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10 そういうことらしい
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「そっかぁ、怜のはそんな匂いなんだな~。今もする?」
「え、ヒート中ほどじゃあなくても、ほんのり香ってる……ますよね?」
聞かれたことに答えつつも、なんか香坂も従兄さんも変な雰囲気なもんだから、僕はなにかいけないことを言ってしまったのだろうか? え、Ωへのハラスメントだった!?
慌てる僕の前で、香坂の顔がだんだん真っ赤になっていく。
「おま……美味そうって、変なことを言うと思ったら、そういうことだったのか!?」
「そういうことって、ああ。蓮華の花のハチミツって美味しいよねっていうカンジ?」
聞かれたから答えたのに、香坂がテーブルに沈んでいた。え、なに?
戸惑いしかない僕をよそに、従兄さんは爆笑している。
「いやぁ、高校入学して怜をΩに目覚めさせたαたる前島クンだもんな、そりゃあ相性悪いはずないわなぁ~! もう運命じゃね? なぁ?」
「ばっ、それ言うな!」
急に香坂が顔を上げて従兄さんに口止めする。けどそれ、間に合ってないよね? っていうか、えっ?
「怜なぁ、こういうのは変に隠す方が拗れるんだぜ? 前島クンだって知りたかったろ? コイツな、Ωとしてはちょっと変わり種なんだ。後天性のΩでフェロモンの匂いがしない。俺もαだけど、怜のはヒート中でもまったく匂わないな。じゃねぇといくら弟分でも、ヒート中のΩの世話なんざ焼かねぇって」
「……えぇ?」
「相性がいいと、ほんのちょっとは香るっぽいけれど、なんの匂いかなんて誰からも聞けたことなかったな。そうかぁ、蓮華の花かぁ~」
従兄さんの話が衝撃過ぎて、頭にすんなり入らない。本当なのかと香坂を見れば、こちらも観念したように口を開く。
「先生にはちょっとだけ話した。Ω性が完全に覚醒したのは、高校入学してすぐ。隣の席の馬鹿αのフェロモンがキッツいのに当てられちまったせいだ。だからあの時お前が俺のフェロモンを嗅げなかったのは、当たり前なんだよ」
「ええぇ!?」
僕、さっきから「え」しか言えてない。あ、「まともな」発言はそういう事情のことか! フェロモンが匂わないΩなんて、っていう話だった!? いや、そんなの僕にはわかんなかったし!
けどそういえば、入学早々香坂が早退した時があったな。既に不良感があった香坂だから、周りは「早くもサボリなんてすげぇな」っていう反応だったっけ。ひょっとしてマジで具合が悪かった? そして早々に席替えがあって香坂と離れたのは、ひょっとして僕が原因?
あれ、僕ってなんかテロみたいなことをやらかして、すっとぼけていた感じになってないか? なんか感じ悪い奴じゃないか? それにひょっとして香坂は香りが強めの整髪剤とか使っていたの、ヤンキー臭だからじゃなくて、フェロモン臭をごまかすため!?
そりゃあね、そんなテロをやらかした相手なんて、常に睨んでいて当然だよな! あ~納得納得! なるほど、香坂が僕をαだって断定できていたのはそういう理由か。色々腑に落ちたわ。けどそれよりなにより。
「無責任テロリストで、まことに申し訳なかったです!」
「テロっていうか、怜限定の爆弾魔な」
ドガン! とテーブルに頭突きする勢いで頭を下げた僕に、従兄さんがツッコむ。それ、笑えないっすよ従兄さん……。
「ってことで怜、投げやりにならないで、ちゃんと二人で話し合え」
従兄さんは話をまとめたような引っかき回したような感じで、さっさと離れていった。え、ここでまた二人だけになるの?
香坂は顔を首まで真っ赤にしたまま、顔を上げないでいる。うむ、この空気をなんとかするのは、僕だな。
「なぁ香坂、僕らってほぼなんも知らない同士じゃん?」
「……まあな」
まずは現状を確認すると、香坂も小声で同意した。
「だからまず、お互いを知ってみないか? 身体の反応が先だったし、お互い流された感があるけどさ。香坂って美味しそうだし、案外可愛いし、アリ寄りな相手だと思うよ?」
「あ゛!?」
けれどその現状確認を続けると、香坂が変な声を出した。
「ぶっは!」
そしてまたもや従兄さんが笑っている。あれ、そんな変なことは言ってないよね? 事実だよ?
「香坂って口と態度が合わないことが多いし、気持ちいいことに流されちゃうし、キスされるの好きだし、あとは――」
「待て、まてまてまて!」
「とにかくそんなわけだから、セックス込みのお友達からで……あれ、これってセフレっていうのか?」
「知らねぇし!?」
香坂が泣きそうにしているけれど、あれ、どうしたんだ? 従兄さんは笑い死にしそうに腹抱えているし。なにがあった?
