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第十四章「海賊船と呪いの秘宝」
★約束
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「素直なルトは最高だぜ」
「うっうるさい…」
ザクの愛撫が体中にふってくる。優しく濡れた赤い痕はザクが離れたあともじんわりと熱い。自室なので声を抑える必要もない(リリがいるからそれほど大声は出せないけども)。熱い舌が首を舐めてくる。そのまま敏感になったところを甘噛みしてきた。
「うあっ…それ、やめ、」
「なんで」
「な、んか…ど、動物みたい、だし」
「人間も動物だろ?特に夜は」
「はあ…」
「あ、そうだ、ここでニャーとか言ったら猫っぽいか?癒される?」
「いやこの場合ライオンとかトラとかを連想する…」
「だったらルトはウサギちゃんか」
「うさぎはもう勘弁してくれ…」
「けけけ!大丈夫だって、どんなルトでも見つけてやるから」
「絶対だぞ…」
そう言って抱き合う。お互いの体を感じながらキスをする。長めのキスで、頭の奥が溶けてきた。
「ふっ…あ、ザク…」
「俺様もう限界なんだけど、そろそろいいか?」
「ん、…」
俺は肯定するようにザクの首元の髪に顔をうずめた。さっきの猫耳の間にうずめた時とは違う満足感がある。ザクの匂いと抱かれる腕の力強さを感じてそれだけ腰の奥が熱くなった。早くほしい。
「そんな顔すんなよ。ぶち抜いちまったらどうすんだ」
「人殺し…」
「まだ殺してねえだろ~?ったく、力抜いてろよ」
「んっ…はあ、っ…」
ザクが念のためと俺の後ろに指をいれてきた。難なく咥え込んでしまい少し恥ずかしい。指が増えて内側を一周したあと、それらは引き抜かれた。
「いれるぞ」
「うん」
うなずく。ザクの腰が近づいて、後ろに熱いものがあたってきた。そのまま指を受け入れた場所に割り込んでくる。
グググッ
「…ッ……はあ」
「あああっ、い、あうっ、はあ、はあ」
さすがにこの大きさは最初からすんなり飲み込むことはできなかった。けど、少ししたらザクのにも慣れてきて、最終的には全て入ってしまった。
「ーっあ、っは、ああ、んんんっ」
ベッドのシーツを掴んで耐えていると、手の上にザクの手が重なる。ギュッと握り締められた。四つん這いで後ろから突かれる姿勢のため顔は見えない。でもどんな顔をしてそうなのかは想像できた。というか、体の中にあるものが何よりはっきりと、ザクの状況を教えてくれる。
「はあ…とけそ」
「んああっうっ、そこで、喋る、なっんああっ!」
互いに久しぶりで余裕はなくすでに限界が近かった。けどこのまま終わるのは寂しい気がして少しでも長引かせようと堪えてみる。
「うう…んっ…はあっ、はっ…」
「なあ、ルト」
「あっああっ、え…?んんっあう!!」
「このまま、めんどいこと全部捨てて…俺様と世界の端にでもいかね?」
「…!」
なんだと思って体の向きを変えた。仰向けになる。すると、ザクが眉を寄せながら、困ったように笑いかけてきた。鍛えられた筋肉に汗が流れていく様は凄まじい色気と男らしさが兼ね合って見蕩れてしまう。
「はあ、はあ…ザ、ク…?」
「…」
「なんで、そんなこと」
「……」
「ザク?」
「ルトを誰にも渡したくねえ」
そういって奥を突かれた後、腕の中に抱きしめられた。ザクの髪があたってる部分ですら感じてしまいそうだ。
「…っ、心配しなくても…俺は、誰のものにもならないよ」
よしよしとザクの頭を撫でる。そのまま動かなくなるザク。何事だと上半身を起こそうと思ったら、急に顔を上げたザクにキスされた。
「ちくしょう、首輪でもつけときゃいいのか…」
「はあ?さっきからどうしたんだよ」
「なんでもねーよっ」
誤魔化すように荒々しく腰を動かしてきて、また気持ちよさが再燃してくる。今度はラストスパートと言わんばかりの速さと激しさだった。奥をつかれる鋭い刺激も、浅いとこを擦る度にせりあがる気持ちよさも、視覚的な喜びも…全部が体を追いたててくる。早く、早くと無意識に背中に抱きついて爪を立てればザクが眉を寄せて舌打ちした。
「はっ、可愛すぎんだろ…」
