
「貴方の名前は?」
「…………」
「答えてくだ……」
「エメリック公爵様!!!」
公爵様の言葉を遮り、ズカズカと伯爵様が部屋に入って来ました。
「その者は下女にございます!公爵様が関わる必要が無い汚き女です。どうか離れてください。」
「オラルト伯爵、私はこの方に用があるのです。口出しなさらないでください。」
そう言って公爵様は伯爵様を部屋から追い出しました。それから、護衛の方でしょうか?伯爵様を遠くで押さえさせました。
「さて、これで良いですね。もう一度聞きます。貴方の名前は?」
「…………」
「何故答えられないのですか?もう伯爵は居ないですよ。」
「…………」
「もしかして………話せないのですか?虐待のせいで心を閉ざしてしまって………?」
「…………」
何故話さないのかは、自分でもよく分かりませんでした。ただ、本能が『話すな』と言っている気がしました。
「では、こうしましょう。貴方はレイ・オラルト伯爵令嬢ですか?」
「!」
「顔を変えましたね。やはりそうなのか………」
「今からここを調べます。話さなくてもいい。首を振るなりして答えてください。」
公爵様は私の部屋を調べ始めました。
「この布は?タオルですか?」
「………ち…ぃます」
久しぶりに聞いた私自身の声は、とても醜いものでした。凄く小さくて、かすれていて、聞き苦しいものです。
「違う?じゃあ何ですか?」
「し……んぐ」
「寝具!?」
また随分驚いていますね。
「では、この木の板は?壊れた壁ですか?」
「ぃ………」
「ゆっくりで良いですよ。い、何ですか?」
「いす………」
「イス………か。酷いな。」
「食事はここで食べてるのですか?」
首を横に振ります。
「ではどこで?丁度昼食でしょう、案内してもらえますか?」
今度は縦に振ります。
私は公爵様を厨房に案内しました。食事は置いてありません。料理人の方々も昼食をとっているのか、厨房は静かです。
「肝心の食事が見当たらないのですが……」
「………」
昼時なのに、無いのがおかしいんでしょうか。
「まさか、食事が与えられて無い?いや、そうだとしたらこの子は餓死してしまうはず……」
公爵、ブツブツ何かを呟いていますね。そのときでした、料理長が厨房に入って来ます。
「またお前か!何度来ても朝以外飯は無いぞ!」
「何ですって?」
公爵様は料理長の言葉に顔色を変えます。公爵様に気づいた料理長も同じです。
「こっ、公爵様!? どうしてここに!?」
「今の話は本当ですか!?」
「い、いえっ!今のはほんの冗談で……」
たじろぐ料理長。公爵様はまた更に顔をしかめました。
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