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File:1 【Group the detectives《探偵団》】
Page:9 【《探偵団》】
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ーー翌日。
「行ってきまーす」
普段以上に重く感じる扉を開け、冬にしてはかなり晴れたこの日の太陽を全身に浴びる。玄関の扉が重く感じるのは、きっと心境の問題だろう。
......いよいよ今日だ。何が何でも失敗は出来ない。俺が考え、神代、日比谷、進藤、影山の4人の協力があってこそ成り立つ策を全力で奴にぶつける。大丈夫だ。作戦に穴は無いし、俺の推理も間違ってはいないはず。
「あんた最近活き活きとしてるわね。何かあったの?」
と、いつも通りに駅に向かおうとした俺を、普段は何も言わずに見送るだけの養母『清宮葵』が引き止めてくる。
「何も。ただ友達が出来ただけ」
葵「ああ、そうなのね」
なぜか意味ありげな微笑みを送ってきたが、俺は特に気にするでもなく、止めていた足を動かし始めた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
何事もなく学校に到着した俺は、玄関先で靴を履き替えていると思わぬ人物に声をかけられた。
影山「期待してますよ、転校生」
と、靴箱の中で靴を整えている時に影山が普段のうるさい口調はどこへやら、静かな声で話しかけてきた。
影山は違うクラスだから、普通、こんなところで出くわさないはずだが......いや、その前に、なぜ俺達がやろうとしていること、しかも、それが今日であるということを知ってるかのように話しかけてきたのか。
あいつ、新聞部なんてやらず、そのまま探偵にでもなんにでもなればいいのにな。その方が余っ程才能を生かせる気がする。俺の知ったことではないが。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ーー昼休みだ。
4限目の授業が終わると同時に、俺は、購買に向かいたい足を無理矢理放送室の方へと向け歩き出す。
無駄に焦ってはいけない。平常心だ。何が起きても動ずるな。
伊吹「......」
「......」
放送室へと向かう途中の曲がり角で、伊吹とバッタリ出くわした。だが、お互いに何も言わず、俺はただ一礼をしただけでこの場を去った。
......俺を見た伊吹の顔、やけに憐れみを込めた深刻そうな顔をしていた。来週にでも排除する予定の奴に対して、なぜああにも憐れむような顔をするのだろうか。
やはり、俺の考えは間違ってはいないのだろうか?でも、だとすると、神代達はどうなるんだ?伊吹に向けた怒り恨みの眼差し、その怒りも恨みも間違っていた。なんてこと、あいつらは認められるのだろうか?
分からない。分かるわけがない。ただ今は、作戦を実行する。それ以外にない。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
そうして、俺はガタのついた放送室の戸を開け、中へと足を踏み込む。すると、すぐに神代が出迎えてくれた。
神代「なぁなぁ、これなんて読むんだよ~?」
と、昨日渡した台本のページを開いて、そう聞いてきたのである。
俺は、「げれつ」とだけ答えて、さっさと進藤のところに向かった。
進藤「少年、準備は出来ている。あと、頼まれていたやつの続きだ」
「ありがとう」
進藤が俺のARCWDに画像ファイルを送ってくる。すぐさま中身を確認し、俺は確信を得た。
やはり、この事件は単純ではなかった。ただそれだけの話だ。
神代「よっしゃー!全員揃ったし始めるかー!」
日比谷「あんたちゃんと読めるの?それ」
神代「任せとけって。分かんねぇ漢字はその場のノリと、あと海翔の耳打ちでどうにかすっから!」
「それはどうにもならない奴が言うセリフだ」
神代「つれねぇこと言うなよ~。詰まったら耳打ち頼む!な?」
神代が懇願するようにそう言ってくるので、渋々俺は神代の隣の席に座った。
放送室の機材を見ると、あまり使われていないのか、機材は旧式だし、ランプが消えかけているものもあるし、CDプレイヤーは調子が悪そう、といった具合に、本当にここは私立か?と疑うレベルで備品の整理がされていない。この程度なら、俺が前までいた公立校の方がまだマシだ。
神代「なあ、これいきなり本題から入ってるけどさ、名乗りとかあった方がいいんじゃね?」
今更ながらに神代が台本に対して口出しをしてきた。
「知らん。好きに名乗っておけ」
神代「ええ......マジで好きに名乗るぞ?」
日比谷「あんたの声だったら、どう名乗ろうがすぐにバレるでしょ。お願いだから私の名前とかを公開するのやめてよ!」
神代「へいへい、分かったよ」
時計の針を見る。もうそろそろ秒針が1時を刻む。タイミングはそこでいいだろう。
「............1時ジャスト。始めるぞ」
日比谷「OK!」
日比谷が機材のスイッチを入れ、音量の調整、そしてどこのクラスに流すのかを細かく設定する。そして、神代の方と進藤の方に目配せをし、2人とも分かったように頷く。
......俺達の逆転劇の幕開けだ。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
それは、突然の事だった。
『ブツ......えぇ、皆さんこんにちは!俺達は探偵団を名乗る者達です!』
普段、生徒の呼び出し以外で使われない放送の音が、今日ばかりは別の音を鳴らしている。しかも、俺達に語りかけてくるような声が。
今のは......神代の声?
