僕のΩは案外可愛い?

らんね

文字の大きさ
上 下
14 / 61

14 おかしな友人 side 戸山

しおりを挟む
俺、戸山はその日野菜の配達をしていた。
 段ボールを持って訪ねたのは、高校時代につるんでいた香坂が働いているバーだ。ここはアイツの従兄の兄さんがやっている店らしく、住み込みで働いているんだと。どういうわけだか高校に入るなり家族と折り合いが悪くなった香坂が、卒業して居所がなくなったのを、その兄さんに拾われた形だ。
 俺は香坂と一番の友人だっていう自信がある。そんなアイツを応援したい気持ちもあって、家が農家なもんで、こうして市場に卸すのに適さない規格外野菜を持ってきていた。俺の家の方は少しでも金になってよし、店の方は格安で野菜が手に入ってよしってわけだ。

「どうも~、お世話になります」
「おぉ、サンキューな」

俺が店内を覗けば、中には店主の兄さんだけがいて、ボーッと煙草を吸っていた。

「香坂います?」
「お~、まだ上だ。勝手に上がれや」
「うっす、顔見せてきます」

住居であるビルの二階へ階段を上っていくと、呼び鈴鳴らそうとして玄関ドアが開いていることに気付く。あの兄さん、鍵かけ忘れる癖あるみたいなんだよな、不用心じゃね? っていうか、玄関に見慣れないスニーカーがある。香坂のでもあの兄さんのでもないよな、趣味じゃないっぽいし。誰か来てんのか? 兄さんの知り合いとかか?

「おぅい、香坂ぁ~?」

とりあえず、俺は奥に向かって大声で呼んでみる。

「ぁあっ!?」

そうするとなんか、変な声がした。
 あ? なにやってんだ?
 それに香坂じゃない声がして、やっぱり部屋に他の誰かがいるな。なんだ、こんな時間からエロビデオでも観てたのか? や、それだと俺を拒否る理由にならないか。
 ってか、どっかで聞いたような声だな?

「香坂、なにしてんだ?」
「来んな、来んなよ!? 下で待っててくれ、こっち来んな!」

そう聞く俺に、香坂から妙に必死な返事が戻る。

「それ、すげぇ前振りっぽく聞こえない?」

そんな香坂じゃあない声も聞こえてきて、マジでなにやってんだアイツ?

「ちょい、今取り込み中なんでぇ~!」

とか思っていたら、香坂じゃない方が叫ぶ。とにかく、今踏み込んでもらいたくないっぽいし、こっちだって別に「踏み込むなら今だ!」っていうわけでもない。まあエロビデオ鑑賞会だったら、後でからかってやればいい話だ。

「わぁった、下にいるからなぁ」

というわけでそう言ってから店に戻ると、すぐに降りてきた俺を見た兄さんが「あちゃあ」って顔をした。

「そういや彼氏が来てたか、忘れてた」

どうやら兄さんは香坂に客が来ていることを忘れていたらしい。

「まあ待ってりゃあ降りてくるさ。コーヒー飲むか?」
「あ、いただきます」

こうして事情はわからないまま、それから結構な時間を待つことになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元ベータ後天性オメガ

桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。 ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。 主人公(受) 17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。 ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。 藤宮春樹(ふじみやはるき) 友人兼ライバル(攻) 金髪イケメン身長182cm ベータを偽っているアルファ 名前決まりました(1月26日) 決まるまではナナシくん‥。 大上礼央(おおかみれお) 名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥ ⭐︎コメント受付中 前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。 宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

運命の番なのに別れちゃったんですか?

雷尾
BL
いくら運命の番でも、相手に恋人やパートナーがいる人を奪うのは違うんじゃないですかね。と言う話。 途中美形の方がそうじゃなくなりますが、また美形に戻りますのでご容赦ください。 最後まで頑張って読んでもらえたら、それなりに救いはある話だと思います。

どうも。チートαの運命の番、やらせてもらってます。

Q.➽
BL
アラフォーおっさんΩの一人語りで話が進みます。 典型的、屑には天誅話。 突発的な手慰みショートショート。

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

暑がりになったのはお前のせいかっ

わさび
BL
ただのβである僕は最近身体の調子が悪い なんでだろう? そんな僕の隣には今日も光り輝くαの幼馴染、空がいた

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

無自覚な

ネオン
BL
小さい頃に母が再婚した相手には連れ子がいた。 1つ上の義兄と1つ下の義弟、どちらも幼いながらに イケメンで運動もでき勉強もできる完璧な義兄弟だった。 それに比べて僕は周りの同級生や1つ下の義弟よりも小さくて いじめられやすく、母に教えられた料理や裁縫以外 何をやっても平凡だった。 そんな僕も花の高校2年生、1年生の頃と変わらず平和に過ごしてる それに比べて義兄弟達は学校で知らない人はいない そんな存在にまで上り積めていた。 こんな僕でも優しくしてくれる義兄と 僕のことを嫌ってる義弟。 でも最近みんなの様子が変で困ってます 無自覚美少年主人公が義兄弟や周りに愛される話です。

【完結】選ばれない僕の生きる道

谷絵 ちぐり
BL
三度、婚約解消された僕。 選ばれない僕が幸せを選ぶ話。 ※地名などは架空(と作者が思ってる)のものです ※設定は独自のものです

処理中です...