ヤンデレ不死鳥の恩返し

リナ

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三話

化け狐

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 ***


「いらっしゃいませ、当施設は前払いでの取り扱いとなっております」
「じゃあ一時間で、この部屋お願いします」
「お、おい、真人ここって…」
「しー静かに」

 支払いを終えて廊下を進むと、少しくすんだ白い壁紙の部屋に案内される。小さめのソファとダブルベッド、そしてガラス張りのシャワー室がある。俺と真人は入り口を進んですぐのソファの近くで立ち止まった。
 (なんで真人とラブホに…)
 ここまでの道中ずっと混乱していた。真人は一体何がしたいんだ。静かに話せる場所に移動したかったのだろうか。

「…」
「…」

 お互い黙っているせいで、沈黙が刺さるようだった。チラリと横をみれば真人はベッドに移動していた。真人が腰掛けたことでギシリと音が鳴った。その音だけでも反応してしまう。

「うん、結構きれーな部屋じゃん」
「…」
「ちょっと。そっちから声かけといてだんまりはやめてくれる?真人~真人~って泣いてた癖に」
「…泣いてねえよ」

 いくら混乱していたとはいえ、泣いてはいないはず。真人は肩をすくめてベッドに腰かけた。

「あんなに目が潤んでたら泣いてるようなもんでしょ。やけに色っぽくて、その目見ただけでたっちゃった」
「はあ?!ちょっ…おい!」

 ぐいっと手を引かれる。バランスを崩した俺は真人を押し倒すようにベッドへ倒れた。

 ぎしっ

 見つめ合う。真人の顔も声も体も…記憶の中のものと一切変わらなかった。俺が知ってる真人が目の前にいる。それだけで心が大きく揺れ動いた。触れたい。触れてほしい。愛してほしい。終わったはずの関係に、浅ましい感情が溢れでる。
 (自分で自分が嫌になる)
 もう一ヶ月以上経つのに未練タラタラじゃないか。理性は残ってるはずなのに体が真人から離れようとしない。自分に吐き気がする。最悪だ。

「ねえ、少しだけ触れ合おうよ。ここなら誰もみてない…咎めてこないよ」

 俺の中で燻る欲望を感じ取ったのか真人が腰に手を回してくる。そのまま引き寄せられ…互いの体が密着した。真人の体温を感じる。

「顔赤い。そんなに俺のこと好きなんだ?」

 首をかしげて笑う。あまりの恥ずかしさに顔が燃えるように熱くなった。見るな、と顔を背けると頬を両手で包まれた。

「大丈夫…怖くない。こっちみて?」
「うっ…ま、真人…っ」
「リラックスして。少しイチャイチャするだけだから」
「い、やめ、ろ…!」

 真人の甘い言葉を聞きたくなくて、とっさに耳を覆った。しかし、手の甲を真人が舐めてくる。ゾクリと体が震えた。

「んっ…!や、めろ!真人…!!」
「うるさい口は塞ごうか」
「んんっ!!?」

 唇を重ねてくる。俺はびくりと体を震わせたあと、我に返った。
 (こんなのだめだ…!!絶対後悔する)
 たとえ一瞬でも幸せになれるなら…真人と一緒にいられるなら…それほど嬉しいことはない。だがこれ以上は身を滅ぼす行為だともわかっていた。ホテルまでついてきておいて説得力はないが、このラインは越えてはいけないと悟った。

 ぐっ

 力を込めて体を押しのければ、真人が不満げに唸る。

「ん、なんで…」
「俺はあんたの事が好きだった…愛してた。でも今は違う!」
「体は反応してるのに?」
「くっ…さわ、る、な…っ!」

 股に触れてきた手をどける。悔しいが体は反応している。それをわかって真人は行為を持ちかけてきたのだろう。真人が悪いんじゃない。俺の自業自得だ。

「そんなに苦しそうなのになんで我慢するのさ。このまま気持ちよくなれば楽になるよ」

 真人が優しく囁いてきた。俺の腕を横にずらしながら近付いてくる。

 ぎゅっ

 抱き締められた。よく知ってる腕のなかに収まるとやけに安心する。心のどこかが埋まる感じがした。

「何もかも忘れて一緒にいよう、愛してるよ」
「!!」

 心臓が大きく高鳴る。

 (真人が俺を愛してくれる…?)