俺は、真っ先にあの金髪ヤンキーの声を思い浮かべる。でも、つい数日前に怒号を浴びせられた時と違い、この声はやけに落ち着いており、そして自信に満ち溢れている。
『我々が何者なのか、それが気になる方は実に多いでしょう!し・か・し!今はそんなことどうでもいい!伊吹!下劣なるてめぇに挑戦状を叩きつける!』
あ、俺のイメージ通りのあいつだ。
『弓道部内で起きている教師の体罰!気に障った生徒達を徹底的に陰湿な方法で嫌がらせる悪質な行為!そして、清水の自殺未遂!全部全部てめぇが関与している事だ!言い逃れはさせねぇぞ!』
音量は大分下げられているのだろうけど、それでも耳鳴りを起こさせるほどに大きな怒りの声が響く。そして、その直後、俺の視界に謎の動画が再生され始めた。多分、ARCWDを介して流されているのだろう。
動画をスライドさせて画面アウトさせようにも、この動画は、不思議なことに俺の視界に張り付いて離れないでいる。それは、皆も同じようで、空に指を動かしては何も起きないことに疑問符を浮かべている。
そうこうしているうちに、動画に進展があり、そこに見覚えのある影と影が会話をしているのが見えた。間違いない。あの顔は、毎日鏡で見て、そしてもう片方は悪夢に出てくるくらいに憎んだ顔。
......いつの日なのかは知らないが、動画では俺と伊吹先生が会話をしている。そして、先生が電話を取り出し、数秒とした後に俺を殴った。上手いこと撮れたものだ。これだけ完璧な証拠を撮れていれば、ほとんど問題はない。探偵団と名乗るだけはあるな。
だが、そう考えていたのも束の間。俺が退出した後、また数秒の倍速が入って、今度は清水が部屋に入って来た。そして、それと同時に清水は顔を思いっきり殴られた。
「っ......!」
俺は思わず飛び退く。しかし、そんなことをしたところで目の前に映るものは消えてくれない。
......思い出した。あの日、一際大きな痣を付けられた日のことだ。俺は伊吹先生、いや、伊吹に命令されて清水を呼びに行った。そして、伝えるだけ伝えて、俺は逃げるように家に帰ったんだ。
本当なら、俺も一緒に戻らなければならなかった。なのに、俺は怖くなって逃げ出してしまった。もし、俺が逃げていなければ、彼女の身代わりになれていたかもしれないと言うのに......。弱虫で、バカで、そのくせ目上以外に対しての態度だけは頑固な俺だ。そんなにも惨めだというのに、俺はなんで逃げてたんだ。
......証拠という動画が進んでいく度、俺は後悔に駆られた。頭を両手で押さえて、必死になるかのように机の下で顎を震わせていた。何も見たくない。何も知りたくない。俺なんか、死んでしまえばいいのに......
『見たか全校生徒の諸君!そして伊吹!』
そんな、ちっぽけな俺に反するかのようにあいつの声はデカく、闘志に燃えている。あいつは、俺以上に酷い目に遭っている。右腕を潰され、二度と弓道が出来ないような体にされたあいつが、必死に戦っている。
無様だ。神代に対してではない。俺に対して言うべき言葉だ。......俺が、俺がもっと早くに声を上げていれば、いいや違う。声すら上げなかった俺に、そうやって後悔する資格なんてない。ただ、今は成り行きを見守るしかない......。
『今見せたのは証拠のうちのほんの一部にしか過ぎねぇ!てめぇがこれで否定をするってんなら、こっちもそれ相応の対応をとる!さあ、どうすんだ伊吹!』
神代の好戦的な大声。俺は、ただ、小さくなって震えているだけ。
俺も、あいつみたいに強くあれたら......
......
......
......
