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14 おかしな友人 side 戸山
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俺、戸山はその日野菜の配達をしていた。
段ボールを持って訪ねたのは、高校時代につるんでいた香坂が働いているバーだ。ここはアイツの従兄の兄さんがやっている店らしく、住み込みで働いているんだと。どういうわけだか高校に入るなり家族と折り合いが悪くなった香坂が、卒業して居所がなくなったのを、その兄さんに拾われた形だ。
俺は香坂と一番の友人だっていう自信がある。そんなアイツを応援したい気持ちもあって、家が農家なもんで、こうして市場に卸すのに適さない規格外野菜を持ってきていた。俺の家の方は少しでも金になってよし、店の方は格安で野菜が手に入ってよしってわけだ。
「どうも~、お世話になります」
「おぉ、サンキューな」
俺が店内を覗けば、中には店主の兄さんだけがいて、ボーッと煙草を吸っていた。
「香坂います?」
「お~、まだ上だ。勝手に上がれや」
「うっす、顔見せてきます」
住居であるビルの二階へ階段を上っていくと、呼び鈴鳴らそうとして玄関ドアが開いていることに気付く。あの兄さん、鍵かけ忘れる癖あるみたいなんだよな、不用心じゃね? っていうか、玄関に見慣れないスニーカーがある。香坂のでもあの兄さんのでもないよな、趣味じゃないっぽいし。誰か来てんのか? 兄さんの知り合いとかか?
「おぅい、香坂ぁ~?」
とりあえず、俺は奥に向かって大声で呼んでみる。
「ぁあっ!?」
そうするとなんか、変な声がした。
あ? なにやってんだ?
それに香坂じゃない声がして、やっぱり部屋に他の誰かがいるな。なんだ、こんな時間からエロビデオでも観てたのか? や、それだと俺を拒否る理由にならないか。
ってか、どっかで聞いたような声だな?
「香坂、なにしてんだ?」
「来んな、来んなよ!? 下で待っててくれ、こっち来んな!」
そう聞く俺に、香坂から妙に必死な返事が戻る。
「それ、すげぇ前振りっぽく聞こえない?」
そんな香坂じゃあない声も聞こえてきて、マジでなにやってんだアイツ?
「ちょい、今取り込み中なんでぇ~!」
とか思っていたら、香坂じゃない方が叫ぶ。とにかく、今踏み込んでもらいたくないっぽいし、こっちだって別に「踏み込むなら今だ!」っていうわけでもない。まあエロビデオ鑑賞会だったら、後でからかってやればいい話だ。
「わぁった、下にいるからなぁ」
というわけでそう言ってから店に戻ると、すぐに降りてきた俺を見た兄さんが「あちゃあ」って顔をした。
「そういや彼氏が来てたか、忘れてた」
どうやら兄さんは香坂に客が来ていることを忘れていたらしい。
「まあ待ってりゃあ降りてくるさ。コーヒー飲むか?」
「あ、いただきます」
こうして事情はわからないまま、それから結構な時間を待つことになった。
段ボールを持って訪ねたのは、高校時代につるんでいた香坂が働いているバーだ。ここはアイツの従兄の兄さんがやっている店らしく、住み込みで働いているんだと。どういうわけだか高校に入るなり家族と折り合いが悪くなった香坂が、卒業して居所がなくなったのを、その兄さんに拾われた形だ。
俺は香坂と一番の友人だっていう自信がある。そんなアイツを応援したい気持ちもあって、家が農家なもんで、こうして市場に卸すのに適さない規格外野菜を持ってきていた。俺の家の方は少しでも金になってよし、店の方は格安で野菜が手に入ってよしってわけだ。
「どうも~、お世話になります」
「おぉ、サンキューな」
俺が店内を覗けば、中には店主の兄さんだけがいて、ボーッと煙草を吸っていた。
「香坂います?」
「お~、まだ上だ。勝手に上がれや」
「うっす、顔見せてきます」
住居であるビルの二階へ階段を上っていくと、呼び鈴鳴らそうとして玄関ドアが開いていることに気付く。あの兄さん、鍵かけ忘れる癖あるみたいなんだよな、不用心じゃね? っていうか、玄関に見慣れないスニーカーがある。香坂のでもあの兄さんのでもないよな、趣味じゃないっぽいし。誰か来てんのか? 兄さんの知り合いとかか?
「おぅい、香坂ぁ~?」
とりあえず、俺は奥に向かって大声で呼んでみる。
「ぁあっ!?」
そうするとなんか、変な声がした。
あ? なにやってんだ?
それに香坂じゃない声がして、やっぱり部屋に他の誰かがいるな。なんだ、こんな時間からエロビデオでも観てたのか? や、それだと俺を拒否る理由にならないか。
ってか、どっかで聞いたような声だな?
「香坂、なにしてんだ?」
「来んな、来んなよ!? 下で待っててくれ、こっち来んな!」
そう聞く俺に、香坂から妙に必死な返事が戻る。
「それ、すげぇ前振りっぽく聞こえない?」
そんな香坂じゃあない声も聞こえてきて、マジでなにやってんだアイツ?
「ちょい、今取り込み中なんでぇ~!」
とか思っていたら、香坂じゃない方が叫ぶ。とにかく、今踏み込んでもらいたくないっぽいし、こっちだって別に「踏み込むなら今だ!」っていうわけでもない。まあエロビデオ鑑賞会だったら、後でからかってやればいい話だ。
「わぁった、下にいるからなぁ」
というわけでそう言ってから店に戻ると、すぐに降りてきた俺を見た兄さんが「あちゃあ」って顔をした。
「そういや彼氏が来てたか、忘れてた」
どうやら兄さんは香坂に客が来ていることを忘れていたらしい。
「まあ待ってりゃあ降りてくるさ。コーヒー飲むか?」
「あ、いただきます」
こうして事情はわからないまま、それから結構な時間を待つことになった。
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