「ンああっ、いあ、や、やばい!ザクっ、も、いく、っあああん!」
「ああ、俺様も、イクわ」
「んんんうっ」
ぎゅっと強く抱きしめられ、深くキスをする。ぐぐっと一際強く奥を突いたザクのそれは、ビクビクと脈打ったあと俺の中で弾けた。
ドクドク…
中に流れ込んでくるその熱さを感じながら俺もいった。溜まっていたせいもあってザクの腹にまで飛んでしまった。息を整えながらザクが俺のを掬い取って、目の前に持ってくる。白く濡れて粘つくザクの指先。
「ほれ、ルト」
「はあ、はあ…き、きたないから、拭けって」
「あーん」
「しないから!」
「っち」
「舌打ちされても流石に自分のは嫌だ!いいから早く拭け!」
「もったいねーから俺様がもらう」
ぺろっと指先についたのを舐め取っていく。毎度ながら慣れない光景だ。どうしてそれが美味しく感じるんだろう。というか栄養源がそれって不便すぎるだろ。
「っし、元気出たから、次行くぞ」
「ええもう少し休憩したいっああああっ!」
いつの間にか復活していたザクに嫌という程鳴かされ、それから色々やること1時間経過。
「はあ、ぜえ、はあっ…はあーっ…」
「ふーすっきり」
「なっ、何が…スッキリだっ…死ね!!というか俺が死ぬ!!」
「お~まだこんだけ喋る元気があるしもう一回やるか~」
「ええええっも、もーむり!たんま!ストップ!」
「けけ、冗談だって」
ベッドでじゃれ合いながら横になっていると、ふとザクが真顔になって見つめてきた。それから何事もなかったかのように天井の方に向くザク。
(なんだ、変なの)
そういえばさっきも様子が変だったよな。一緒に世界の端にいこうとか言ってたし。
「…ザク」
「んあ?」
「俺はどこにも行かないから」
「…」
「だから、心配いらないからな」
「ああ、そーだな」
優しく微笑まれた。この、行為後特有の大人の色気の混じった微笑みは真っ向から見つめてはならない。ドキドキしすぎて本気で心臓が止まる。ふいっと目をそらすと、指で髪を梳かれた。
「海賊のあいつと戦ったときな」
「…ん、イーグル?」
「そいつと戦いながら、話したんだよ。あいつがルトにやったこととかその他もろもろ」
「!!!」
イーグルにやられたこと、ってまさか、あの事も言ったのか????
(イーグルよく生きてたな…ていうか、俺がやったことをザクは知ってたのか…)
今更自分の体が嫌になって、ザクから少し距離をとった。俺たちの間にザクの腕1本分の距離が空く。
「けっ、もちろんケジメはつけさせてもらったぜ。人間相手とわかってて、思いっきり手加減なしで殴ったのは初めてかもしんねえなあ」
「…まじでよく生きてたな…あいつ…」
「ほんとにな。タフな奴だぜ。でもな、ルト、お前は自分を責めるなよ」
「え…?」
「それは誰かを守るためにやったんだろ。俺様だってそこまで馬鹿じゃねーからな。さすがに…事情を知っててルトを嫌いになったり、軽蔑したりはしねーよ」
「……」
ぽんぽんと優しく頭を撫でられた。大きな手で撫でられるこの感覚は嫌いじゃない。むしろ好きだ。でも今回ばかりはその暖かさが辛かったし、染みた。
「…うん…ごめん、……ありがと…ザク…」
「だから謝るなって、ほらこっちこい」
体を抱き寄せられた。ぎゅっと包まれるとザクの匂いがして安心する。ここなら絶対安全だと確信できる唯一の場所だ。
「海賊と会ってからルトが俺様としようとしなかったのは、そういう理由だろ」
「……ん」
小さく頷いた。ここまで知られていて隠すのも馬鹿馬鹿しい。ザクの言うとおり、イーグルの事がちらついてザクと触れること自体俺は避けていた。自分にはそんな資格ないんじゃないかって。不安で、怖くて、拒絶されるのが嫌で。この話をするのも、聞かれるのも嫌で逃げていた。情けない自分が更に嫌になっていった。
「あんな事になっちまったのは回りまわって結局俺様のせいだ。ちゃんとルトを守れなかった俺様が悪い」
「っ、そんなわけ…!」
「最初にルトを悪魔の事件に関わらせたのは俺様自身が原因だ。だからその責任を果たして守り通すべきなんだよ」
「……ザク」
「でも、できなかった」
「…それは、ちがっ…ザクは悪く…」