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「てめぇが否定するってんなら、こっちもそれ相応の対応をとる!さあ、どうすんだ伊吹!」
......俺が用意した台本を忠実になぞりつつも、神代は自分の言葉で怒りを顕にしている。そのせいかは知らんが、神代は覚醒したかのように言葉をスラスラと吐き、俺に耳打ちをよろしくとか言っていた割には一切助け舟を求めない。
それだけ、神代の思うところが強いのだろう。
進藤「少年、放送室に近づいてくる影が1つあるぞ」
進藤が俺のARCWDに、この別館の立体地図を映し出す。赤い点が、階段をゆっくりゆっくりと上って行ってるのが見える。多分、奴だろうな。俺は地図を視界の隅に小さく置き、神代の方へと向く。
さて、そろそろ神代ばかりでなく、俺達も動き出そう。
「神代、俺が合図するまで放送は止めるなよ」
神代は言葉で返さず、ただ首を縦に振って頷くだけ。そして、すぐさま台本に書かれてある通りのことをマイクに向けてぶつける。
「日比谷、少し下がってろ」
日比谷「う、うん。そろそろ、先生が来るんだよね?」
「ああ......」
視界の隅に置いた立体地図を、もう一度拡大させる。赤い点が、もうすぐそこまで迫って来ている。あと数秒としないうちに、この放送室の扉を開けてくることだろう。
神代の叫び声にも近いような大声を聞きつつ、俺は段々と近づいてくる赤い点、そしてこの距離からでも響いてくる足音に耳を傾けていた。日比谷と進藤を後ろの方へと置き、静かに放送室の内鍵を開ける。
コツコツ......コツコツ......
鳴り響く足音がすぐそこまで来た。扉の網目状のガラス窓から男らしき姿が確認出来る。そして、一泊開けて奴はゆっくりと扉を開いた。
日比谷「え......」
姿をハッキリと確認することができた時、日比谷が小さく疑問符を浮かべた。
「やはり来ましたか。......矢島教頭先生」
矢島「なぜ、知っていたかのような言葉を放つのかね?」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
矢島誠(57)。数学教師であり、この学園の教頭。
授業中は厳しく、しかしそれ以外では人格が変わったかのように優しい教師。1つの言葉で言い表すならば、厳しくも優しい慕われるべき先生。そう言い例えるのが良いだろう。
しかし、それはあくまで表の顔。裏の顔は自分より若く、権限のない先生を操り、自分が気に入らない生徒を徹底的に陰湿な方法で痛めつけるクソ教師。それが、俺と進藤が突き止めた真実。
矢島「私は君達の話を聞きに来ただけだ。まずは放送を切ってくれ。全校生徒に聞かれてはならない話もあるんだろう?」
「俺達がやろうとしていることが全て分かってるかのような口振りですね」
と、俺は言いつつも、日比谷と神代に目配せをして放送を止めさせる。2人とも、驚いたかのような顔をして矢島の方を見るが、それでも手だけは止めずに俺の指示を聞き入れる。
そして、すぐに俺は進藤の方にも目配せをして、例の計画を実行させる。
矢島「君達が言っていた、伊吹君の暴行。そして、私のこれにも映し出された例の映像。あれは本当なのか?」
矢島は、あくまで知らないという態度を突き通すかのようにわざとらしい疑問符を並べてそう聞いてくる。
「先生、そんなボケた老人のような押し問答はやめましょう。知っているんでしょう?伊吹先生の隠れた暴行事件」
矢島「何の話か分からんな。私は、今日、この時間に君達の話を聞いて事実を知っただけだ」
「あくまでシラを切るつもりですか。なら、良いですよ」
進藤が矢島のARCWDに1つの動画を送り付ける。
「安心してください。あなただけに送っています」
矢島「......」
疑いの目を向けてくるが、その疑いは間違いではない。
なぜならば、今この瞬間のやり取り、そして進藤が送る動画ファイルは、さっきまでと同じように全校生徒に通じている。流石にこの会話は聞き取られてはいないと思っているんだろうな。奴は何かを言うでもなく、ただ送られてきた動画を見るだけである。
矢島「......なるほど。まさか、ここまで撮られているとはな」
奴の声に重みがかかった。流石に逃げられないと思ったのだろう。
矢島に送った動画ファイルは、清水が暴行に遭った直後の動画。神代や日比谷には見せていない。俺が確信を得るまでは黙っていようと思って隠していた。その内容は、清水が立ち去った後の進路指導室で、伊吹と矢島が会話をしている映像だ。
音はよく録れていない。しかし、それも進藤の技術にかかれば御茶の子さいさいのようで、聞こえなかった音全てがクリアに聞こえるようになっていた。
「ずっと疑問に思っていたんです。なぜ、何も恨みを買った覚えの無いはずの俺が伊吹に目を付けられたのか。その理由、あなたがこの事件に関わっていると結論づけた時、やっとその理由が分かりましたよ」
矢島「......」
