牧師に飼われた悪魔様

リナ

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第八章「迷えるキマイラ」

モンスターミキサー

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「やあ、いらっしゃいルト君」
「おはようございます…ラルクさん」

 少し冷めた紅茶を傾けながらラルクさんが出迎えてくれた。そう、向かった先はラルクさんの家だった。

「昨日はどうでした?」
「...散々でした」
「ふむ、マッドハンドあたりでしょうか。最近よく見かけていたので。どちらにしろ君なら大丈夫だと思いました。どうぞ入ってください」
「お邪魔します」

 “悪魔”のザクと共にいるのを知ってる分、ラルクさんは心配してないようだ。俺は招き入れられまたあの幽霊屋敷に足を踏みいれた。

「そういえばルト君、昨日も目撃されたそうですよ」
「え?」
「キメラの事ですよ」
「あっ」
「しかも教会の犬、保安官と対立したとか。命知らずなキメラですね」
「...」

 キメラ、か。昨日俺の前に姿を現したあの化け物は、言ってしまうとあれだが、噂ほど悪い奴に見えなかった気がする。そりゃ凶暴そうには見えたけども、でも助けてもらったのは確かだし。

「その顔、さては接触したのですね」
「え、...あ、はい」
「羨ましいですね!どんな外見でしたか?筋肉のつき方は?動物の継ぎ目はどうなってました??感情は?言語は??思考はしていましたか???」
「いや、あの...っ」

 矢継ぎ早に質問をしてくるラルクさんに押しつぶされそうになる。ハアハアと息を荒げ眼鏡をかけ直すラルクさん。やばい、軽く興奮状態に入ってるかもこの人。廊下で壁ドン状態の俺がひとり焦ってると

 =おいこら!!俺様のルトに何しやがる!=

 ぶにゃああ!と威嚇するような声が廊下に響く。猫ザクはそのまま飛び上がり、ラルクさんの背中を思いっきり引っ掻いた。

「アイタタ!おっと、すみません。つい、我を忘れてました」

 正気に戻ったラルクさんが軽快に笑った。

「いやあそれにしても優秀ですねー、あなたの使役悪魔くんは」
「使役悪魔ってザクのことか?」
「そうですよ、人間に従う悪魔のことをそう呼ぶんですよ」
「え、俺以外にも悪魔をつれてる人がいるのか??!」
「ええ、それはもう。用途はそれぞれですがザラにいますよ。悪魔を知る者にとってはさして珍しいことでもないでしょうしね」
「へえ…」

 悪魔を飼うなんて物好き俺だけかと思っていた。ふとその時、レインの顔が頭によぎる。

(あの男もインキュバスとサキュバスを飼っていたっけ)

 笑いながら自分の悪魔に鞭打っていたが。

「...」
 =どうした?ルト=
「...なんでもない」

 ザクの問いかけに笑って誤魔化す。

「ところでルト君、こんな世間話を来たのではないのでしょう?用事はなんです?」
「あいつらに会いに来たんだ」
「あいつら?双子のことですか?」
「そう、少し...聞きたいことがあって」
「なるほど」

 ラルクさんはそこで困ったなと顔をしかめた。

「?」
「ちょうど買い物を頼んだところでして。一時間は戻らないと思います」
「それならここで待たせてもらってもいいかな?」
「構いませんよ。ついでにキメラのお話を聞かせてください」

 結局そうなるのか。まあ今はザクもいるしいっか。それからしばらく俺達は、昨日現れたキメラについて話しあった。といっても後半からはマッドハンド(地面から生えた骨の手)の話にすり替わっていたけど。

「ただいまー!」
「ただいま帰りました」

 陽気な声と礼儀正しい落ち着いた声が同時に届く。ラルクさん家で話し始めてからちょうど1時間が経ったころのことだった。玄関に向かうと両手に袋を持った双子がたっているのが見えた。二人は俺の姿に気づくとギョッとする。

「ルト先生」
「来てたんだ」

 それだけ言って目をそらす二人。俺はそんな双子を見つめながら口を開いた。

「ああ、昨日ぶり」
「ーえ、き、きのうって」
「昨日はちゃんと帰れたか?」

 狼狽えたカプラの言葉を遮るようにリオが口を挟んできた。挙動がどこか怪しい。カプラは変にそわそわしてるしリオも目を合わせようとしない。双子が俺に隠し事をしているのが目に見えてわかった。だが、聞いたところで素直に口を割るとも思えない。

(このままでは埒があかないな)

 少し鎌をかけてみるか。

「...ああ、お前らがマッドハンドから助けてくれたからな」
「「っっ!!」」

 ガタっと音を立てて、双子が買い物袋を落とした。

「どうして、そ、それ」
「カプラっ馬鹿!」
「あっわり...!」

 墓穴を掘ったカプラを引きとめようと思ったのだろう。リオは舌打ちをして俺たちに背を向けた。ラルクさんは目を見開いているが口を挟むつもりはないらしい。俺たちをただ見つめている。陽のあたる廊下の隅にいる猫ザクは、欠伸をしながらこっちを興味なさげに見てる。

「...カプラ、リオ」
「そうだよルト先生の言う通りだ。おれらがキメラの正体だよ」
「!!おいカプラっ」
「リオ。どうせ、バレることだよ、隠しても仕方ない」
「だからってっ」

 眉間に深いシワを刻んだリオはとても痛々しいし迫力がある。シーンと廊下が静まった時、ラルクさんが動いた。

「君たちは、二人でキメラなのですか?それともリオ君だけがキメラですか?」
「...実は、よくわからないんだ。おれらも自分たちの体のことを把握できてない」
「ほう?」

 興味深いですね、と目を細めてるラルクさん。俺の目の前にいる双子はどこからどう見ても人間だ。話し方も考え方もザクと違って、さして人間と違いはない。なのに、何故。自分で言っておいてあれだが二人がキメラだということが信じられなかった。

「...キメラって...お前ら、どう見ても人間なのに」
「はは、まあおれらも、最初は人間だったからね」
「?!」

 自嘲するかのように笑うカプラ。正体がバレてから一向にこちらを向こうとしないリオ。対照的な反応だけど、心は同じで二人共怯えてるような気がした。

「おれらは、とある小さな教会に預けられていた孤児だった。贅沢は言えなかったけど牧師さんとの生活、楽しかったよ。でもおれらが10歳ぐらいの時、教会に火がつけられたんだ」
「?!」

 教会に火?!