「お前、実は天然野郎かよ!?」
「あ、それよく言われる」
香坂の唐突なツッコミには、否定する要素はないかな。
「え、ヒート中ほどじゃあなくても、ほんのり香ってる……ますよね?」
聞かれたことに答えつつも、なんか香坂も従兄さんも変な雰囲気なもんだから、僕はなにかいけないことを言ってしまったのだろうか? え、Ωへのハラスメントだった!?
慌てる僕の前で、香坂の顔がだんだん真っ赤になっていく。
「おま……美味そうって、変なことを言うと思ったら、そういうことだったのか!?」
「そういうことって、ああ。蓮華の花のハチミツって美味しいよねっていうカンジ?」
聞かれたから答えたのに、香坂がテーブルに沈んでいた。え、なに?
戸惑いしかない僕をよそに、従兄さんは爆笑している。
「いやぁ、高校入学して怜をΩに目覚めさせたαたる前島クンだもんな、そりゃあ相性悪いはずないわなぁ~! もう運命じゃね? なぁ?」
「ばっ、それ言うな!」
急に香坂が顔を上げて従兄さんに口止めする。けどそれ、間に合ってないよね? っていうか、えっ?
「怜なぁ、こういうのは変に隠す方が拗れるんだぜ? 前島クンだって知りたかったろ? コイツな、Ωとしてはちょっと変わり種なんだ。後天性のΩでフェロモンの匂いがしない。俺もαだけど、怜のはヒート中でもまったく匂わないな。じゃねぇといくら弟分でも、ヒート中のΩの世話なんざ焼かねぇって」
「……えぇ?」
「相性がいいと、ほんのちょっとは香るっぽいけれど、なんの匂いかなんて誰からも聞けたことなかったな。そうかぁ、蓮華の花かぁ~」
従兄さんの話が衝撃過ぎて、頭にすんなり入らない。本当なのかと香坂を見れば、こちらも観念したように口を開く。
「先生にはちょっとだけ話した。Ω性が完全に覚醒したのは、高校入学してすぐ。隣の席の馬鹿αのフェロモンがキッツいのに当てられちまったせいだ。だからあの時お前が俺のフェロモンを嗅げなかったのは、当たり前なんだよ」
「ええぇ!?」
僕、さっきから「え」しか言えてない。あ、「まともな」発言はそういう事情のことか! フェロモンが匂わないΩなんて、っていう話だった!? いや、そんなの僕にはわかんなかったし!
けどそういえば、入学早々香坂が早退した時があったな。既に不良感があった香坂だから、周りは「早くもサボリなんてすげぇな」っていう反応だったっけ。ひょっとしてマジで具合が悪かった? そして早々に席替えがあって香坂と離れたのは、ひょっとして僕が原因?
あれ、僕ってなんかテロみたいなことをやらかして、すっとぼけていた感じになってないか? なんか感じ悪い奴じゃないか? それにひょっとして香坂は香りが強めの整髪剤とか使っていたの、ヤンキー臭だからじゃなくて、フェロモン臭をごまかすため!?
そりゃあね、そんなテロをやらかした相手なんて、常に睨んでいて当然だよな! あ~納得納得! なるほど、香坂が僕をαだって断定できていたのはそういう理由か。色々腑に落ちたわ。けどそれよりなにより。
「無責任テロリストで、まことに申し訳なかったです!」
「テロっていうか、怜限定の爆弾魔な」
ドガン! とテーブルに頭突きする勢いで頭を下げた僕に、従兄さんがツッコむ。それ、笑えないっすよ従兄さん……。
「ってことで怜、投げやりにならないで、ちゃんと二人で話し合え」
従兄さんは話をまとめたような引っかき回したような感じで、さっさと離れていった。え、ここでまた二人だけになるの?
香坂は顔を首まで真っ赤にしたまま、顔を上げないでいる。うむ、この空気をなんとかするのは、僕だな。
「なぁ香坂、僕らってほぼなんも知らない同士じゃん?」
「……まあな」
まずは現状を確認すると、香坂も小声で同意した。
「だからまず、お互いを知ってみないか? 身体の反応が先だったし、お互い流された感があるけどさ。香坂って美味しそうだし、案外可愛いし、アリ寄りな相手だと思うよ?」
「あ゛!?」
けれどその現状確認を続けると、香坂が変な声を出した。
「ぶっは!」
そしてまたもや従兄さんが笑っている。あれ、そんな変なことは言ってないよね? 事実だよ?
「香坂って口と態度が合わないことが多いし、気持ちいいことに流されちゃうし、キスされるの好きだし、あとは――」
「待て、まてまてまて!」
「とにかくそんなわけだから、セックス込みのお友達からで……あれ、これってセフレっていうのか?」
「知らねぇし!?」
香坂が泣きそうにしているけれど、あれ、どうしたんだ? 従兄さんは笑い死にしそうに腹抱えているし。なにがあった?
「お前、実は天然野郎かよ!?」
「あ、それよく言われる」
香坂の唐突なツッコミには、否定する要素はないかな。
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