「随分と小さな器の人間だと思いますよ。あなたは。なぜなら、あなたは俺が授業中にただ1つの受け答えをしただけで目を付けた。きっと、あなたは生徒達を授業で苦しめることを快感に覚えていたのでしょう。しかし、俺が、あなたが与えた苦しみをあっさりと回避してしまった。それを根に持ったあなたが、俺をターゲットに指定した。どうですか?細かな理由は違えど、大体そんなものでしょう?」
矢島「......」
矢島は黙り続けるだけ。しかし、その顔には僅かな震えが込み上げてきている。
図星だ。奴は必死に反論の言葉を探している。だが、そんな余裕を俺は与えない。
「弓道部に関しては、多分、あなたが担当している部活が問題でしょうね」
矢島「......ほう、私が担当している部活?」
「ええ。あなたが担当している剣道部ですよ。随分と弱い部活らしいですね。しかも、練習に使うはずの道場が弓道部の部室代わりになっている。更には、過去に剣道をやっていた人達が次々に弓道部へと移り変わる。相変わらず心が小さいとは思いますが、理由はハッキリとしていますね」
矢島「なるほど。しかし、それならば、なぜ伊吹君が自ら担当する部活を潰すようなことをするのかね?」
「当然の疑問ですね。でも、そこに関してもちゃんとした理由はありますよ」
矢島「......」
進藤に合図をし、最後の動画をARCWDに送る。
動画の内容、それは、進路指導室で伊吹が矢島に殴られている映像だ。しかも、音をクリアにしているため、直前の会話も聞き取れる。
『なぜ君は私の言った通りに出来ないのかね!』
矢島の怒声。響く暴力の音。
『っ......』
あれだけ強がっていた伊吹も、矢島を前にしては蛇に睨まれた蛙のように動けないでいる。
まさか、もう一度設置し直した後にこんな映像が撮れるとは思わなかったな。進藤の提言通りにして正解だった。
『清水はお前のせいで死んだに等しい!どうだ?自分の教え子が、自分の手によって苦しんで行く様を見るのは!そして、お前はダメだと分かっていてもやめることができない!お前は一生、体罰教師だということがバレる日が来ることを怯えて生きていろ!』
......正に決定的。こんなのを見たあとでは、伊吹を憎む気持ちなんて無くなってしまう。だが、それでも伊吹がやっていた事は悪いことであり、許されることではない。そして、それは矢島も同じだ。
自らの手は汚さず、自分に逆らうことの出来ない教師を利用して気に食わない生徒を痛めつける。伊吹以上にクズな奴だ。いや、伊吹は命令されて仕方なしにやっていただけまだいい方だ。だが、矢島は自分の意思で全てをやっていた。どれだけ憎まれ、どれだけの罰を受けても足りない。足らなさすぎる。だから、俺達がこいつに罰を与える。
矢島「......」
「まだ言い訳でもしますか?もう見苦しいのでやめた方が賢明ですよ」
矢島「......」
「罪を認めてください。あなたは前歴持ちの伊吹先生を利用し、たくさんの生徒を間接的に傷つけてきた。その中には、生きることを苦痛に感じ、自殺に走ってしまった生徒もいる。この事実を重く受け止めて、自首してください」
矢島「......あぁぁぁぁぁ!!!」
何を思ったか、矢島は右腕を振り上げ、動画で伊吹先生を殴っていた時と同じポージングで俺に拳を振るってきた。
あんなのを喰らえば、ヒョロガリの俺では簡単に鼻の骨が折れてしまうだろう。当たりどころが悪ければ、顔のどこかの骨も一緒に砕けるかもしれない。
それはこの一瞬でよく分かった。しかし、俺は避けるでもなく、ましてや守ったり、反撃したりすることもなかった。
矢島「なっ......!」
俺の鼻先に矢島の拳が来たところで、その拳は勢いを失った。
伊吹「もう、こんな事やめましょう」
伊吹先生が、若干痣の痕が残る右腕で、矢島の腕を掴んでいた。
神代「伊吹っ......!」
いつの間にか、神代が放送のマイクから離れてこちらに来ていた。日比谷も、信じられないといった顔でこちらを見ている。
伊吹「神代......いや、神代優真君。......すまなかった!」
伊吹が矢島の頭を押さえつけて、自分の頭と同時に地面へと叩きつけて土下座の姿勢をする。
伊吹「いくら他人の命令とは言え、私がやった事は到底許されるべきことではない!いや、他人の命令なんぞ関係ない!私が君の腕を使いものにならないようにし、日比谷さんにはセクハラにも似たような言葉を発し、そして清水さんを自殺に追い込んでしまった!許されるようなことではないし、許してほしいとも願わない!私は、私は、どれだけの苦しみを与えられてから死んでもおかしくない奴だ!」
日比谷「......」
神代「......」
伊吹のあまりの態度の変わりように、2人とも言葉を失って呆然としている。
「......先生。顔を上げてください」
伊吹「っ......君にも、申し訳ないことをしたっ......!」
「気にしてませんよ。どうせ、噂は噂ですから」
伊吹「......」
「ですが、気にしないのは俺だけです。後ろの2人、それに清水さんや青山はあなたを許すと思いますか?」
伊吹「......すまなかった」
伊吹は、さっきまで以上に深々と土下座をした。
「行ってきまーす」
普段以上に重く感じる扉を開け、冬にしてはかなり晴れたこの日の太陽を全身に浴びる。玄関の扉が重く感じるのは、きっと心境の問題だろう。
