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第9章 パーティー対抗戦編
パーティー対抗戦⑫ 戦況⑦ 仲間を信頼するということ
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「よし。じゃあ行こうか、エアリー」
ルーシッドがおおよその位置を把握し、エアリーに話しかける。
「………」
しかし、エアリーは黙ったまま動こうとしない。
「ん?どうしたのエアリー?」
「…本当にこれで良いんでしょうか?」
「え?どういうこと?」
「キリィは本当に良く頑張っています。ですが、ルーシィがこうもあっさり敵を見つけてしまっては、キリィの頑張りは無駄になってしまうのではないでしょうか?キリィは自分はやっぱり必要ないと考えてしまうんじゃないでしょうか?」
「それは……そっか…そんなこと考えもしなかった…」
「ルーシィは1人で何でもできてしまうから、人に仕事を任せるということが今までありませんでしたよね。今はチームで戦っています。仲間を信頼することも大事だと思います」
「本当だね。エアリーの言う通りだ。エアリーはすごいね」
「私は…1人では何も出来ませんので。人を信頼することの大切さは良くわかっているつもりです」
エアリーはそう言ってにっこり微笑んだ。
「ですが…」
そのあとエアリーはこう言葉を続けた。
「このまま負けるのもしゃくですし、せっかく得た情報を無駄にするのも勿体ないです。こっそり偵察に行って場所のヒントをキリィにそれとなく教えてあげるというのはどうでしょうか?」
「エアリーのそういうところ大好き」
ルーシッドはいたずらっぽく笑った。
「いやぁ、さすがヘティー。これは絶対見つからないよね~」
オリヴィアは隣にいるヘンリエッタを見て言った。
「まぁこのステージだからこその方法だけどね」
ヘンリエッタとオリヴィアは生い茂る木の上にいた。木の上に『草木の魔法』で足場を作り、そこを拠点にしていたのだ。下にも上にも葉っぱでカモフラージュをしているので、ぱっと見ではどこにいるのかよくわからない。戦法としては、ビリー・ジェンクスと同じだが、旗ごと上に移動するというのはなかなか大胆な方法である。それもこれも『草木の魔法』のスペシャリスト、ヘンリエッタならではの方法と言える。
「多分、キリィの俯瞰の魔眼だと、森全体を上から見ると葉が邪魔で見えないから、目線を下まで落としてるんじゃないかしら。だから、ここだったらキリィの目も誤魔化せると思うわ。現に開始からだいたい半分くらい過ぎても誰も攻めてきてないし」
「いや、ほんと。まさか木の上に隠れてるなんて思いもしなかったよね。一本取られたよ」
「!?」
突然の声に驚くヘンリエッタとオリヴィア。振り返るとそこにはルーシッドが立っていた。
「よくここがわかったわね…」
「うちのキリィは優秀なので」
ルーシッドはにっこりと笑った。
「てか、浮かんでる…?」
「入試の決勝戦でもそうだったじゃない。見えないけど、多分透明な板のようなものがあってそこに立ってるのよ」
「さすがヘティー、ご明察」
ルーシッドはパチパチと拍手をした。
「じゃあ、旗はもらってくね。私たちの旗を取ってったから、これでプラマイゼロだね」
「そんな簡単にって、きゃぁ!?」
ヘンリエッタとオリヴィアは悲鳴を上げる。突然、自分たちが座っていた場所が傾いたのだ。
「ちょっと、ルーシィ…?きゃぁあぁ!」
さらに足場は傾き、2人は落ちそうになって手で捕まる。
「まぁ、落ちても怪我はしないくらいの高さだと思うけど気をつけてね。じゃあ旗はもらってくね~」
そう言ってルーシッドは旗をひょいと取って、そのまま空中を歩いて去っていった。
ルーシッドがいなくなったことで、再び木を操作できるようになったヘンリエッタは足場を元に戻す。
「してやられたわね…」
「ルーシィって木も操れるわけ?」
「どうかしら…木そのものを操っているというより、見えない何かで下から引っ張られてるような感じがしたわ」