ザクは悪くない。ザクは悪魔として複雑な立場で生まれて、利用しようとする奴がいっぱいて、そんな中必死に守ってくれている。レインや、悪魔の世界の人たちからも終われてるのに、自分よりも優先して大切にしようとしてくれてる。その気持ちが何より嬉しいし責任を感じてほしくなかった。
「ザク…俺、は…」
「もしかしたらまたルトを守りきれねーことがあるかもしれない。そんな未来を考えるだけで気が狂いそうだ」
抱きしめる腕の力が強まった。苦しいけどそのまま俺は腕の中に収まっていた。そうだったんだ。
(不安だったのは俺だけじゃなかった…ザクも自分を責めていたんだ)
俺は少しの間の後、顔を上げた。顎にキスをしてこっちを向かせる。
「ザク、今俺は幸せだよ」
「…!」
「可愛いリリが傍にいて、面倒なことも多いけど仕事も楽しくて、個性強すぎる友人もいっぱいできた。それに危なくなったら助けに来てくれる恋人もいる」
「ルト…」
「人間も悪魔も同じだよ。きっとこの不安は…ずっと消えないと思う。だから約束しよう」
「…?約束?」
「俺がまた拐われたら必ず助けにこい。俺も、ザクが拐われたら助けに行くから」
「…!」
そう言うとザクは、目を見開いて、ゆっくりとまた目を閉じた。ザクの表情は先程より柔らかくなっている。
「…わかった、必ず助けに行く」
ザクの答えに俺は安堵して強く頷いた。
「うん、約束だぞ。俺もザクがさらわれたら助けにいくからさ」
「ん~ルトの助けとか不安でしかないんだがな~」
「なんだよ失礼な!」
「けけっま、精々そんな事にはならないようにするわ~」
「はあ…そうしてくれ」
こてん、とザクの胸に頭をのせる。心臓の音がする。とくん、とくんと定期的に鳴るその音は俺の睡魔を呼び寄せてきた。抱き枕のように体を抱かれつつ、お互いの体温を感じながら目を瞑る。
「おやすみ」
「おぅ、おやすみ」
すでに夢の中に入りかけてるザクが眠そうに返してくる。俺もそれを聞いたあとすぐに夢を見始め、沈み込むように眠りについた。
その日の夢は、イーグルの船に乗ってバンとかエス達を連れて皆で旅をする夢だった。
もちろん隣には悪魔のあいつがいて、幸せそうに笑っている、そんな夢。
そんな船旅なら一度くらいはしてみたいな、なんて思ったりしたルトだった。
「うっうるさい…」
ザクの愛撫が体中にふってくる。優しく濡れた赤い痕はザクが離れたあともじんわりと熱い。自室なので声を抑える必要もない(リリがいるからそれほど大声は出せないけども)。熱い舌が首を舐めてくる。そのまま敏感になったところを甘噛みしてきた。
「うあっ…それ、やめ、」
「なんで」
「な、んか…ど、動物みたい、だし」
「人間も動物だろ?特に夜は」
「はあ…」
「あ、そうだ、ここでニャーとか言ったら猫っぽいか?癒される?」
「いやこの場合ライオンとかトラとかを連想する…」
「だったらルトはウサギちゃんか」
「うさぎはもう勘弁してくれ…」
「けけけ!大丈夫だって、どんなルトでも見つけてやるから」
「絶対だぞ…」
そう言って抱き合う。お互いの体を感じながらキスをする。長めのキスで、頭の奥が溶けてきた。
「ふっ…あ、ザク…」
「俺様もう限界なんだけど、そろそろいいか?」
「ん、…」
俺は肯定するようにザクの首元の髪に顔をうずめた。さっきの猫耳の間にうずめた時とは違う満足感がある。ザクの匂いと抱かれる腕の力強さを感じてそれだけ腰の奥が熱くなった。早くほしい。
「そんな顔すんなよ。ぶち抜いちまったらどうすんだ」
「人殺し…」
「まだ殺してねえだろ~?ったく、力抜いてろよ」
「んっ…はあ、っ…」
ザクが念のためと俺の後ろに指をいれてきた。難なく咥え込んでしまい少し恥ずかしい。指が増えて内側を一周したあと、それらは引き抜かれた。
「いれるぞ」
「うん」
うなずく。ザクの腰が近づいて、後ろに熱いものがあたってきた。そのまま指を受け入れた場所に割り込んでくる。
グググッ
「…ッ……はあ」
「あああっ、い、あうっ、はあ、はあ」
さすがにこの大きさは最初からすんなり飲み込むことはできなかった。けど、少ししたらザクのにも慣れてきて、最終的には全て入ってしまった。
「ーっあ、っは、ああ、んんんっ」