......いよいよ今日だ。何が何でも失敗は出来ない。俺が考え、神代、日比谷、進藤、影山の4人の協力があってこそ成り立つ策を全力で奴にぶつける。大丈夫だ。作戦に穴は無いし、俺の推理も間違ってはいないはず。
「あんた最近活き活きとしてるわね。何かあったの?」
と、いつも通りに駅に向かおうとした俺を、普段は何も言わずに見送るだけの養母『清宮葵』が引き止めてくる。
「何も。ただ友達が出来ただけ」
葵「ああ、そうなのね」
なぜか意味ありげな微笑みを送ってきたが、俺は特に気にするでもなく、止めていた足を動かし始めた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
何事もなく学校に到着した俺は、玄関先で靴を履き替えていると思わぬ人物に声をかけられた。
影山「期待してますよ、転校生」
と、靴箱の中で靴を整えている時に影山が普段のうるさい口調はどこへやら、静かな声で話しかけてきた。
影山は違うクラスだから、普通、こんなところで出くわさないはずだが......いや、その前に、なぜ俺達がやろうとしていること、しかも、それが今日であるということを知ってるかのように話しかけてきたのか。
あいつ、新聞部なんてやらず、そのまま探偵にでもなんにでもなればいいのにな。その方が余っ程才能を生かせる気がする。俺の知ったことではないが。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ーー昼休みだ。
4限目の授業が終わると同時に、俺は、購買に向かいたい足を無理矢理放送室の方へと向け歩き出す。
無駄に焦ってはいけない。平常心だ。何が起きても動ずるな。
伊吹「......」
「......」
放送室へと向かう途中の曲がり角で、伊吹とバッタリ出くわした。だが、お互いに何も言わず、俺はただ一礼をしただけでこの場を去った。
......俺を見た伊吹の顔、やけに憐れみを込めた深刻そうな顔をしていた。来週にでも排除する予定の奴に対して、なぜああにも憐れむような顔をするのだろうか。
やはり、俺の考えは間違ってはいないのだろうか?でも、だとすると、神代達はどうなるんだ?伊吹に向けた怒り恨みの眼差し、その怒りも恨みも間違っていた。なんてこと、あいつらは認められるのだろうか?
分からない。分かるわけがない。ただ今は、作戦を実行する。それ以外にない。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
そうして、俺はガタのついた放送室の戸を開け、中へと足を踏み込む。すると、すぐに神代が出迎えてくれた。
神代「なぁなぁ、これなんて読むんだよ~?」
と、昨日渡した台本のページを開いて、そう聞いてきたのである。
俺は、「げれつ」とだけ答えて、さっさと進藤のところに向かった。
進藤「少年、準備は出来ている。あと、頼まれていたやつの続きだ」
「ありがとう」
進藤が俺のARCWDに画像ファイルを送ってくる。すぐさま中身を確認し、俺は確信を得た。
やはり、この事件は単純ではなかった。ただそれだけの話だ。
神代「よっしゃー!全員揃ったし始めるかー!」
日比谷「あんたちゃんと読めるの?それ」
神代「任せとけって。分かんねぇ漢字はその場のノリと、あと海翔の耳打ちでどうにかすっから!」
「それはどうにもならない奴が言うセリフだ」
神代「つれねぇこと言うなよ~。詰まったら耳打ち頼む!な?」
神代が懇願するようにそう言ってくるので、渋々俺は神代の隣の席に座った。
放送室の機材を見ると、あまり使われていないのか、機材は旧式だし、ランプが消えかけているものもあるし、CDプレイヤーは調子が悪そう、といった具合に、本当にここは私立か?と疑うレベルで備品の整理がされていない。この程度なら、俺が前までいた公立校の方がまだマシだ。
神代「なあ、これいきなり本題から入ってるけどさ、名乗りとかあった方がいいんじゃね?」
今更ながらに神代が台本に対して口出しをしてきた。
「知らん。好きに名乗っておけ」
神代「ええ......マジで好きに名乗るぞ?」
日比谷「あんたの声だったら、どう名乗ろうがすぐにバレるでしょ。お願いだから私の名前とかを公開するのやめてよ!」
神代「へいへい、分かったよ」
時計の針を見る。もうそろそろ秒針が1時を刻む。タイミングはそこでいいだろう。
「............1時ジャスト。始めるぞ」
日比谷「OK!」
日比谷が機材のスイッチを入れ、音量の調整、そしてどこのクラスに流すのかを細かく設定する。そして、神代の方と進藤の方に目配せをし、2人とも分かったように頷く。
......俺達の逆転劇の幕開けだ。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
それは、突然の事だった。
『ブツ......えぇ、皆さんこんにちは!俺達は探偵団を名乗る者達です!』
普段、生徒の呼び出し以外で使われない放送の音が、今日ばかりは別の音を鳴らしている。しかも、俺達に語りかけてくるような声が。
今のは......神代の声?