ヘンリエッタの読みは正しかった。ルーシッドは木そのものを操ることはできない。ルーシッドは特定の物質を無色の魔力によって操ることはできるが、植物は1つの物質という訳ではないので、植物そのものに働きかけるような命令を無色の魔力に与えることは難しい。ヘンリエッタたちが植物を操作できているのは、植物の中に含まれる自らの魔力で作った水に追加詠唱をかけているからだ。
今、ルーシッドは外部的な働きかけによって木を動かしていたにすぎない。無色の魔力を手のように使い、下から引っ張ったのだ。そこまで自由が利く方法ではないが、物をつかんだりするぐらいであればこの方法で問題なかった。
話は少し前にさかのぼる。
ルーシッドは自分の探索魔術で見つけた、ヘンリエッタがいるであろう付近に来ていた。
「この辺のはずなんだけどね?」
「はい。位置的にはここで間違いありません」
「でも地上には見当たらないね…ってことはやっぱり…」
ルーシッドとエアリーが同時に上を見る。
「…どう思う?エアリー」
「巧妙にカモフラージュされていますが、一か所だけ不自然に葉が生い茂っている部分があります」
「そうだね。まぁヘティーさんらしい方法だね」
居場所に確信を抱いたルーシッドはキリエに連絡を取った。
「あー、キリィ、今大丈夫?」
「あ、ルーシィ。うん、大丈夫だよ~。どうしたの?何か見つけた?」
「いや、ちょっとやってみて欲しいことがあって。ヘティーさんは草木の魔法の使い手だから、もしかして木の上にいるんじゃないかな?キリィは今きっと視点を木の葉より下に落としてるでしょ?」
「うん、そうしないと葉っぱが邪魔で見えないから、あ、そっか!だから逆に木の上にいる人は見えないのか!うー、難しい…あ、もしかしてヒルダさんのとこの伏兵も木の上にいたのかも?」
「あー、そうかもね。でさ、ちょっとずつ目線を上にしてみてくれる?そういう細かい調整できる?」
「うん、大丈夫!やってみるね!」
しばらくしてキリエから発見したという報告が入る。
「いたよ!ヘティーさんたち!さすがルーシィ、よく気づいたね~」
「いやいや、キリィのお陰だよ。じゃあ、私が行ってみるね」
そう言って、ルーシッドとエアリーは顔を見合わせて微笑み、ハイタッチをしたのだった。
ルーシッドがおおよその位置を把握し、エアリーに話しかける。
「………」
しかし、エアリーは黙ったまま動こうとしない。
「ん?どうしたのエアリー?」
「…本当にこれで良いんでしょうか?」
「え?どういうこと?」
「キリィは本当に良く頑張っています。ですが、ルーシィがこうもあっさり敵を見つけてしまっては、キリィの頑張りは無駄になってしまうのではないでしょうか?キリィは自分はやっぱり必要ないと考えてしまうんじゃないでしょうか?」
「それは……そっか…そんなこと考えもしなかった…」
「ルーシィは1人で何でもできてしまうから、人に仕事を任せるということが今までありませんでしたよね。今はチームで戦っています。仲間を信頼することも大事だと思います」
「本当だね。エアリーの言う通りだ。エアリーはすごいね」
「私は…1人では何も出来ませんので。人を信頼することの大切さは良くわかっているつもりです」
エアリーはそう言ってにっこり微笑んだ。
「ですが…」
そのあとエアリーはこう言葉を続けた。
「このまま負けるのもしゃくですし、せっかく得た情報を無駄にするのも勿体ないです。こっそり偵察に行って場所のヒントをキリィにそれとなく教えてあげるというのはどうでしょうか?」
「エアリーのそういうところ大好き」
ルーシッドはいたずらっぽく笑った。
「いやぁ、さすがヘティー。これは絶対見つからないよね~」
オリヴィアは隣にいるヘンリエッタを見て言った。
「まぁこのステージだからこその方法だけどね」
ヘンリエッタとオリヴィアは生い茂る木の上にいた。木の上に『草木の魔法』で足場を作り、そこを拠点にしていたのだ。下にも上にも葉っぱでカモフラージュをしているので、ぱっと見ではどこにいるのかよくわからない。戦法としては、ビリー・ジェンクスと同じだが、旗ごと上に移動するというのはなかなか大胆な方法である。それもこれも『草木の魔法』のスペシャリスト、ヘンリエッタならではの方法と言える。
