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第8章√VS 【闇の魂】
第8章22 【黒の魔導士】
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ケンセイ「......」
ソウセイ「......」
フセイ「......」
マセイ「......」
キュウセイ「......」
「結構でけぇ事して来たのに、アイツらずーっと黙りだな」
「ダークソウル最強の5つ子は、最強の名を隠すように黙ってるだけだろ。心の中じゃ、やりきった感が半端ねぇんだろうな!」
「それもそうか!ガッハッハッ!」
「滅龍奥義・獄炎龍波!」
「「 ギャァァァァァァ! 」」
「な、何者だ!」
「どうもどうも。第4ステージの挑戦受けに来たぜ」
「グラン、メモリーズじゃー!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヴェルド「フレイムクリエイト・龍波!」
フウロ「トワイライト・ミリオンソード!」
シアラ「ウォータースパイラル!」
「「「 ギャァァァァァァ!!! 」」」
ヴァル「テメェら!落とし前、キッチリ付けてもらうぞゴルァ!」
「「「 ギャァァァァァァ!!! 」」」
なんだよこいつら。思ったより、大したことねえじゃんかよ。こんな奴らに、エレノアとエフィが......
ケンセイ「......」
ヴァル「テメェ、大会の時の......」
ケンセイ「久しいな。炎と氷の龍殺し......」
ヴァル「おい、エレノアとエフィを無様な姿に晒したのは、テメェか?」
ケンセイ「......ふっ」
ヴァル「何がおかしい......こちとら、手加減は出来ねえんだぞ?」
ケンセイ「我らの挑戦を受けた姿勢、しかと承った。その行為に敬意を示し、我らは貴様らを潰す」
ヴァル「あぁ?」
ケンセイ「我が名はケンセイ。ダークソウル最強の5つ子のうちの一人。得意とする戦いは、剣技だ」
なんだこいつ。悠長に自己紹介できる立場じゃねえだろ。それに、フードのせいで顔がよく見えねえが、どことなく清々しさを感じる。
......だが、こいつらがエレノアとエフィをやった事に変わりはねぇ。罪人には罪を償ってもらうのが礼儀。そうだろ?
ヴァル「地獄龍の咆哮!」
ケンセイ「剣技・流星」
俺の咆哮に対し、奴は鮮やかな手つきで炎を切り裂く。炎を切り裂く?なんかおかしくね?
え?氷とかと違って、固形物じゃねえだろ?斬ったとしても、すぐに形が元に戻るはずだ。それを、本当に氷とかを斬ったみたいに炎をバラバラにさせた。
ケンセイ「大会の時には見せることが出来なかった技だ。そう驚くのも無理はない」
ヴァル「お、驚いてねえよ!」
ケンセイ「......ふっ。次はこちらから仕掛けさせてもらおう。剣技・五月雨」
ヴァル「......っ!......何もねえ?」
今、確かに奴は俺の体を斬り刻むようにして剣を振り回したはずだ。だが、俺の体には......
ヴァル「うっ......」
時間差......何もねえと思っていたが、それは間違いだった。
まさか、時間差でダメージを与えてくるとはな。正に、五月雨の名の通り、断続的な痛さと、乱れた時間差で傷が増えていくわけだ。
ヴァル「......氷龍の翼撃!」
あえて、傷を押さえるかのようにして背を向け、不意打ちの形で奴に攻撃を喰らわす。距離的に、翼撃でも相手に反応させずに攻撃が出来る。
ヴァル「氷炎龍の咆哮!」
ケンセイ「......」
怯んだと思ったんだが、一瞬で体制を立て直されて回避された。こいつら、わざわざ大会で不正を働かなくとも勝てたんじゃないか?
......まあ、こいつらはこいつらなりの考えを持ってんだろうな。だとしても、それが俺達の仲間を晒し者にする理由にはならねぇ。
ヴァル「地獄龍の鉄砕!」
ケンセイ「剣技・暁」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヴァハト「久しいな。ザザ。いや、今はマスターアクセイとでも呼ぶべきか」
アクセイ「......」
闇を発するでもなく、何かしらのオーラを感じさせるわけでもない。
ただ、静かに窓から差し込む光を見るようにして、儂に対して背を向けている。いつやって来ようが、余裕で対処してやるということか。随分と強くなりおって......