俺は、真っ先にあの金髪ヤンキーの声を思い浮かべる。でも、つい数日前に怒号を浴びせられた時と違い、この声はやけに落ち着いており、そして自信に満ち溢れている。
『我々が何者なのか、それが気になる方は実に多いでしょう!し・か・し!今はそんなことどうでもいい!伊吹!下劣なるてめぇに挑戦状を叩きつける!』
あ、俺のイメージ通りのあいつだ。
『弓道部内で起きている教師の体罰!気に障った生徒達を徹底的に陰湿な方法で嫌がらせる悪質な行為!そして、清水の自殺未遂!全部全部てめぇが関与している事だ!言い逃れはさせねぇぞ!』
音量は大分下げられているのだろうけど、それでも耳鳴りを起こさせるほどに大きな怒りの声が響く。そして、その直後、俺の視界に謎の動画が再生され始めた。多分、ARCWDを介して流されているのだろう。
動画をスライドさせて画面アウトさせようにも、この動画は、不思議なことに俺の視界に張り付いて離れないでいる。それは、皆も同じようで、空に指を動かしては何も起きないことに疑問符を浮かべている。
そうこうしているうちに、動画に進展があり、そこに見覚えのある影と影が会話をしているのが見えた。間違いない。あの顔は、毎日鏡で見て、そしてもう片方は悪夢に出てくるくらいに憎んだ顔。
......いつの日なのかは知らないが、動画では俺と伊吹先生が会話をしている。そして、先生が電話を取り出し、数秒とした後に俺を殴った。上手いこと撮れたものだ。これだけ完璧な証拠を撮れていれば、ほとんど問題はない。探偵団と名乗るだけはあるな。
だが、そう考えていたのも束の間。俺が退出した後、また数秒の倍速が入って、今度は清水が部屋に入って来た。そして、それと同時に清水は顔を思いっきり殴られた。
「っ......!」
俺は思わず飛び退く。しかし、そんなことをしたところで目の前に映るものは消えてくれない。
......思い出した。あの日、一際大きな痣を付けられた日のことだ。俺は伊吹先生、いや、伊吹に命令されて清水を呼びに行った。そして、伝えるだけ伝えて、俺は逃げるように家に帰ったんだ。
本当なら、俺も一緒に戻らなければならなかった。なのに、俺は怖くなって逃げ出してしまった。もし、俺が逃げていなければ、彼女の身代わりになれていたかもしれないと言うのに......。弱虫で、バカで、そのくせ目上以外に対しての態度だけは頑固な俺だ。そんなにも惨めだというのに、俺はなんで逃げてたんだ。
......証拠という動画が進んでいく度、俺は後悔に駆られた。頭を両手で押さえて、必死になるかのように机の下で顎を震わせていた。何も見たくない。何も知りたくない。俺なんか、死んでしまえばいいのに......
『見たか全校生徒の諸君!そして伊吹!』
そんな、ちっぽけな俺に反するかのようにあいつの声はデカく、闘志に燃えている。あいつは、俺以上に酷い目に遭っている。右腕を潰され、二度と弓道が出来ないような体にされたあいつが、必死に戦っている。
無様だ。神代に対してではない。俺に対して言うべき言葉だ。......俺が、俺がもっと早くに声を上げていれば、いいや違う。声すら上げなかった俺に、そうやって後悔する資格なんてない。ただ、今は成り行きを見守るしかない......。
『今見せたのは証拠のうちのほんの一部にしか過ぎねぇ!てめぇがこれで否定をするってんなら、こっちもそれ相応の対応をとる!さあ、どうすんだ伊吹!』
神代の好戦的な大声。俺は、ただ、小さくなって震えているだけ。
俺も、あいつみたいに強くあれたら......
......
......
......
