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第9章 パーティー対抗戦編
パーティー対抗戦④ 試合開始
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『じゃあ、体借りるわよ?』
「はい、よろしくお願いします!」
そう言うと、ヒルダはフェリカの体に憑依した。
「うーん…!肉体を身につける感覚も久々ね!」
その時だった。
大森林に音の魔法によって増幅された声と鐘の音が響き渡る。試合開始の合図だ。
「じゃあ、行こう!」
ルーシッド達は四方に散らばっていった。
旗を持ったキリエは歩きながら『俯瞰の魔眼』を発動する。
キリエの目が異彩を放って、視界が2つに分裂する。
1つは肉体の方のキリエの視界。もう1つは肉体から引き離された思念体の視界だ。
この能力は2つの視界を同時に脳で処理しなければいけないので、慣れないと混乱をきたし、かなり大変である。
キリエはこの日のために普段から俯瞰の魔眼を使う練習をしてきた。
普通に空から見下ろしただけでは、このような木が生い茂る森では、木に隠れて人の様子は見えないということも考えられる。
実際、最初にキリエが思念体で上から見た視界もそんな感じだった。一面に緑が広がる森の景色である。
しかし、この前の地下迷宮の時に使った方法を使えば、俯瞰した視界をそのまま一段下に下げて、幹の部分から下を俯瞰して見ることができる。いわば景色全体を輪切りにするCTスキャンのような形である。
さっそく1つのパーティーの様子を確認することができたキリエは皆に報告する。
「シアン達のパーティーの陣地を見つけたよ。守備は予想通りロイだね。後は、ロッテ。他のメンバーは攻撃に出てるみたい。見つけたら報告するね。一番近いのはルビィだけど、どうする?」
「じゃあ、とりあえず私が行ってみるわ。方向は?」
「前方やや左に行ったところ」
「了解」
ルビアは走る速度を上げた。
その後、ランダルとジョンのパーティーの陣地を見つけたキリエ。
ランダルのパーティーはアヤメ・クロッカスとラコッテ・テラコッタが守備をしていた。今までの様子を見た感じだと、2人はあまり攻撃向きではないし、リーダーのランダルとレガリーは火の魔法を得意とし、攻撃向きの選手だ。それで、やや守備を犠牲にしてでも攻撃を重視した配置と言えるだろう。
こちらはとりあえずフェリカが様子を見に行くことになった。
ジョンのパーティーはジョンとコニアが守備だった。ジョンのパーティーは人員がバランス良く揃っているが、どちらかと言えば、今陣地にいないリリアナとクリスティーンは行動的で攻撃向きの選手だ。ジョンはどちらかと言えば技術職よりで、コニアは氷の魔法が使えるため守備にも向いている。ジョンのパーティーは予想通りではあるが、無難にまとめてきた選手構成と言える。
こちらにはルーシッドが行くこととなった。
この3つのパーティー、シアンとランダルとジョンのパーティーは陣地の位置も、攻撃陣の現在位置もだいたい把握することができた。攻撃陣は当然キリエのように索敵技術を持っているわけではないので、とりあえず森の中を歩いている感じで、まだ目立った動きはないので問題ないだろう。
しかし、唯一ヘンリエッタのパーティーに関しては、陣地の位置も攻撃陣の動向も把握できないでいた。
ヘンリエッタは、最初のチーム演習も早々にクリアしたし、おっとりしてそうに見えるが、使う魔法も特殊だしなかなかに曲者だ。今回も何をやってくるのか予想がつなない。
ヘンリエッタのチームの動向は気になりはしたが、とりあえず他の3チームから攻めてみることにしたキリエ達であった。
「今のところ順調って感じかな?」
ルーシッドは森の中をジョンのパーティーの陣地へと向かいながらエアリーに話しかけた。
「そうですね。ですが、ここからです。攻撃陣が本格的に動き出してからが本番です」
エアリーは冷静に分析してそう言った。
「確かにそうだね。どこまでキリエが状況を追えるかだね。場合によっては各人が予期せぬ対峙に対応しないといけない場合も出てくるよね」
「まぁこちらには『索敵』もありますから」
「そうだね。お、あれかな?」
ジョンのパーティーの陣地を発見したルーシッドとエアリーは木の陰に隠れて様子を伺う。
「なるほど。後ろに壁を作って、攻められる方向を1つに絞って守りやすくする作戦か」
ジョンとコニアは旗を真ん中に置いて横に並び、その後ろには、ジョンが鉄で作った身長の2倍ほどある大きな壁があった。