ヴァハト「お前が、なぜ急に儂らのギルドを去ったのかについては不問に処そう。じゃが、なぜ今になって儂らのギルドを狙った?大会の時に、対立があったのは確かじゃが、それが今になって喧嘩を売る理由にはなりえん」
アクセイ「......」
ゆっくりと、その身を覆ったローブを外し、儂にその顔を見せる。
ヴァハト「むっ......!」
顔に大きな傷痕。グランメモリーズを出ていった時には無かったはずの傷。
アクセイ「昔、力を追い求めて狭い籠から抜け出した。だが、求めた力は手に入らず、その代償とばかりに体に傷が付いていくばかり。だが、そんな時に転機が訪れた」
ヴァハト「転機?」
アクセイ「全ての魔法の源、黒魔法。それをとある旅人に教えられた。その魔法を習得する代償として、この顔に消えぬ傷が付いたがな。まあ、見た目なんぞ力に比べれば屁にもならん物だ」
なるほどな。ダークソウルが黒魔法を使えた理由はそこにあるのか。だが、そうなると、次はアクセイに黒魔法を教えた物の正体が気になるところだ。
ヴァハト「なら、儂らのギルドを襲った理由はなんじゃ?話と大会でのことからして、少なくとも半年以上前にはその力を手に入れておったはずじゃ。なぜ今になって?」
アクセイ「......何事もなければ、我らがグランメモリーズを狙う理由は無い。大会の時は、ただ単に我らの力を示そうとしただけ。その相手が、たまたまお前らだっただけだ」
引き運の無いギルドじゃとは思っておったが、まさかこんなところでも引きの悪さを発揮することになるとはな。
じゃが、何事もなければ、狙うつもりはなかったか。どこまで信じていい話なのやら。少なくとも、全てを信じてやるわけにはいかんな。
アクセイ「......簡単に言ってしまえば、依頼という事になるか」
依頼でギルドを破壊か。そんな依頼が王国義法で許されるわけがないのだがな。そんな依頼を受理するのは、闇ギルドである証。
......大会の時に不正をしたから、今更どうとも思わんが、金のために道を外れてしまうとはな。元グランメモリーズのメンバーである事が不思議でならん。
アクセイ「第4ステージ。仲間をやられたお前らが、我らに直接殴り込みに来る。そこで、ギルド同士の全面戦争。だが、これは我らが考えたこと。依頼主の依頼とは直接関係ない」
ヴァハト「......関係ない?」
アクセイ「依頼主の依頼内容。ここまで突破したお前になら話してやろう」
ヴァハト「......儂らに刃を向けさせるよう仕向けた依頼主。詳しく聞かせてもらおうか」
アクセイ「......奴は」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
エレノア「......はっ」
ずっと悪夢にうなされていたような気分だった。どんな夢だったかは覚えてないけど、肌で感じる汗の感触が、嫌な夢を見ていたという感覚だけを呼び覚ます。
ミラ「大丈夫?エレノア......凄く、悪夢にうなされていたようだったけど」
ミラさん......
白い壁に、白いベッド。ギルドの救護室か......
ミラ「ゆっくりでいいから、昨日の晩から朝方にかけて、何があったか思い出して」
エレノア「......」
昨日の晩から朝方......
確か、ギルドが壊されてて、あーだこーだの言い争いがあった後に普通に帰路についていたはず。確か、方面が一緒だからとエフィも一緒にいた。
暗い夜道で、突然後ろから押さえ付けられて......
そこから先の記憶がない。今の状況を考慮すると、何かしらの方法で眠らされていた......という事になるのかな?
エレノア「ハッキリと思い出せないけど、確かエフィと一緒に帰ってて、突然後ろから何者かに押さえ付けられたんです。それで、そこから先は記憶が......」
ミラ「なるほどねぇ......エフィとエレノアが縛り付けられていたのには、一応の合点がいくのね。うーん......」
エレノア「......何があったんですか?」
ミラ「......今朝ね、いつも通りに壊れたギルドのところに行ったらね、エレノアとエフィが瓦礫に無理矢理建てたような柱に括り付けられていたの。今は、テラーチさんのお陰で傷痕がほとんど残ってないけれど、私達が見た時には、もう目も当てられないくらいに酷かったのよ」
エレノア「そう......ですか......」
確かに、体が硬い感じはするけれど、痛みは感じない。本当に、そんな傷があったのかと思わせるくらいだ。
ミラ「......エレノア。もしかしたらだけれど、犯人の顔とか見てない?」
エレノア「後ろから押さえつけられたから、そんなものは何も......」
ミラ「......よね。でも、犯人がダークソウルだって事くらいは分かるのだけれど......せめて、もうちょっと詳しい情報があればね......」
......
