ヤンデレ不死鳥の恩返し

リナ

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五話

★壁ドン

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 ユウキのおかげで買い出しは順調に進んだ。数え切れない程の商品からサクサク探していくユウキ。流石である。

「三番目のはこれだよー。これもメモにあったよね?うんうん順調!」

 あっという間に買い物かごに集まっていく。さっきまでの苦労はなんだったのか。

「あ、この香水おススメ。ライって香水つける?」
「いや。会社員の時はつけてたけど」
「じゃあ今度誕生日プレゼントであげるよ!誕生日いつだっけ?俺大好きなんだよね~この匂い~」
「今時の高校生は香水つけんのか…」
「高級じゃなかったらつけるんじゃない?知らないけど。で、誕生日いつ?」
「…なんで教えねえといけないんだ」
「いいじゃん教えてよ?ねえねえねえねえ(エンドレス)」
「ああもう!八月八日だって!!」

 半ギレで言うとユウキは嬉しそうに「おっけー」と頷いた。
 (ユウキのやつ、俺の個人情報をどんどん握っていくんだが…)
 名前も誕生日も店も特定されてるし悪用されないよう祈るばかりだが…不安でしかない。
 (しかしあれだな)
 こうしてると普通の暮らしに戻った感じがする。水族館は普段から行かなかった所で逆にイベント感が強ったが、ボンキは違う。何度も行ってたし日常感がある。やけに人間味を感じられた。
 (真人と行って以来だしな)
 こういう普通の生活が大分前のことに思える。

「えへへ、なんかライとデートしてるみたいだな~」

 ユウキは買い物カゴにおやつを追加しながら嬉しそうに笑った。俺とは違う内容で感慨深げにしている。

「ねえ、このまま俺の家で菓子パしようよ」
「勉強はどうした。つーか監禁された家にお菓子ごときでつられると思うか?」
「あはは、もうしないって~」

 絶対嘘だな。帰さないぞと顔にかいてある。

「ちぇ、信用がないなあ…」
「当たり前だろうが。やられたのが俺じゃなかったら、お前の顔見たら逃げてくか今すぐ通報してると思うぜ」
「つまりライと俺は相性バッチリってことか!」
「鋼メンタルがここにも…」

 フィンといいユウキといい幻獣はメンタルが強すぎる。現代社会の繊細さを少しは見習ってほしい。
 (いや、俺らが見習うべきなのか…)

 どんっ

 肩に何かがぶつかる。振り返れば学生達だった。ヤンチャそうな顔をしていたが俺とユウキの顔をみて舌打ちして去っていく。

「…今の、ユウキと同じ制服だったな」
「うん。不良で有名な奴らだ」
「知り合いか?」
「ううん。クラスメイトが一人いたけど喋ったこともないよ。流石に俺には絡んでこないしね」
「不良でもヤクザの子は恐れるか」
「そりゃそうっしょ」

 学生達はユウキを見てすぐに顔色を変えた。校内でも距離を置かれているのは本当なようだ。ユウキ自身は慣れてるのか何でもないという顔である。

「それより、ライ。あいつらのカゴの中身見た?」
「え、見てねえけど」

 流石の洞察力だ。感心してるとユウキは腕を組んで考え込む。

「キャンプ用の折り畳みナイフが入ってたんだよね。物騒じゃない?」
「っ…!ナイフは学生に買えねえだろ」
「わかってないんだと思うけど。問題はそれがどうして必要なのか、だよねえ」

 お互い見つめ合いつつ顔をしかめた。嫌な予感はする。だが追いかけて「何に使うんだ」って聞くのもおかしいわけで。
 (ただ単にキャンプするだけって事もあるしな)
 もどかしいが仕方ない。

「見なかったことにするか…どうせ未成年じゃ買えねえしな」
「うんうん、そうしよ」
「一応明日学校でトラブルがなかったか聞いとけよ」
「ええーなんでさーどうでもいい奴らにめんどいよ~」
「クラスメイトがいるんだろ」

