魔法学院の階級外魔術師

浅葱 繚

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第8章 地下迷宮探索編

地下迷宮探索④ 第2階層

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「ここが…第2階層…」

ルーシッド達は階段を降り、第2階層へと到着した。時間は10の鐘がなったところなので、午後3時くらいである。あと3時間もすると13の鐘(日の入りの鐘)が鳴る。別に地下迷宮なので元々暗いし明かりもつけているし、日の入りの鐘が鳴った後も活動しても特に問題はないのだが、日の入りの鐘以降は地下迷宮でも鐘が鳴らなくなるので時間がわからなくなる。かなり長期間に渡って時間がわからなくなるような状況の場合、数分おきに時間を知らせる道具(一般的には砂時計が用いられる)を用いて時間を測る担当のタイムキーパーを設けることがあるが、今回は一晩だけということもあり、タイムキーパーは準備していなかった。
時間経過がわからない中で不必要に動き回るのは、体力の消耗度合いを見誤ってしまうこともあるので危険である。よって、日の入りの鐘が鳴ったら、区切りの良いところでキャンプを張って休み、体力回復に努める方が良い。

ルーシッド達のクラスは今日中に、すなわちあと3時間で第2階層を踏破することを目標にしていた。

「第1階層とはまた違った雰囲気だね~」
「そうね。かなり広々としているわね」
ライムとシアンがそう話した。

第1階層から下ってきた感覚でもかなり下ってきたという気がしたが、第2階層の天井は高く、第1階層とは違い、地下迷宮であるにも関わらずかなり開放的な印象を与えた。

「でも、ここからだと先まではよく見えないね…どのくらい広がってるんだろう?」
「私が全体を照らしてみる?」
ライムに対して、ルビアがそう言う。
「え、そんなことできるの?」
「まだ3時間しか使ってないから大丈夫よ。寝ている間は使わないし。だいぶ余裕があるから」
「さ、さすがSランク…」

BランクやCランクの魔法使いで照明を担当している者は、すでに一度は照明担当を交代している。
Bランクの魔法使い達の中でも、ペルカ・パーチメントは魔力消費量が少ない魔法のため、あと数時間は使用できる状態である。

Cランクの魔法使い達の最大魔力量マキシマムマナは平均して5000マナくらいである。ここから、妖精に与えるお菓子の食材分と、魔法の燃料分を支払うことになる。これは、最初に述べたように、低位の火の魔法や光の魔法であれば、その明かりの大きさにもよるが、自分の周囲を照らせるくらいの明かりで2時間分くらいの魔力量に相当する。

そして、Cランクの魔法使いの魔力再生成可能時間リジェネレイトタイムは平均2分間くらいであり、このクラスのメンバーもだいたいそのくらいであった。なので一度、最大魔力量マキシマムマナまで使い切ったり、魔法の発動を終了したりすると、2分間は魔法が使えない。
それで、このような場合は二人交代制の形を取って行うのが基本である。1人しか行えない場合は、魔法石や魔法具でカバーすることになる。

この魔力再生成可能時間リジェネレイトタイム最大魔力量マキシマムマナまで使い切らなくても、1つの魔法の発動を終了してしまうと生じてしまう。

もちろん、ランクは『純度ピュリティ』『基本属性数コンポーネント』『魔力生成速度ジェネレイトスピード』『最大魔力量マキシマムマナ』『魔力再生成可能時間リジェネレイトタイム』の5つの要素の総合値で判定されるため、必ずしもランクが低ければ魔力再生成可能時間リジェネレイトタイムが長いというわけではないが、基本的にはランクが高ければ短くなる傾向にある。
魔力は詠唱の一節目の段階で必要であり、この段階で魔力再生成可能時間リジェネレイトタイムに達していなければ、魔法は発動しない。ゆえに、次の魔法は必ずこの魔力再生成可能時間リジェネレイトタイムが経過してから行う必要がある。
魔法使い達にとって、自分の魔力再生成可能時間リジェネレイトタイムを体感で正確に把握できるかどうかが必須のスキルと言える。魔力は生成しようと思うと存在が分かるが、普段自分の魔力の存在を知覚することは不可能である。魔力はゲームなどに存在するMPのように、体内に最大魔力量分が存在しているわけではないからである。

この魔力再生成可能時間リジェネレイトタイムは、Aランクの魔法使い達の中では平均すると1分を切っている。やはり、この辺りが才能の違いといったところなのかも知れない。
ちなみにルビアを初めとしたSランクの魔法使いの魔力再生成可能時間リジェネレイトタイムは平均5秒程度である。ルビアは3秒、サラは6秒である。これが世界に20人いないと言われているSランクの実力である。


ルビアが肩の辺りに浮かせていた照明用の火に追加詠唱アディショナルキャストを行うと、火はいくつもに分裂した。そして、ルビアが念じると、地下迷宮の奥深くへと順々に飛んでいき、明かりが広がっていく。
すると、第2階層の全貌が見えてきた。

「すご~い!広いねー!」

そこは1つの階層と呼ぶにはあまりにも広い空間だった。1つの階層の中にも階段や中二階のような段差や坂道などが多くあるようだ。そして、どこまで続いているかわからない吹き抜けの穴が各所に空いていた。

「この穴を下れば下まで行けるんですかね?」
ジョンが先生に尋ねる。

「行けることは行けますよ。ただし、この穴がどこまで繋がってるかはわかりません。第3階層とは限りません。何十メートル先の可能性もあります。
どの穴が第何階層に通じているのか把握していて、下まで降りる手段を有している迷宮探索ギルドエクスプローラーズのメンバー達はショートカットとして利用しているようですが、今回はやめておいた方がいいと思います」

「そ、そうですね…やめておきます…」
「この階層のどこかに、第3階層に下る階段があります。まずはそれを探しましょう」
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