......
......
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヴァハト「......その話、本当じゃろうな」
アクセイ「ああ。我らとで、お前らとはあまり争いたくはない。我らの提示した取引を飲めば、この戦いを終わらせてやる」
ヴァハト「......」
依頼主......まさか、そんな事情があったとはな。じゃが、争いを終わらせるためと言えど、仲間を売るような真似は出来ん。この取引、最初から乗るつもりはないな。
アクセイ「......グランメモリーズのマスター。お前の考えは理解している。この戦いは止められぬ。故に、我はお前を殺す。例え、元俺が所属していたギルドのマスターであろうとな」
ヴァハト「話し合いで解決は無理のようじゃな」
アクセイ「そもそも、その気でいたのなら、お前は1人で来ていたはずだ」
ヴァハト「......ああ、そうじゃな」
一時の感情と言えど、儂はこいつらを本気で憎んだ。話し合いで解決する気など、元から無い。
ヴァハト「グランメモリーズ6代ギルドマスターとして、貴様らに最後の猶予を与える。貴様らが提示する答えは1つ。YESかNOだけじゃ」
アクセイ「......絶対審判。グラン・ジャッジメント」
ヴァハト「ダークソウル代表、ギルドマスターアクセイに問う。大人しく武器を仕舞え。そして、儂らに降伏せよ!」
アクセイ「......答えは......これだ」
ヴァハト「なっ......」
背中に鋭い痛み......刃物で刺されたわけではない。これは......魔法の刃......
アクセイ「グランメモリーズギルドマスターヴァハト。お前の敗因は、ここにいる敵が俺1人だと思い込んでいたことだ」
アクセイの隣に、黒いローブに身を包んだ男が1人......
アクセイ「こいつの名はマセイ。ダークソウル最強と謳われる、5つ子の末っ子だ。そして、我らの中でも随一の魔法を扱う」
ヴァハト「ハッ......」
これは、魔法の他に傷が治りにくくなる呪術も練り込まれておる。
黒魔法に、呪術。なんとも厄介な組み合わせじゃ。
ヴァハト「......グラン・ジャッジメント」
アクセイ「......!」
まだ、儂は負けたわけではない。この勝負、引き分けと行こうか。
ガキ共。後は、任せたぞ。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
フウロ「......っ!マスター!」
突然頭上が激しく光り、天井が崩れ落ちてマスターと、恐らくはダークソウルのギルドマスターであろうと思われる者の体が降ってくる。
ヴァハト「......お前ら、一旦撤退じゃ」
フウロ「っ......全員撤退!速やかにここから脱出せよ!」
突然の命令に全員が動揺するが、ただ1人、グリードだけが指示通りに退路を作る。
グリード「テメェらァ!撤退って言われたんなら、大人しく撤退しろォ!俺はさっさと逃げる!」
ヴェルド「おい!お前!」
フウロ「ヴェルド!お前もさっさと逃げろ!」
ヴェルド「何でだよ!まだ爺さんがやられただけだろ!」
フウロ「マスターの命令は絶対だ!それを破るというのなら、ギルドをやめてしまえ!」
ヴェルド「っ......クソ!アイスシールド!」
敵と味方の境界線に、大きな氷の壁を張り、ヴェルドは悔しそうに立ち去っていく。
それでいい。マスターが撤退だと言うのだから、何かしらの理由があるはずだ。
ヴァハト「フウロ、お前も早く逃げるんじゃ......」
フウロ「......はい。マスター」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ケンセイ「逃げるか......」
ヴァル「逃げるつもりはねぇ。勝負はお預けってとこだ」
ケンセイ「なるほどな。第4ステージはDrawと言ったところか」
ヴァル「......第5ステージは、俺達が頂く。そして、ゲームセットだ」
ケンセイ「第5を取っても、まだ2対2だ。どちらかが出し抜くまで、決着はつかんぞ?」
ヴァル「いいや。決着はつく。お前ら全員が第6ステージに進めなくなるまで叩き潰してやるからな」
ケンセイ「......楽しみにしているぞ。だが、我らの目的は貴様らとの勝負にはない。我らが求めるものはただ1つ」
ヴァル「ああ?」
ケンセイ「ーー」
......