 ユウキの家が胸を張れる家業じゃないのはわかる。しかし、そのせいでユウキが青春を送れないのはおかしい。誰だって人生を楽しむ権利はあるはずだ。自分が借金でいじめられてたこともあってユウキの事は他人事と思えなかった。

「今すれ違ったのも何かの縁だし。これをきっかけに仲良くなったりするかもしれねえだろ」
「ないない。俺はライと仲良くなれればそれでいいーっいてててて」
「自分から遠ざけるな」

 俺はユウキと年が離れすぎてるし友達役も恋人役もやってやれない。やけに懐かれてしまったが、ぶっちゃけ俺が近づけば近づく程ユウキにとって悪影響なわけで。

「ライ、俺の心配してくれてるの?」
「…まあな」
「ほんとやさしーね」

 にししと嬉しそうに笑う。打算のない笑顔。こうしてると年相応と言う感じがして可愛さがある。
 (ユウキのやつ、癖はあるけど普通に付き合う分には良い奴だろうしな…)
 何かきっかけがあればクラスメイトとも打ち解けると思うんだが。

「仕方ないなあ。ちょっと気にしてみるかな」
「それがいいー」

 ブーブーブー

 バイブ音がする。途端にげげっと顔を歪めるユウキ。

「おい、鳴ってるぞ」
「え?何が?聞き間違いじゃない?」
「俺はスマホ持ってねえんだからお前しかいないだろうが」
「ええっ?!ライ!スマホ持ってないの!今日は持ってきてないとかでなく?!」
「違う、そもそも持ってねえ」
「はあ~~~??」

 現代社会でまじかという顔だ。わかる。気持ちはわかるが、スナックに来た時荷物もろとも失ったんだから仕方ない。新しく作ろうにも身分証がなければ作れないわけで。
 (絶対あった方がいいのはわかってるが…)
 こればかりはグレイやフィンでもどうしようもない。幻獣パワーの敗北である。

「じゃあこれあげるよ」

 ユウキが思いついたように取り出した。バイブが鳴ってない方のスマホが鞄から出てくる。カバーやアクセサリーがついておらず無機質な状態だった。

「こっちはダミー用っていうか、緊急時用のなんだけど、ほとんど使ってないしライにあげる」
「いやいやもらえねえから」
「気にしない気にしない。ライにあげたって言ったら親父も納得するし、喜んで電話かけてくるよ」
「それも困るわ」
「んもー頑固だなあ。今どきスマホないなんて困るっしょ?元からない奴ならまだしもライは現代人なんだし」
「だからってユウキのをもらう事にはならねえって」
「2台持ちしてるから俺は特に困らないよ?電話料金も週一で俺と電話してくれたらチャラでいいし」
「いやいやいや」

 とにかくいいからお前はもう一つのスマホをとれ。バイブ音(着信)が延々と鳴っていて頭がおかしくなりそうだ。

「わかったよもうー」

 渋々ユウキは電話をとった。すぐに顔を強張らせる。話し声は聞こえないが怒声のようなものは聞こえてくる。たぶん親父さんだろう。俺と目があったユウキは耳を塞ぐジェスチャーをして「うるさいねえ」と口パクで笑ってみせた。いや笑ってる場合か。

「はいはいわかったーすぐ帰るからー!」

 ピッ

「はあ~!親父のやつあれから鬼教官みたいになってさー。勉強も一族の事も付きっきりで叩き込んでくるし遊ぶ暇もないっての」
「いいじゃねえか。親父さんとの時間なんて今までなかったんだろ?しっかり教えてもらえよ」
「ええー…ライとしたかったのに…」
「俺となんていつでもやれる」
「でも忙しいとか嘘つかれてまた放っておかれるかもだし」
「嘘じゃねえって」
「じゃあこのスマホ受け取って。そうじゃないと俺帰らないから!受け取るまでストーカーするよ!」
「堂々と犯罪宣言するな…ったく」