ベッドのシーツを掴んで耐えていると、手の上にザクの手が重なる。ギュッと握り締められた。四つん這いで後ろから突かれる姿勢のため顔は見えない。でもどんな顔をしてそうなのかは想像できた。というか、体の中にあるものが何よりはっきりと、ザクの状況を教えてくれる。
「はあ…とけそ」
「んああっうっ、そこで、喋る、なっんああっ!」
互いに久しぶりで余裕はなくすでに限界が近かった。けどこのまま終わるのは寂しい気がして少しでも長引かせようと堪えてみる。
「うう…んっ…はあっ、はっ…」
「なあ、ルト」
「あっああっ、え…?んんっあう!!」
「このまま、めんどいこと全部捨てて…俺様と世界の端にでもいかね?」
「…!」
なんだと思って体の向きを変えた。仰向けになる。すると、ザクが眉を寄せながら、困ったように笑いかけてきた。鍛えられた筋肉に汗が流れていく様は凄まじい色気と男らしさが兼ね合って見蕩れてしまう。
「はあ、はあ…ザ、ク…?」
「…」
「なんで、そんなこと」
「……」
「ザク?」
「ルトを誰にも渡したくねえ」
そういって奥を突かれた後、腕の中に抱きしめられた。ザクの髪があたってる部分ですら感じてしまいそうだ。
「…っ、心配しなくても…俺は、誰のものにもならないよ」
よしよしとザクの頭を撫でる。そのまま動かなくなるザク。何事だと上半身を起こそうと思ったら、急に顔を上げたザクにキスされた。
「ちくしょう、首輪でもつけときゃいいのか…」
「はあ?さっきからどうしたんだよ」
「なんでもねーよっ」
誤魔化すように荒々しく腰を動かしてきて、また気持ちよさが再燃してくる。今度はラストスパートと言わんばかりの速さと激しさだった。奥をつかれる鋭い刺激も、浅いとこを擦る度にせりあがる気持ちよさも、視覚的な喜びも…全部が体を追いたててくる。早く、早くと無意識に背中に抱きついて爪を立てればザクが眉を寄せて舌打ちした。
「はっ、可愛すぎんだろ…」
「ンああっ、いあ、や、やばい!ザクっ、も、いく、っあああん!」
「ああ、俺様も、イクわ」
「んんんうっ」
ぎゅっと強く抱きしめられ、深くキスをする。ぐぐっと一際強く奥を突いたザクのそれは、ビクビクと脈打ったあと俺の中で弾けた。
ドクドク…
中に流れ込んでくるその熱さを感じながら俺もいった。溜まっていたせいもあってザクの腹にまで飛んでしまった。息を整えながらザクが俺のを掬い取って、目の前に持ってくる。白く濡れて粘つくザクの指先。
「ほれ、ルト」
「はあ、はあ…き、きたないから、拭けって」
「あーん」
「しないから!」
「っち」
「舌打ちされても流石に自分のは嫌だ!いいから早く拭け!」
「もったいねーから俺様がもらう」
ぺろっと指先についたのを舐め取っていく。毎度ながら慣れない光景だ。どうしてそれが美味しく感じるんだろう。というか栄養源がそれって不便すぎるだろ。
「っし、元気出たから、次行くぞ」
「ええもう少し休憩したいっああああっ!」
いつの間にか復活していたザクに嫌という程鳴かされ、それから色々やること1時間経過。
「はあ、ぜえ、はあっ…はあーっ…」
「ふーすっきり」
「なっ、何が…スッキリだっ…死ね!!というか俺が死ぬ!!」
「お~まだこんだけ喋る元気があるしもう一回やるか~」
「ええええっも、もーむり!たんま!ストップ!」
「けけ、冗談だって」
ベッドでじゃれ合いながら横になっていると、ふとザクが真顔になって見つめてきた。それから何事もなかったかのように天井の方に向くザク。
(なんだ、変なの)
そういえばさっきも様子が変だったよな。一緒に世界の端にいこうとか言ってたし。
「…ザク」
「んあ?」
「俺はどこにも行かないから」
「…」
「だから、心配いらないからな」
「ああ、そーだな」
優しく微笑まれた。この、行為後特有の大人の色気の混じった微笑みは真っ向から見つめてはならない。ドキドキしすぎて本気で心臓が止まる。ふいっと目をそらすと、指で髪を梳かれた。
「海賊のあいつと戦ったときな」
「…ん、イーグル?」
「そいつと戦いながら、話したんだよ。あいつがルトにやったこととかその他もろもろ」
「!!!」
イーグルにやられたこと、ってまさか、あの事も言ったのか????