......
......
なんだと?
ソウセイ「......」
フセイ「......」
マセイ「......」
キュウセイ「......」
「結構でけぇ事して来たのに、アイツらずーっと黙りだな」
「ダークソウル最強の5つ子は、最強の名を隠すように黙ってるだけだろ。心の中じゃ、やりきった感が半端ねぇんだろうな!」
「それもそうか!ガッハッハッ!」
「滅龍奥義・獄炎龍波!」
「「 ギャァァァァァァ! 」」
「な、何者だ!」
「どうもどうも。第4ステージの挑戦受けに来たぜ」
「グラン、メモリーズじゃー!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヴェルド「フレイムクリエイト・龍波!」
フウロ「トワイライト・ミリオンソード!」
シアラ「ウォータースパイラル!」
「「「 ギャァァァァァァ!!! 」」」
ヴァル「テメェら!落とし前、キッチリ付けてもらうぞゴルァ!」
「「「 ギャァァァァァァ!!! 」」」
なんだよこいつら。思ったより、大したことねえじゃんかよ。こんな奴らに、エレノアとエフィが......
ケンセイ「......」
ヴァル「テメェ、大会の時の......」
ケンセイ「久しいな。炎と氷の龍殺し......」
ヴァル「おい、エレノアとエフィを無様な姿に晒したのは、テメェか?」
ケンセイ「......ふっ」
ヴァル「何がおかしい......こちとら、手加減は出来ねえんだぞ?」
ケンセイ「我らの挑戦を受けた姿勢、しかと承った。その行為に敬意を示し、我らは貴様らを潰す」
ヴァル「あぁ?」
ケンセイ「我が名はケンセイ。ダークソウル最強の5つ子のうちの一人。得意とする戦いは、剣技だ」
なんだこいつ。悠長に自己紹介できる立場じゃねえだろ。それに、フードのせいで顔がよく見えねえが、どことなく清々しさを感じる。
......だが、こいつらがエレノアとエフィをやった事に変わりはねぇ。罪人には罪を償ってもらうのが礼儀。そうだろ?
ヴァル「地獄龍の咆哮!」
ケンセイ「剣技・流星」
俺の咆哮に対し、奴は鮮やかな手つきで炎を切り裂く。炎を切り裂く?なんかおかしくね?
え?氷とかと違って、固形物じゃねえだろ?斬ったとしても、すぐに形が元に戻るはずだ。それを、本当に氷とかを斬ったみたいに炎をバラバラにさせた。
ケンセイ「大会の時には見せることが出来なかった技だ。そう驚くのも無理はない」
ヴァル「お、驚いてねえよ!」
ケンセイ「......ふっ。次はこちらから仕掛けさせてもらおう。剣技・五月雨」
ヴァル「......っ!......何もねえ?」
今、確かに奴は俺の体を斬り刻むようにして剣を振り回したはずだ。だが、俺の体には......
ヴァル「うっ......」
時間差......何もねえと思っていたが、それは間違いだった。
まさか、時間差でダメージを与えてくるとはな。正に、五月雨の名の通り、断続的な痛さと、乱れた時間差で傷が増えていくわけだ。
ヴァル「......氷龍の翼撃!」
あえて、傷を押さえるかのようにして背を向け、不意打ちの形で奴に攻撃を喰らわす。距離的に、翼撃でも相手に反応させずに攻撃が出来る。
ヴァル「氷炎龍の咆哮!」
ケンセイ「......」
怯んだと思ったんだが、一瞬で体制を立て直されて回避された。こいつら、わざわざ大会で不正を働かなくとも勝てたんじゃないか?
......まあ、こいつらはこいつらなりの考えを持ってんだろうな。だとしても、それが俺達の仲間を晒し者にする理由にはならねぇ。
ヴァル「地獄龍の鉄砕!」
ケンセイ「剣技・暁」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヴァハト「久しいな。ザザ。いや、今はマスターアクセイとでも呼ぶべきか」
アクセイ「......」
闇を発するでもなく、何かしらのオーラを感じさせるわけでもない。
ただ、静かに窓から差し込む光を見るようにして、儂に対して背を向けている。いつやって来ようが、余裕で対処してやるということか。随分と強くなりおって......