 無理矢理押し付けられる。俺は少し考えた後、ユウキのスマホを受け取った。

「わかった。次勉強教える時に返すってことでいいな」
「うん!それでいいよ!人質ってことで」
「言い方…」

 最後の最後までヤクザ流が抜けない。ユウキらしいと笑ってしまう自分も少し毒されてきてるのだろう。
 (やれやれ…)
 俺たちは会計を終わらせてボンキを出た。駅に向かいながら軽く話した後解散するのだった。


 ***


 チリリーン

 店の扉を開けるとフィンが待ち構えていた。

「おかえり、ライ」

 ニコニコと笑顔を張り付けていたが何やら怒っているらしい。目が笑っていない。

「ただいま…フィン、何かあったのか?」
「何もなかったから怒ってるのだ」
「へ」
「“昼にな”って言ったのに…」
「ああ…そういうことか」

 俺が声をかけずに出掛けた事に拗ねているらしい。確かに「また昼にな」とは言ったが。いい年した大人が出掛ける度に「●●に行ってくるよ」なんて声をかけるのも変だろう。しかしフィンにとっては大事な事だったのかやけにご機嫌斜めである。

「今日は昼からライとすごそうと思ってたのに…」
「悪かったって。グレイのメモを見つけて買い出しに行ってたんだよ」
「買い出しなら私が!」
「化粧品関係だからフィンじゃわからないだろ」
「うむ…それは無力だな…」

 買い出し袋を見て納得してくれた。ついでにユウキの事も頭に浮かんだが、ボンキではメデューサ店員にも遭遇した(殺されかけた)し不安にさせるだけだ。買い出しに行ったという報告だけで終わらせておく。

「グレイはまだ起きてこないのか?」
「ああ、先程声をかけたが体調が優れないらしい。ギリギリまで寝ると言っていた」

 体調悪いのか。珍しい。

「じゃあ、なんか体に優しいの作るか」

 お粥なら材料はあるしすぐにできる。起きるのがいつか分からない為、準備だけでもしておこう。カウンターで支度してるとフィンが横から覗き込んできた。

「ライ、体に優しいのとはなんだ?」
「消化に優しい食べ物を用意するんだよ。お粥とかフルーツとか」
「人間はそういう事をするのか。食事で帳尻を合わせるというのは独自の考え方で興味深いな」
「フィンも腕が本調子じゃないんだし栄養のあるものを食べた方がいいぜ」
「ふむ。栄養のあるものか」

 じーっと見つめられる。

「おい、食い物の話だぞ」
「…ライを食べたら元気になる気がする」
「食べるってそういうことじゃないからな。聞いてるのか?おいっ」

 じりじりと近付いてくるので俺もその分だけ後ろに下がった。

 とんっ

 背中が壁にぶつかる。逃げ場のなくなった俺にフィンが顔を近付けてきた。

「ち、近いって…」
「横でライが寝てるのに毎日我慢させられて辛かったのだぞ」

 (我慢っていうかそもそもそれが普通なんだって)
 水族館のあの日は色々あってイチャイチャに至ったが。本来の俺たちはそういう関係でないはず。俺のいいたいことがわかったのかフィンはムッとしていた。

「私はあの日の事を一夜の過ちとは思ってない」
「っ…じゃあ何だって言うんだよ」
「恋人になるための段階を踏んだ日、だな」
「恋びっ…!!」

 続きは照れて言えなかった。戸惑っているとフィンが顔を寄せ囁いてくる。

「私は本気だぞ」
「わかってる…って…」

 フィンが遊びで言ってるわけではないのはわかる。だが戸惑うこちらの気持ちもわかってほしい。

「ライ」
「…なんだよ」

 オレンジの瞳と見つめ合う。店の暗めの照明の中、宝石のように光るその瞳は息をのむほど美しい。白金の髪、長い睫、端正な顔立ち。全てが作り物のようで、息をしている事が時々信じられなくなる。
 (ほんと綺麗な顔だな)
 無意識に頬に触れようと手を伸ばしていた。それを掴まれ引き寄せられる。