「多分、キリィの俯瞰の魔眼だと、森全体を上から見ると葉が邪魔で見えないから、目線を下まで落としてるんじゃないかしら。だから、ここだったらキリィの目も誤魔化せると思うわ。現に開始からだいたい半分くらい過ぎても誰も攻めてきてないし」
「いや、ほんと。まさか木の上に隠れてるなんて思いもしなかったよね。一本取られたよ」
「!?」
突然の声に驚くヘンリエッタとオリヴィア。振り返るとそこにはルーシッドが立っていた。
「よくここがわかったわね…」
「うちのキリィは優秀なので」
ルーシッドはにっこりと笑った。
「てか、浮かんでる…?」
「入試の決勝戦でもそうだったじゃない。見えないけど、多分透明な板のようなものがあってそこに立ってるのよ」
「さすがヘティー、ご明察」
ルーシッドはパチパチと拍手をした。
「じゃあ、旗はもらってくね。私たちの旗を取ってったから、これでプラマイゼロだね」
「そんな簡単にって、きゃぁ!?」
ヘンリエッタとオリヴィアは悲鳴を上げる。突然、自分たちが座っていた場所が傾いたのだ。
「ちょっと、ルーシィ…?きゃぁあぁ!」
さらに足場は傾き、2人は落ちそうになって手で捕まる。
「まぁ、落ちても怪我はしないくらいの高さだと思うけど気をつけてね。じゃあ旗はもらってくね~」
そう言ってルーシッドは旗をひょいと取って、そのまま空中を歩いて去っていった。
ルーシッドがいなくなったことで、再び木を操作できるようになったヘンリエッタは足場を元に戻す。
「してやられたわね…」
「ルーシィって木も操れるわけ?」
「どうかしら…木そのものを操っているというより、見えない何かで下から引っ張られてるような感じがしたわ」
ヘンリエッタの読みは正しかった。ルーシッドは木そのものを操ることはできない。ルーシッドは特定の物質を無色の魔力によって操ることはできるが、植物は1つの物質という訳ではないので、植物そのものに働きかけるような命令を無色の魔力に与えることは難しい。ヘンリエッタたちが植物を操作できているのは、植物の中に含まれる自らの魔力で作った水に追加詠唱をかけているからだ。
今、ルーシッドは外部的な働きかけによって木を動かしていたにすぎない。無色の魔力を手のように使い、下から引っ張ったのだ。そこまで自由が利く方法ではないが、物をつかんだりするぐらいであればこの方法で問題なかった。
話は少し前にさかのぼる。
ルーシッドは自分の探索魔術で見つけた、ヘンリエッタがいるであろう付近に来ていた。
「この辺のはずなんだけどね?」
「はい。位置的にはここで間違いありません」
「でも地上には見当たらないね…ってことはやっぱり…」
ルーシッドとエアリーが同時に上を見る。
「…どう思う?エアリー」
「巧妙にカモフラージュされていますが、一か所だけ不自然に葉が生い茂っている部分があります」
「そうだね。まぁヘティーさんらしい方法だね」
居場所に確信を抱いたルーシッドはキリエに連絡を取った。
「あー、キリィ、今大丈夫?」
「あ、ルーシィ。うん、大丈夫だよ~。どうしたの?何か見つけた?」
「いや、ちょっとやってみて欲しいことがあって。ヘティーさんは草木の魔法の使い手だから、もしかして木の上にいるんじゃないかな?キリィは今きっと視点を木の葉より下に落としてるでしょ?」
「うん、そうしないと葉っぱが邪魔で見えないから、あ、そっか!だから逆に木の上にいる人は見えないのか!うー、難しい…あ、もしかしてヒルダさんのとこの伏兵も木の上にいたのかも?」
「あー、そうかもね。でさ、ちょっとずつ目線を上にしてみてくれる?そういう細かい調整できる?」
「うん、大丈夫!やってみるね!」
しばらくしてキリエから発見したという報告が入る。
「いたよ!ヘティーさんたち!さすがルーシィ、よく気づいたね~」
「いやいや、キリィのお陰だよ。じゃあ、私が行ってみるね」
そう言って、ルーシッドとエアリーは顔を見合わせて微笑み、ハイタッチをしたのだった。
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