ヴァハト「お前が、なぜ急に儂らのギルドを去ったのかについては不問に処そう。じゃが、なぜ今になって儂らのギルドを狙った?大会の時に、対立があったのは確かじゃが、それが今になって喧嘩を売る理由にはなりえん」
アクセイ「......」
ゆっくりと、その身を覆ったローブを外し、儂にその顔を見せる。
ヴァハト「むっ......!」
顔に大きな傷痕。グランメモリーズを出ていった時には無かったはずの傷。
アクセイ「昔、力を追い求めて狭い籠から抜け出した。だが、求めた力は手に入らず、その代償とばかりに体に傷が付いていくばかり。だが、そんな時に転機が訪れた」
ヴァハト「転機?」
アクセイ「全ての魔法の源、黒魔法。それをとある旅人に教えられた。その魔法を習得する代償として、この顔に消えぬ傷が付いたがな。まあ、見た目なんぞ力に比べれば屁にもならん物だ」
なるほどな。ダークソウルが黒魔法を使えた理由はそこにあるのか。だが、そうなると、次はアクセイに黒魔法を教えた物の正体が気になるところだ。
ヴァハト「なら、儂らのギルドを襲った理由はなんじゃ?話と大会でのことからして、少なくとも半年以上前にはその力を手に入れておったはずじゃ。なぜ今になって?」
アクセイ「......何事もなければ、我らがグランメモリーズを狙う理由は無い。大会の時は、ただ単に我らの力を示そうとしただけ。その相手が、たまたまお前らだっただけだ」
引き運の無いギルドじゃとは思っておったが、まさかこんなところでも引きの悪さを発揮することになるとはな。
じゃが、何事もなければ、狙うつもりはなかったか。どこまで信じていい話なのやら。少なくとも、全てを信じてやるわけにはいかんな。
アクセイ「......簡単に言ってしまえば、依頼という事になるか」
依頼でギルドを破壊か。そんな依頼が王国義法で許されるわけがないのだがな。そんな依頼を受理するのは、闇ギルドである証。
......大会の時に不正をしたから、今更どうとも思わんが、金のために道を外れてしまうとはな。元グランメモリーズのメンバーである事が不思議でならん。
アクセイ「第4ステージ。仲間をやられたお前らが、我らに直接殴り込みに来る。そこで、ギルド同士の全面戦争。だが、これは我らが考えたこと。依頼主の依頼とは直接関係ない」
ヴァハト「......関係ない?」
アクセイ「依頼主の依頼内容。ここまで突破したお前になら話してやろう」
ヴァハト「......儂らに刃を向けさせるよう仕向けた依頼主。詳しく聞かせてもらおうか」
アクセイ「......奴は」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
エレノア「......はっ」
ずっと悪夢にうなされていたような気分だった。どんな夢だったかは覚えてないけど、肌で感じる汗の感触が、嫌な夢を見ていたという感覚だけを呼び覚ます。
ミラ「大丈夫?エレノア......凄く、悪夢にうなされていたようだったけど」
ミラさん......
白い壁に、白いベッド。ギルドの救護室か......
ミラ「ゆっくりでいいから、昨日の晩から朝方にかけて、何があったか思い出して」
エレノア「......」
昨日の晩から朝方......
確か、ギルドが壊されてて、あーだこーだの言い争いがあった後に普通に帰路についていたはず。確か、方面が一緒だからとエフィも一緒にいた。
暗い夜道で、突然後ろから押さえ付けられて......
そこから先の記憶がない。今の状況を考慮すると、何かしらの方法で眠らされていた......という事になるのかな?
エレノア「ハッキリと思い出せないけど、確かエフィと一緒に帰ってて、突然後ろから何者かに押さえ付けられたんです。それで、そこから先は記憶が......」
ミラ「なるほどねぇ......エフィとエレノアが縛り付けられていたのには、一応の合点がいくのね。うーん......」
エレノア「......何があったんですか?」
ミラ「......今朝ね、いつも通りに壊れたギルドのところに行ったらね、エレノアとエフィが瓦礫に無理矢理建てたような柱に括り付けられていたの。今は、テラーチさんのお陰で傷痕がほとんど残ってないけれど、私達が見た時には、もう目も当てられないくらいに酷かったのよ」
エレノア「そう......ですか......」
確かに、体が硬い感じはするけれど、痛みは感じない。本当に、そんな傷があったのかと思わせるくらいだ。
ミラ「......エレノア。もしかしたらだけれど、犯人の顔とか見てない?」
エレノア「後ろから押さえつけられたから、そんなものは何も......」
ミラ「......よね。でも、犯人がダークソウルだって事くらいは分かるのだけれど......せめて、もうちょっと詳しい情報があればね......」
......