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「てめぇが否定するってんなら、こっちもそれ相応の対応をとる!さあ、どうすんだ伊吹!」
......俺が用意した台本を忠実になぞりつつも、神代は自分の言葉で怒りを顕にしている。そのせいかは知らんが、神代は覚醒したかのように言葉をスラスラと吐き、俺に耳打ちをよろしくとか言っていた割には一切助け舟を求めない。
それだけ、神代の思うところが強いのだろう。
進藤「少年、放送室に近づいてくる影が1つあるぞ」
進藤が俺のARCWDに、この別館の立体地図を映し出す。赤い点が、階段をゆっくりゆっくりと上って行ってるのが見える。多分、奴だろうな。俺は地図を視界の隅に小さく置き、神代の方へと向く。
さて、そろそろ神代ばかりでなく、俺達も動き出そう。
「神代、俺が合図するまで放送は止めるなよ」
神代は言葉で返さず、ただ首を縦に振って頷くだけ。そして、すぐさま台本に書かれてある通りのことをマイクに向けてぶつける。
「日比谷、少し下がってろ」
日比谷「う、うん。そろそろ、先生が来るんだよね?」
「ああ......」
視界の隅に置いた立体地図を、もう一度拡大させる。赤い点が、もうすぐそこまで迫って来ている。あと数秒としないうちに、この放送室の扉を開けてくることだろう。
神代の叫び声にも近いような大声を聞きつつ、俺は段々と近づいてくる赤い点、そしてこの距離からでも響いてくる足音に耳を傾けていた。日比谷と進藤を後ろの方へと置き、静かに放送室の内鍵を開ける。
コツコツ......コツコツ......
鳴り響く足音がすぐそこまで来た。扉の網目状のガラス窓から男らしき姿が確認出来る。そして、一泊開けて奴はゆっくりと扉を開いた。
日比谷「え......」
姿をハッキリと確認することができた時、日比谷が小さく疑問符を浮かべた。
「やはり来ましたか。......矢島教頭先生」
矢島「なぜ、知っていたかのような言葉を放つのかね?」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
矢島誠(57)。数学教師であり、この学園の教頭。
授業中は厳しく、しかしそれ以外では人格が変わったかのように優しい教師。1つの言葉で言い表すならば、厳しくも優しい慕われるべき先生。そう言い例えるのが良いだろう。
しかし、それはあくまで表の顔。裏の顔は自分より若く、権限のない先生を操り、自分が気に入らない生徒を徹底的に陰湿な方法で痛めつけるクソ教師。それが、俺と進藤が突き止めた真実。
矢島「私は君達の話を聞きに来ただけだ。まずは放送を切ってくれ。全校生徒に聞かれてはならない話もあるんだろう?」
「俺達がやろうとしていることが全て分かってるかのような口振りですね」
と、俺は言いつつも、日比谷と神代に目配せをして放送を止めさせる。2人とも、驚いたかのような顔をして矢島の方を見るが、それでも手だけは止めずに俺の指示を聞き入れる。
そして、すぐに俺は進藤の方にも目配せをして、例の計画を実行させる。
矢島「君達が言っていた、伊吹君の暴行。そして、私のこれにも映し出された例の映像。あれは本当なのか?」
矢島は、あくまで知らないという態度を突き通すかのようにわざとらしい疑問符を並べてそう聞いてくる。
「先生、そんなボケた老人のような押し問答はやめましょう。知っているんでしょう?伊吹先生の隠れた暴行事件」
矢島「何の話か分からんな。私は、今日、この時間に君達の話を聞いて事実を知っただけだ」
「あくまでシラを切るつもりですか。なら、良いですよ」
進藤が矢島のARCWDに1つの動画を送り付ける。
「安心してください。あなただけに送っています」
矢島「......」
疑いの目を向けてくるが、その疑いは間違いではない。
なぜならば、今この瞬間のやり取り、そして進藤が送る動画ファイルは、さっきまでと同じように全校生徒に通じている。流石にこの会話は聞き取られてはいないと思っているんだろうな。奴は何かを言うでもなく、ただ送られてきた動画を見るだけである。
矢島「......なるほど。まさか、ここまで撮られているとはな」
奴の声に重みがかかった。流石に逃げられないと思ったのだろう。
矢島に送った動画ファイルは、清水が暴行に遭った直後の動画。神代や日比谷には見せていない。俺が確信を得るまでは黙っていようと思って隠していた。その内容は、清水が立ち去った後の進路指導室で、伊吹と矢島が会話をしている映像だ。
音はよく録れていない。しかし、それも進藤の技術にかかれば御茶の子さいさいのようで、聞こえなかった音全てがクリアに聞こえるようになっていた。
「ずっと疑問に思っていたんです。なぜ、何も恨みを買った覚えの無いはずの俺が伊吹に目を付けられたのか。その理由、あなたがこの事件に関わっていると結論づけた時、やっとその理由が分かりましたよ」
矢島「......」