 あまりにも嬉しくてそして苦しい言葉だった。今じゃない。一ヶ月前に聞きたかった言葉だ。涙が溢れ、それを真人が優しく舐めとっていく。

「泣かないで、大丈夫だよ。愛してるから」
「…れだ」
「え?」
「誰だお前は」
「!」

 俺が睨み付けると、真人は驚いた顔でみてくる。そして今まで一切崩れなかった真人の仮面が引きつるのを感じた。寸前まで漂っていた甘い空気が一気に凍りつく。

「な、何を言ってるのさ。さっきまで真人真人って俺のこと呼んで…」
「言っとくが、真人は一人称が僕だ。心境の変化かと思って考えないようにしてたけどな。でもそれよりも気になったのは…“愛してる”なんて糞甘い台詞、真人が軽々しく言うわけないってことだ」
「っ…!!」

 愛してる。真人からほとんど言われなかった言葉。大体はありがとうとか好きだよとかそんなのばかり。好きと愛してるなんてほぼ同じ意味だが…俺はずっと気にしていた。
 (真人自身は何も気にせず言っていたのかもしれない)
 わからないが、どっちにしろ俺はその言葉を求めていたんだと思う。だからこそ今言われたことがすごく嬉しかったし、確かな違和感があった。言われたかった言葉を偽物に言われるなんてどんな冗談だろう。乾いた笑いが零れた。俺の様子を見ていた真人の偽物が体を離していく。

「ちぇ。だめかー」

 真人の偽物はお手上げだと手を上げた。それから俺に微笑んでくる。

「じゃあ仕方ない」
「真人?」

 何をするのかと思えば…上げたままの腕を何食わぬ顔で振り下ろしてきた。

 どすっ

「イッ、…っ!」

 首に直撃する。鈍い音が耳に届くと同時に鋭い痛みが走った。受け身をとれず倒れこむ俺を真人の偽物が冷たい瞳で見下ろしている。視界が濁り、意識が遠退く。

 (くそっ…こんな、所で…)


 ***


 張り付くような頭痛に顔をしかめる。ああ、起きないと。怠い体を動かして、横に倒す。

「!」

 目を開けると、俺は何故か、美しい日本庭園のみえる和室にいた。ポカーンと口を開けているといかつい男が廊下から覗き込んでくる。

「おはようございます」
「うわっ!?」
「起きられましたね。ご気分はいかがでしょうか」

 正座したままこちらに向き直ってきた。刈り上げ頭にスーツ。これはもしかしてそっち系の人だろうか。嫌な予感。冷や汗が噴き出る。男は俺が黙っているのをしばらく見つめていたが話す気がないと察して再度口を開いた。

「何か必要なものがあればお声がけください。あ、ユウキさんは今お手洗いです」
「ユウキ?」

 誰だそれは。そしてあんたも誰だ。俺が戸惑っているとドタドタと駆け寄ってくる足音がした。

「お!目が覚めたかなー!!」

 見知らぬ青年が廊下からひょっこり顔を出す。いかつい男が青年に向かって頭を下げた。

「ユウキさん、お疲れ様です!」
「あーはいはい、ちょっと腹減ったからなんか持ってきてよ」
「わかりました」

 男は青年の注文を受けてすぐに姿を消した。あのいかつい男を敬語で従わせる青年の立場。深くは考えたくないが、その奇妙な関係性を目の当たりして更に嫌な予感が裏付けられていく。
 (ここ…やべえ所なんじゃ…)
 俺は布団のなかで引きずるように後ろに下がった。それを見た青年が慌てたように手を振る。