(イーグルよく生きてたな…ていうか、俺がやったことをザクは知ってたのか…)
今更自分の体が嫌になって、ザクから少し距離をとった。俺たちの間にザクの腕1本分の距離が空く。
「けっ、もちろんケジメはつけさせてもらったぜ。人間相手とわかってて、思いっきり手加減なしで殴ったのは初めてかもしんねえなあ」
「…まじでよく生きてたな…あいつ…」
「ほんとにな。タフな奴だぜ。でもな、ルト、お前は自分を責めるなよ」
「え…?」
「それは誰かを守るためにやったんだろ。俺様だってそこまで馬鹿じゃねーからな。さすがに…事情を知っててルトを嫌いになったり、軽蔑したりはしねーよ」
「……」
ぽんぽんと優しく頭を撫でられた。大きな手で撫でられるこの感覚は嫌いじゃない。むしろ好きだ。でも今回ばかりはその暖かさが辛かったし、染みた。
「…うん…ごめん、……ありがと…ザク…」
「だから謝るなって、ほらこっちこい」
体を抱き寄せられた。ぎゅっと包まれるとザクの匂いがして安心する。ここなら絶対安全だと確信できる唯一の場所だ。
「海賊と会ってからルトが俺様としようとしなかったのは、そういう理由だろ」
「……ん」
小さく頷いた。ここまで知られていて隠すのも馬鹿馬鹿しい。ザクの言うとおり、イーグルの事がちらついてザクと触れること自体俺は避けていた。自分にはそんな資格ないんじゃないかって。不安で、怖くて、拒絶されるのが嫌で。この話をするのも、聞かれるのも嫌で逃げていた。情けない自分が更に嫌になっていった。
「あんな事になっちまったのは回りまわって結局俺様のせいだ。ちゃんとルトを守れなかった俺様が悪い」
「っ、そんなわけ…!」
「最初にルトを悪魔の事件に関わらせたのは俺様自身が原因だ。だからその責任を果たして守り通すべきなんだよ」
「……ザク」
「でも、できなかった」
「…それは、ちがっ…ザクは悪く…」
ザクは悪くない。ザクは悪魔として複雑な立場で生まれて、利用しようとする奴がいっぱいて、そんな中必死に守ってくれている。レインや、悪魔の世界の人たちからも終われてるのに、自分よりも優先して大切にしようとしてくれてる。その気持ちが何より嬉しいし責任を感じてほしくなかった。
「ザク…俺、は…」
「もしかしたらまたルトを守りきれねーことがあるかもしれない。そんな未来を考えるだけで気が狂いそうだ」
抱きしめる腕の力が強まった。苦しいけどそのまま俺は腕の中に収まっていた。そうだったんだ。
(不安だったのは俺だけじゃなかった…ザクも自分を責めていたんだ)
俺は少しの間の後、顔を上げた。顎にキスをしてこっちを向かせる。
「ザク、今俺は幸せだよ」
「…!」
「可愛いリリが傍にいて、面倒なことも多いけど仕事も楽しくて、個性強すぎる友人もいっぱいできた。それに危なくなったら助けに来てくれる恋人もいる」
「ルト…」
「人間も悪魔も同じだよ。きっとこの不安は…ずっと消えないと思う。だから約束しよう」
「…?約束?」
「俺がまた拐われたら必ず助けにこい。俺も、ザクが拐われたら助けに行くから」
「…!」
そう言うとザクは、目を見開いて、ゆっくりとまた目を閉じた。ザクの表情は先程より柔らかくなっている。
「…わかった、必ず助けに行く」
ザクの答えに俺は安堵して強く頷いた。
「うん、約束だぞ。俺もザクがさらわれたら助けにいくからさ」
「ん~ルトの助けとか不安でしかないんだがな~」
「なんだよ失礼な!」
「けけっま、精々そんな事にはならないようにするわ~」
「はあ…そうしてくれ」
こてん、とザクの胸に頭をのせる。心臓の音がする。とくん、とくんと定期的に鳴るその音は俺の睡魔を呼び寄せてきた。抱き枕のように体を抱かれつつ、お互いの体温を感じながら目を瞑る。
「おやすみ」
「おぅ、おやすみ」
すでに夢の中に入りかけてるザクが眠そうに返してくる。俺もそれを聞いたあとすぐに夢を見始め、沈み込むように眠りについた。
その日の夢は、イーグルの船に乗ってバンとかエス達を連れて皆で旅をする夢だった。
もちろん隣には悪魔のあいつがいて、幸せそうに笑っている、そんな夢。
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