「随分と小さな器の人間だと思いますよ。あなたは。なぜなら、あなたは俺が授業中にただ1つの受け答えをしただけで目を付けた。きっと、あなたは生徒達を授業で苦しめることを快感に覚えていたのでしょう。しかし、俺が、あなたが与えた苦しみをあっさりと回避してしまった。それを根に持ったあなたが、俺をターゲットに指定した。どうですか?細かな理由は違えど、大体そんなものでしょう?」
矢島「......」
矢島は黙り続けるだけ。しかし、その顔には僅かな震えが込み上げてきている。
図星だ。奴は必死に反論の言葉を探している。だが、そんな余裕を俺は与えない。
「弓道部に関しては、多分、あなたが担当している部活が問題でしょうね」
矢島「......ほう、私が担当している部活?」
「ええ。あなたが担当している剣道部ですよ。随分と弱い部活らしいですね。しかも、練習に使うはずの道場が弓道部の部室代わりになっている。更には、過去に剣道をやっていた人達が次々に弓道部へと移り変わる。相変わらず心が小さいとは思いますが、理由はハッキリとしていますね」
矢島「なるほど。しかし、それならば、なぜ伊吹君が自ら担当する部活を潰すようなことをするのかね?」
「当然の疑問ですね。でも、そこに関してもちゃんとした理由はありますよ」
矢島「......」
進藤に合図をし、最後の動画をARCWDに送る。
動画の内容、それは、進路指導室で伊吹が矢島に殴られている映像だ。しかも、音をクリアにしているため、直前の会話も聞き取れる。
『なぜ君は私の言った通りに出来ないのかね!』
矢島の怒声。響く暴力の音。
『っ......』
あれだけ強がっていた伊吹も、矢島を前にしては蛇に睨まれた蛙のように動けないでいる。
まさか、もう一度設置し直した後にこんな映像が撮れるとは思わなかったな。進藤の提言通りにして正解だった。
『清水はお前のせいで死んだに等しい!どうだ?自分の教え子が、自分の手によって苦しんで行く様を見るのは!そして、お前はダメだと分かっていてもやめることができない!お前は一生、体罰教師だということがバレる日が来ることを怯えて生きていろ!』
......正に決定的。こんなのを見たあとでは、伊吹を憎む気持ちなんて無くなってしまう。だが、それでも伊吹がやっていた事は悪いことであり、許されることではない。そして、それは矢島も同じだ。
自らの手は汚さず、自分に逆らうことの出来ない教師を利用して気に食わない生徒を痛めつける。伊吹以上にクズな奴だ。いや、伊吹は命令されて仕方なしにやっていただけまだいい方だ。だが、矢島は自分の意思で全てをやっていた。どれだけ憎まれ、どれだけの罰を受けても足りない。足らなさすぎる。だから、俺達がこいつに罰を与える。
矢島「......」
「まだ言い訳でもしますか?もう見苦しいのでやめた方が賢明ですよ」
矢島「......」
「罪を認めてください。あなたは前歴持ちの伊吹先生を利用し、たくさんの生徒を間接的に傷つけてきた。その中には、生きることを苦痛に感じ、自殺に走ってしまった生徒もいる。この事実を重く受け止めて、自首してください」
矢島「......あぁぁぁぁぁ!!!」
何を思ったか、矢島は右腕を振り上げ、動画で伊吹先生を殴っていた時と同じポージングで俺に拳を振るってきた。
あんなのを喰らえば、ヒョロガリの俺では簡単に鼻の骨が折れてしまうだろう。当たりどころが悪ければ、顔のどこかの骨も一緒に砕けるかもしれない。
それはこの一瞬でよく分かった。しかし、俺は避けるでもなく、ましてや守ったり、反撃したりすることもなかった。
矢島「なっ......!」
俺の鼻先に矢島の拳が来たところで、その拳は勢いを失った。
伊吹「もう、こんな事やめましょう」
伊吹先生が、若干痣の痕が残る右腕で、矢島の腕を掴んでいた。
神代「伊吹っ......!」
いつの間にか、神代が放送のマイクから離れてこちらに来ていた。日比谷も、信じられないといった顔でこちらを見ている。
伊吹「神代......いや、神代優真君。......すまなかった!」
伊吹が矢島の頭を押さえつけて、自分の頭と同時に地面へと叩きつけて土下座の姿勢をする。
伊吹「いくら他人の命令とは言え、私がやった事は到底許されるべきことではない!いや、他人の命令なんぞ関係ない!私が君の腕を使いものにならないようにし、日比谷さんにはセクハラにも似たような言葉を発し、そして清水さんを自殺に追い込んでしまった!許されるようなことではないし、許してほしいとも願わない!私は、私は、どれだけの苦しみを与えられてから死んでもおかしくない奴だ!」
日比谷「......」
神代「......」
伊吹のあまりの態度の変わりように、2人とも言葉を失って呆然としている。
「......先生。顔を上げてください」
伊吹「っ......君にも、申し訳ないことをしたっ......!」
「気にしてませんよ。どうせ、噂は噂ですから」
伊吹「......」
「ですが、気にしないのは俺だけです。後ろの2人、それに清水さんや青山はあなたを許すと思いますか?」
伊吹「......すまなかった」
伊吹は、さっきまで以上に深々と土下座をした。
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