「怖がらないで。俺、何もしないから」
「近寄るな。お前はだれだ…!ここはどこだ??」
「え?俺?えーっとユウキだけど、そんでもってここは俺の家…ああ、そういうことかごめんごめん」
「???」

 ユウキと名乗った青年がくるりと回る。そして次に正面を向いたときには姿が変わっていた。一瞬の出来事だった。

「じゃじゃーん。三時間ぶりの“真人”だよー」

 目の前にいる男は俺のよく知る顔だ。その顔を見た瞬間、気を失うまでの流れを思い出した。
 (そうだ、真人を追いかけてホテルに行って…)
 少しずつ思い出していく俺に、ユウキは胸を張って自己紹介してくる。

「てなわけで!真人に化けてたのが俺!名前はユウキだよ。真人じゃなくてユウキ、よろしくね」
「ユウキ…その体…どうなってるんだ」

 マジックにしては種も仕掛けもなさすぎる。そもそも見た目だけでいえば完璧に真人なのだ。こんなの普通の人間に再現できるものなのだろうか(しかも一瞬で)。俺の質問に対してユウキはあっけらかんと答えた。

「今更隠しても意味ないし言っちゃうけど、俺らは変化を得意とする狐の一族。化け狐って言うの?妖怪と言われたり、幻獣とか言われたりするよ。ちなみに表向きはヤのつくお仕事やってるからそこのところもよろしくう」
「ヤのつくって…全然表向きじゃねえ…」

 爆弾発言をどんどん、しかも真人のまま言うものだから流石の俺も脳が破裂しそうだった。ユウキが苦笑する。

「ごめんごめん、とりあえず姿を戻そっか」

 再び青年の体に戻ったあと部屋に入ってきた。よく見ればユウキは制服を着ていた。どうやら学生らしい。ユウキは俺の前にしゃがみこんだと思えばじいっと覗き込んできた。

「ね、名前教えてよ」
「…なんでお前に教える必要がある」
「必要はないけど、俺は名乗ったじゃん。不公平だよー」
「はあ…ライだ」
「あ、教えてくれるんだ。ライね。格好いい名前だなあ」

 うんうんと嬉しそうに反芻している。

「ライって漢字は来ってかくの?それとも雷?」
「そんなことはどうでもいいだろ。ユウキ、さっき三時間ぶりって言ってたが今は何…」
「あ、腹減ってない?なんでも持ってこれるから言ってよ」
「腹は減ってない…それよりも」
「ライ、みてみて!うちの庭綺麗でしょ。庭師が毎週来ててさ」
「ユウキ!!」

 話をそらそうとするユウキを遮った。ユウキは眉を寄せてむくれている。

「もー怒んないでよ」
「ユウキ、悪いが…俺は遊んでる場合じゃないんだ。やらなきゃいけない事があるし、人を待たせてる。すぐに戻らないと」

 気を失った後三時間も経ってしまったのならフィンがかなり心配しているはず。ユウキはポリポリと頭をかいてうーんと唸っている。

「そうしてあげたいのは山々だけど。よそ者に変化の力がバレたら殺すしかないってのが家のしきたりでさ」
「はあ?!!」
「俺だってライを殺したくないし、いっそこの家に隠しておけばいいかな~って思って連れ込んだわけ。あ、さっきのつるつる頭…柴沢には黙っとけって言ってあるから大丈夫だよ」

 発言が物騒すぎるだ。嘘だと言ってほしい。しかし部屋の奥の壁側に高そうな掛け軸がかけられていて、その下には日本刀らしきものが二振り置かれている。まさか本物なわけはないと思うが偽物を置いてるにしても物騒である。少なくとも一般家庭とは言えないだろう。

「とりあえず大人しくしててくれると嬉しいわけさ。あ、ご飯届いたよ。おにぎりかな?柴沢ありがとー」
「また何かあればお呼びください」
「はいはい、じゃーねー」

 柴沢と呼ばれた男がお盆を持って去っていく。俺たちの手元には美味しそうなおにぎりとサンドイッチが皿に並べられて置かれていた。

「うわー今日のはコンビニじゃなくて一から作ってくれてるじゃん。柴沢歓迎してくれるのかな、珍しい~」
「…」
「食べないの?毒なんて入ってないよ。殺すつもりなら寝てるときにばらしてるし」
「ばらすとか言うな」
「あはは、ごめん」