 ちゅ

 手の甲に口付けてきた。

「ー!!」
「私だけを見てくれ」
「あんたなあ…!俺があんたに溺れて…!人間との恋愛に戻れなくなったらどうする!」
「責任はとる」
「はあ??どうやっ…んんっ」

 文句を飲み込むように唇を重ねられた。始まりは優しいキスだったが、段々と深いものになっていく。舌が絡みあい、頭の奥が溶けていくような感覚になる。

「ンンっ、んっ、はっ…フィ、ンっ、~っ!まっ…!」

 壁ドンのような姿勢で逃げ場がない。与えられるまま受けるしかない。

「んんっ…!はっ、んう…ンッ、むぅ…!!」

 顔を背けようとしたが手で固定されて更に口を開けさせられる。優しいフィンでは考えられないほど強引で雄を感じる行為だ。ゾクリと鳥肌が立つ。
 (くそっ…)
 それに興奮してる自分もどうかしていると思った。

 するっ

「!!」

 フィンの手が服の中に入ってきた。まさかここでやるつもりかと目を見開く。フィンは落ち着かせるように優しく口付けてきた。体を撫でる手は止まらず心臓が早鐘を打つ。

「ンッ、フィンっ、あっ、ダメだ、って」
「少し味見するだけだ」
「俺は、食いもんじゃっ、んんっ、ねえっ!」
「こんなに美味しそうなのにか?」

 服をめくりあげながら囁いてくる。低い声があの日を思い出させる。欲にのまれたあの日の事を。期待するように全身が熱くなった。

「ハア、はっ…」

 俺を見下ろすフィンの瞳にもあの時と同じ熱が灯ってる。
 (やばい)
 止めなきゃいけないのに、目の前の気持ちよさが自制心を霧散させていく。キスも、熱い掌も、声も、吐息もすべてが気持ちいい。
 (もっとほしい)
 体がどんどん強欲になっていく。
 (でもダメだ…!)

「ふぃ、んっ…ここ、店、っ…だから、っ!」

 必死に理性をかき集めて目の前の体を押した。“グレイの店"という言葉にフィンの手も止まる。

「…そうだった、な」

 熱を持て余すように深く息を吐いた後こちらを見た。

「すまない。グレイの大切な店を汚すわけにはいかないな」
「ああ…下手したら…はあ、殺されるぞ」
「うむ。わかってはいたが…久しぶりに見たライが愛おしくてつい」
「ついって…」

 久しぶりっていってもほんの数時間だろうに。呆れたように肩をすくめてるとフィンが真剣な顔で見つめてくる。

「今夜続きをしても?」
「!!」

 直球の誘いに言葉が詰まる。寸止めにされたのはこちらも同じだ。
 (続きって…セックスって事だよな…)
 俺らは付き合ってるわけじゃない。だが逆に言うと俺もフィンも特定の相手がいるわけじゃない。俺らがイチャついたところで誰の迷惑にもならない。なら欲望に負けてもいいのでは?そんな悪魔の囁きが聞こえた気がする。

 こくり

 甘い誘惑と体に残った熱のせいで思考するより先に頷いていた。

「少し、だけなら…」
「!」

 フィンは目を輝かせた。その素直すぎる姿に内心笑みが溢れるのだった。




「オハヨ~ウ~」

 お粥を用意して開店準備を終えた頃、グレイが顔をだしてきた。本調子じゃないのか気だるげな様子で椅子に腰かけた。

「…立って仕事するのはキツそうだな」

 お粥を差し出す。少し冷ましてあるのですぐ食べられる状態だ。グレイは礼をいった後少しずつ口に入れていく。

「まあね。結構しんどいワ」
「今日は店閉めといた方がいいんじゃねえの」
「いえ、ヤるワヨ。明日は休業日の予定だしなんとか乗り越えてみせるワ」
「でもな…」
「それに今日は団体さんがいるモノ!儲かる日ヨ!!!」
「いや、気持ちはわかるが」