......
......
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヴァハト「......その話、本当じゃろうな」
アクセイ「ああ。我らとで、お前らとはあまり争いたくはない。我らの提示した取引を飲めば、この戦いを終わらせてやる」
ヴァハト「......」
依頼主......まさか、そんな事情があったとはな。じゃが、争いを終わらせるためと言えど、仲間を売るような真似は出来ん。この取引、最初から乗るつもりはないな。
アクセイ「......グランメモリーズのマスター。お前の考えは理解している。この戦いは止められぬ。故に、我はお前を殺す。例え、元俺が所属していたギルドのマスターであろうとな」
ヴァハト「話し合いで解決は無理のようじゃな」
アクセイ「そもそも、その気でいたのなら、お前は1人で来ていたはずだ」
ヴァハト「......ああ、そうじゃな」
一時の感情と言えど、儂はこいつらを本気で憎んだ。話し合いで解決する気など、元から無い。
ヴァハト「グランメモリーズ6代ギルドマスターとして、貴様らに最後の猶予を与える。貴様らが提示する答えは1つ。YESかNOだけじゃ」
アクセイ「......絶対審判。グラン・ジャッジメント」
ヴァハト「ダークソウル代表、ギルドマスターアクセイに問う。大人しく武器を仕舞え。そして、儂らに降伏せよ!」
アクセイ「......答えは......これだ」
ヴァハト「なっ......」
背中に鋭い痛み......刃物で刺されたわけではない。これは......魔法の刃......
アクセイ「グランメモリーズギルドマスターヴァハト。お前の敗因は、ここにいる敵が俺1人だと思い込んでいたことだ」
アクセイの隣に、黒いローブに身を包んだ男が1人......
アクセイ「こいつの名はマセイ。ダークソウル最強と謳われる、5つ子の末っ子だ。そして、我らの中でも随一の魔法を扱う」
ヴァハト「ハッ......」
これは、魔法の他に傷が治りにくくなる呪術も練り込まれておる。
黒魔法に、呪術。なんとも厄介な組み合わせじゃ。
ヴァハト「......グラン・ジャッジメント」
アクセイ「......!」
まだ、儂は負けたわけではない。この勝負、引き分けと行こうか。
ガキ共。後は、任せたぞ。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
フウロ「......っ!マスター!」
突然頭上が激しく光り、天井が崩れ落ちてマスターと、恐らくはダークソウルのギルドマスターであろうと思われる者の体が降ってくる。
ヴァハト「......お前ら、一旦撤退じゃ」
フウロ「っ......全員撤退!速やかにここから脱出せよ!」
突然の命令に全員が動揺するが、ただ1人、グリードだけが指示通りに退路を作る。
グリード「テメェらァ!撤退って言われたんなら、大人しく撤退しろォ!俺はさっさと逃げる!」
ヴェルド「おい!お前!」
フウロ「ヴェルド!お前もさっさと逃げろ!」
ヴェルド「何でだよ!まだ爺さんがやられただけだろ!」
フウロ「マスターの命令は絶対だ!それを破るというのなら、ギルドをやめてしまえ!」
ヴェルド「っ......クソ!アイスシールド!」
敵と味方の境界線に、大きな氷の壁を張り、ヴェルドは悔しそうに立ち去っていく。
それでいい。マスターが撤退だと言うのだから、何かしらの理由があるはずだ。
ヴァハト「フウロ、お前も早く逃げるんじゃ......」
フウロ「......はい。マスター」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ケンセイ「逃げるか......」
ヴァル「逃げるつもりはねぇ。勝負はお預けってとこだ」
ケンセイ「なるほどな。第4ステージはDrawと言ったところか」
ヴァル「......第5ステージは、俺達が頂く。そして、ゲームセットだ」
ケンセイ「第5を取っても、まだ2対2だ。どちらかが出し抜くまで、決着はつかんぞ?」
ヴァル「いいや。決着はつく。お前ら全員が第6ステージに進めなくなるまで叩き潰してやるからな」
ケンセイ「......楽しみにしているぞ。だが、我らの目的は貴様らとの勝負にはない。我らが求めるものはただ1つ」
ヴァル「ああ?」
ケンセイ「ーー」
......
......
......
なんだと?
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