 ユウキは笑いながらサンドイッチを頬張った。どうやら毒は入ってないらしい。だが元々食欲はほとんどないし、こんな状況で空腹を感じるわけがない。
 (ほぼ監禁状態じゃねえか)
 庭先にはいかついスーツ男が何人もいた。時々こちらを確認するように見てくる。見張られているのだろう。

「ん?視界が鬱陶しい?閉じとこうか」

 庭が見えないようにユウキが障子を閉じた。部屋が少し暗くなったが太陽の日差しは入ってくるので困るほどではない。外からの視線は遮られたがその分ユウキとの二人きり感が強まった。しかもユウキ自身は遠慮なく視線を送ってくるし気まずすぎる。耐えきれず口を開いた。

「ユウキ、俺を一体どうしたいんだ。どうすれば解放される?」
「俺に聞かれても…うーん。あ、勉強教えてよ」
「はあ?」
「高校の勉強。苦手な教科があってさ!」
「なんで今それが必要なんだよ…」

 脈絡が無さすぎるが…まあ、それで解放してもらえるなら安い方だ。仕方なくユウキの横へ移動した。ユウキがニコニコと上機嫌になる。

「やった!家庭教師だね」
「はあ、で。わかんないのはどこだ」
「えっと、ここ…問3」
「これは…えっと、方程式かいてあるだろ。これ使って、こうして」



「おお~全部解けた!!ライ天才、すげー!」

 なんだかんだ全科目付き合ってやったが、困っていたのは本当だったらしい。終始俺の解説に聞き入っていた。他人の俺に聞いてくるのはどうかと思うが勉強する気があるのは良いことだ。

「すごいわかりやすかった!ライって見た目に反して丁寧だし優しいんだね!」
「うるせ。ったく、日が暮れてんじゃねえか…」

 すっかり外は暗くなり夜になろうとしている。俺が外を見ていると横からユウキが抱きついてきた。

「おい、鬱陶しい、くっつくな!」
「えー?なんでさ、家庭教師と生徒って萌えない?」
「萌えない」
「じゃあ社会人と学生は」
「萌えない。犯罪だぞ」
「ちぇ」

 首根っこを掴み引き剥がす。ユウキは口を尖らせながら身を引いた。

「ユウキ、勉強は教えたしもういいだろ。俺は帰るからな」

 襖を開けようとする。

「ええ待って!」
「なんだよ、まだ何かあるのか」
「まだっていうか、帰らせられないんだって。仮に俺のワガママってことで押し通すにも…試験が終わらない限り長としての権限がもらえないし…」
「試験?今の問題集のか?」
「違う。変化のだよ」

 変化の試験?一体どういうことだ。俺に興味をもってもらえて嬉しいのかユウキが襖を閉じながら説明する。

「俺らは変化の得意な一族って言ったよね。一族の長になるための試験をするんだ。成人する前にね」
「試される…どうやってだ?」
「変化能力そのものと変化を扱う素質を試される。さっきライも見たでしょ。真人に変化した俺が商店街を歩いてたのを」
「あ…」

 なるほど。ユウキは試験の為に真人に変化していた。そして俺に見破られ始末するしかなくなったということか。

「毎年試験の内容が変わるらしいんだけど、今年は"誰かに変化して、その者の知り合いを家に連れてこい"だったわけさ。一応真人の姿のまま、ライを知り合いとして紹介してみたけどダメだった、残念」
「意識失わせて紹介すんのは"紹介"とは言わねえ」
「あはは、確かにー」