「陣地の位置も把握されやすくなるので、諸刃の剣の作戦ですね。さて、どうしますか、ルーシィ?」
「じゃあまぁ、後ろから攻めようか」
「はい、よろしくお願いします!」
そう言うと、ヒルダはフェリカの体に憑依した。
「うーん…!肉体を身につける感覚も久々ね!」
その時だった。
大森林に音の魔法によって増幅された声と鐘の音が響き渡る。試合開始の合図だ。
「じゃあ、行こう!」
ルーシッド達は四方に散らばっていった。
旗を持ったキリエは歩きながら『俯瞰の魔眼』を発動する。
キリエの目が異彩を放って、視界が2つに分裂する。
1つは肉体の方のキリエの視界。もう1つは肉体から引き離された思念体の視界だ。
この能力は2つの視界を同時に脳で処理しなければいけないので、慣れないと混乱をきたし、かなり大変である。
キリエはこの日のために普段から俯瞰の魔眼を使う練習をしてきた。
普通に空から見下ろしただけでは、このような木が生い茂る森では、木に隠れて人の様子は見えないということも考えられる。
実際、最初にキリエが思念体で上から見た視界もそんな感じだった。一面に緑が広がる森の景色である。
しかし、この前の地下迷宮の時に使った方法を使えば、俯瞰した視界をそのまま一段下に下げて、幹の部分から下を俯瞰して見ることができる。いわば景色全体を輪切りにするCTスキャンのような形である。
さっそく1つのパーティーの様子を確認することができたキリエは皆に報告する。
「シアン達のパーティーの陣地を見つけたよ。守備は予想通りロイだね。後は、ロッテ。他のメンバーは攻撃に出てるみたい。見つけたら報告するね。一番近いのはルビィだけど、どうする?」
「じゃあ、とりあえず私が行ってみるわ。方向は?」
「前方やや左に行ったところ」
「了解」
ルビアは走る速度を上げた。
その後、ランダルとジョンのパーティーの陣地を見つけたキリエ。
ランダルのパーティーはアヤメ・クロッカスとラコッテ・テラコッタが守備をしていた。今までの様子を見た感じだと、2人はあまり攻撃向きではないし、リーダーのランダルとレガリーは火の魔法を得意とし、攻撃向きの選手だ。それで、やや守備を犠牲にしてでも攻撃を重視した配置と言えるだろう。
こちらはとりあえずフェリカが様子を見に行くことになった。
ジョンのパーティーはジョンとコニアが守備だった。ジョンのパーティーは人員がバランス良く揃っているが、どちらかと言えば、今陣地にいないリリアナとクリスティーンは行動的で攻撃向きの選手だ。ジョンはどちらかと言えば技術職よりで、コニアは氷の魔法が使えるため守備にも向いている。ジョンのパーティーは予想通りではあるが、無難にまとめてきた選手構成と言える。
こちらにはルーシッドが行くこととなった。
この3つのパーティー、シアンとランダルとジョンのパーティーは陣地の位置も、攻撃陣の現在位置もだいたい把握することができた。攻撃陣は当然キリエのように索敵技術を持っているわけではないので、とりあえず森の中を歩いている感じで、まだ目立った動きはないので問題ないだろう。
しかし、唯一ヘンリエッタのパーティーに関しては、陣地の位置も攻撃陣の動向も把握できないでいた。
ヘンリエッタは、最初のチーム演習も早々にクリアしたし、おっとりしてそうに見えるが、使う魔法も特殊だしなかなかに曲者だ。今回も何をやってくるのか予想がつなない。
ヘンリエッタのチームの動向は気になりはしたが、とりあえず他の3チームから攻めてみることにしたキリエ達であった。
「今のところ順調って感じかな?」
ルーシッドは森の中をジョンのパーティーの陣地へと向かいながらエアリーに話しかけた。
「そうですね。ですが、ここからです。攻撃陣が本格的に動き出してからが本番です」
エアリーは冷静に分析してそう言った。
「確かにそうだね。どこまでキリエが状況を追えるかだね。場合によっては各人が予期せぬ対峙に対応しないといけない場合も出てくるよね」
「まぁこちらには『索敵』もありますから」
「そうだね。お、あれかな?」
ジョンのパーティーの陣地を発見したルーシッドとエアリーは木の陰に隠れて様子を伺う。
「なるほど。後ろに壁を作って、攻められる方向を1つに絞って守りやすくする作戦か」
ジョンとコニアは旗を真ん中に置いて横に並び、その後ろには、ジョンが鉄で作った身長の2倍ほどある大きな壁があった。
「陣地の位置も把握されやすくなるので、諸刃の剣の作戦ですね。さて、どうしますか、ルーシィ?」
「じゃあまぁ、後ろから攻めようか」
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