 グレイが動けない状態で店が回るとは思えない。今日は団体客以外にも予約客が多い。常に満席が予想される。俺が動くにしても物理的に人員が足りないのだ。

「では私が入ろう」
「えっ」
「あら」

 フィンが掃除道具を片付けながら言った。

「あんたわかってんの?食事を運ぶだけじゃないのヨ」

 スナックは話をしたり聞いてもらったりのコミュニケーションが大事なの、と言うグレイ。なんだかんだグレイはフィンを店に立たせる(接客など)事はなかった。買い出しや店の外のパトロール、荒事になった時の仲裁など、肉体労働が多かった。
 (なんでグレイはやらしたくねんだ…?)
 よくわからないが、俺は賛成だったのでフィンの肩を持つことにした。

「いいじゃねえか。猫の手も借りたい状況なんだしフィンにやらせてみようぜ」
「でもネエ…」
「あんたも横にいるんだし俺もなるべく動くから。な?」
「……はあ、わかったワ」

 じゃあお願いするワネと渋々頷いた。



 チリリーン

「いらっしゃいませ」

 開店直後からスナックは大繁盛で、ばたばたと注文をこなしていく。俺の担当は飲み物&軽食作りでカウンター席の接客もやっていた。フィンはといえば配膳と全体的な接客があったが

「お客様、ご注文はお決まりですか?」
「ビールでおねが~い!あっお兄さんと飲みたいな~」
「お供します」
「きゃー!王子様!イケメン!」

 元々人当りがいいフィンは客(特にグレイの友達たち)に好評だった。

「おい、兄ちゃん!腕相撲しねえか!」
「受けて立ちましょう」
「いいねえ!うおっ、つ、強いじゃねえか!」
「この程度ですか?」
「言うねえ!うおおおお!もっと酒もってこい!!」

 男客にもなんだかんだ好かれてるし、こんなに適した人材もなかなかいないだろうと思った。少なくとも俺よりはよっぽど接客に向いてる。
 (あえて接客から遠ざける理由があったのか?)
 グレイを見ると物憂げな顔をしている。少し手が空いた時にグレイに声をかけにいった。ちなみにグレイはカウンターの常連さんの相手をしている。

「グレイ大丈夫か?」
「平気ヨ。座ってると大分楽ダカラ。あんた達のおかげね」
「…あんま無理するなよ」
「ふふ、優しいわネ。あたしまで惚れされる気?」

 泥沼よ?と冗談交じりに言われ苦笑いで応える。フィンだけでも混乱してるのにグレイもなんて勘弁してほしい。

「化粧品買ってきてくれたのあんたデショ。今日で使いきっちゃうのあったし本当に助かったワ」

 ありがとうと茶化さずお礼を言ってくる。風邪をひいてるからか少し素直な気がする。調子が狂う。

「全然見つからなくて諦めかけたけどな」
「あはっ目に浮かぶワ」

 煙草をふかしながらフィンの方を見た。何を考えているのかわからない横顔だった。

「ねえ、あんたはフィンの事、どう思ってル?」
「え…?」
「ちょっとしたアンケートよ。深い意味はナイワ」
「どうって…仕事仲間…で、いい奴かなって感じだけど」

 同室にあてがった本人だし、グレイも俺たちの関係性(不安定さ)は知ってると思うが今更何を聞きたいのだろう。

「ライの事を思って…忠告するケド……あまりあれに近づきすぎると火傷するわヨ」
「…?」

 フィンの事を名前でなくあれと言った。珍しい言い方だ。その違和感に戸惑っていると

「何でもないワ。風邪で変なこと言っちゃったわネ」

 ふふ、と笑ってグレイはいつもの調子に戻った。なんとなく違和感が残ったが風邪をひいてる時は誰だっておかしな事をいうものだ。あまり気にしないようにした。
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