 ユウキがけらけらと笑っている。

「つまりなんだ。俺は完全に巻き込まれただけってことか??」
「ええ~!一族のしきたりを押し付ける状況になってるのは申し訳ないと思ってるけど!大前提として巻き込まれに来たのはライだから!そっちが声かけてきたし、腕掴んで引き止めてきたのもライだし!」
「うっ…」
「うるうるの涙目で、行かないで~って甘えてきて、あんな風にされて無視できる奴なんていないね!」
「涙目で甘えてねえわ!眼科いけ!」
「いーや甘えてたねっ!!」
「百歩譲って涙目だったとしても、真人だと思ってたからだっつの!お前に甘えてたわけじゃねえ!」
「ちぇ、真人真人って…そいつ、ライの恋人なわけ?」
「…」
「こんだけ俺の事情聞いといてだんまり~?それは卑怯じゃないー?」

 大人の癖に、と嫌なつつき方をしてくる。腹立つがその通りだ。言いたくない話ではあるが諦めて話すことにした。少しでも俺への関心が薄まってくれる事を祈る。

「なるほど、ライも波乱万丈だなあ」

 幻獣とかそういうのは伏せて、仕事と恋人を失ってスナックに転がり込んだって感じで伝えた。それでも十分波乱万丈ではあるが。ユウキが同情するように見てきた。

「大変だったね。ライ。仕事も今までのと全然違うわけでしょ?スナックじゃなくて俺の家に住みなよ。仕事しなくても好きなだけ遊んで暮らせるよ」
「しねえわ。しれっと軟禁に誘導するな」
「俺本気だし!」

 肩を掴まれる。真剣な顔で見つめてきた。

「信じてもらえないかもしれないけど…ライの事、好きになっちゃったんだ。こんな風に俺と普通に接してくれて…優しくしてもらえたの初めてだった。すごく嬉しかったんだよ」

 ユウキにふざけている様子はない。今までの言動はともかく、こいつがまだ学生で根は真っ直ぐなのはわかった。今言った言葉もたぶん本当の気持ちなのだろう。だが応えられるかは別だ。

「ユウキ、俺は…」
「ライ、ずっとここにいてよ。俺に飼われて?」
「…悪趣味だぞ」

 人が人を飼うなんてあり得ない。そもそも好きになった相手に言う台詞とは程遠い。俺が首を振って拒絶するとユウキが顔を近づけてくる。

「悪趣味でもいい。ライを手放したくない。誰にも取られたくないんだ!」
「人間は玩具じゃないんだぞ。俺は誰のものにもならないし、なるつもりもない。お前だってわかってんだろ。自分が無茶言ってるって」
「無茶じゃない…!俺が一族の長…頭になればいいんだ。頭になれば家のしきたりを一から決められる!ライを俺の恋人にすることも!一生横に連れ添わせることも文句言わせない!」

 真剣な顔のユウキに壁ドンされる。その振動で壁沿いの日本刀がカチャリと音を立てた。

「だから試験を手伝ってよ、ライ。そして頭になった俺とずっといて」
「お前が頭になったら閉じ込められるんだろう?自分を閉じ込めるために手伝う馬鹿がどこにいる」
「絶対に幸せにするって約束するよ?」
「んな約束いらねえ」

 睨み合う。しばらくそうしていた後、ユウキが視線をそらした。

「もういい。ライのわからず屋!」

 プンプンと怒りながら出ていった。足音が遠ざかっていく。残された俺は大きなため息を吐いた後頭を抱えるようにして座り込んだ。

「くそっ…どうしてこんなことに…」

 真人と勘違いしてユウキに声をかけてしまったのは俺が悪い。だが、ユウキ一族の面倒事に巻き込まれたのは運が悪すぎる。
 (ドッペルゲンガーどころじゃねえよこんなん…)
 フィンやグレイとも連絡できないし逃げる手段もない。外を確認しようと廊下に出てみれば、柴沢が正座したまま待機していた。俺の方を見て頷いてくる。無言の圧があった。
 (逃げられない…か)
 完全にお手上げである。部屋の中に戻った後、少し探検してみることにした。部屋にはさっき見た事以外何も置かれていなかったが

「…これって」

 俺はとあることに気づくのだった。
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