「おれらは、犯罪者の子供だったらしくて、それを庇っていた牧師さんが責められたんだ」
「...」

 犯罪者の子供は親の影響がないか厳しいチェックをされる。しかし、それはただの建前らしく、その過程で気晴らしにと更生所の者達から激しい暴力を受けると聞いた事がある。犯罪者の子供なので誰も咎めないし庇いもしない。犯罪者の子供だから当たり前なのだと。

「牧師さん、何年も忠告され続けてたんだけど、頑としておれらを譲らなかったんだ」

 馬鹿だよね、といいつつカプラはすごく嬉しそうだった。そこで言葉をとぎらせたカプラを引き継ぐように、今まで黙っていたリオが口を開いた。

「火事の時、おれらはちょうど買い物に出かけていた。だけど牧師さんは教会にいたんだ。足の悪いあの人を助けに行く途中で、おれらも燃えた教会の下敷きになった」
 =なるほど、そこで悪魔か=

 猫ザクが俺の足の間からスルリと体をすり抜けてきた。キメラの二人には猫ザクの声が聞こえるのだろう、双子が同時に頷いた。

「うん、どこからか悪魔が現れておれらを助けてやると言ったんだよ」
「そうすればあの牧師も助けられるぞ、と言われておれたちはすぐに悪魔に応えた」
「...」

 悪魔との契約。それがなんの見返りもなく行われるはずがない。拳を握り締め、双子の話を黙って聞く。

「おれたちは足りない部分を補うように、一体の生き物になった、それがキメラの姿だよ」
「!!!」
「普段はよほど無理をしない限り悪魔の幻覚の力で人間の姿でいられるが、実際の中身は昨日ルトの前に現れた...あの化物だ」

 リオが吐き捨てるようにそう言った。俺は何も言えず、ただ拳を握り締めた。

「それで...牧師さんはどうなったんだ?」

 それだけなんとか口にすると、カプラがどこか遠くを見ながらぼそっと言った。

「死んでた、遅すぎたんだ」

 人々から恐れられ、保安官に追われる凶悪な悪魔が今目の前で涙を流している。その姿がひどく目に焼きついて離れなかった。



 =ルト=
「...」
 =なにしてんだよ=
「なんでも」

 俺は今、教会の屋根で寝転がり星空を見上げていた。ラルクさん家から戻ってから数時間はここにいるだろう。

「あのさ」
 =言っとくがあの双子を人間に戻すのは無理だぞ=
「...」

 俺の意図を読み取ったザクが言葉を遮ってくる。ダメもとで聞いてみたがやはりダメ、か。

 =あいつらはあの形でやっと生を保ってる。人に戻せばまず死ぬ=
「...そっか」

 ザクなら、と思ったがそれほど万能なわけがない。俺は一瞬浮かんだ希望をしぼめながら星空に目を戻した。ふと、夜風がやみ、上を向けば人型に戻ったザクが腰掛けていた。いつもあんだけうるさいのに今は何も言ってこない。

「...ザク、キメラって、寿命どれぐらいなんだろ」
「あんま知らねーけど人よりは長いんじゃねーの」
「そうか...よかった」
「なんでそんな寂しそうなんだよ」

 俺の方を見ずに言うザク。お互い星空を見上げていて表情は読めない。

「わからない、でもあいつら、キメラの時も悲しそうだったなって思って」

 人外といわれ、住む場所を追われるその苦しさは誰にも理解できないだろう。あの引き裂くような、体の底に響いた咆哮はカプラ達の魂の叫びだったのかもしれない。そっとザクの腕が俺の体に回された。ザクの膝の間に座る形で抱きしめられる。背中からザクの熱が伝わってきてひどく安心した。

「ラルクさんの家にいれば追っ手に見つかることはないって聞いたけど、そんなの解決とは言えない」

 双子を匿った日、空を飛んでいたあの黒い影。あれは双子がキメラになってからずっと追いかけてくるそうで、見つかるとかなり激しい戦闘になるらしい。あれから逃げるためにも場所を転々としてるが、キメラだとばれてしまえばその場所にはいられないため、結局どこにも居つく事ができない。

「保安官にもバレてる。保安官相手じゃ誤魔化せない。いつかは見つかる」
「確かに、この俺様でも触っただけで寝込んだんだ。危険だろーな」
「だから俺」
「助けたいとか言い出すなよ」
「元はといえば、保安官にバレたのは俺をマッドハンドから助けたせいだ。俺のせいなのに、何もしないなんてできない」
「ったく...」

 深くため息をつくザク。お互い密着してるので体の動きがよくわかる。

「わかったよ、手伝えばいいんだろ」
「ありがとう」
「おお?」

 驚いてザクが顎を離した。何事かと振り向けばすぐそこにあった赤い瞳と視線がぶつかる。

「いやー素直にお礼言われたなーと、びっくりしただけだ」
「悪いか」
「けけ、なんか調子狂うな」
「...」
「へいへい、それで、お姫様は何をお望みかな?」

 ザクはそう言って不敵に笑った。

「姫じゃない。牧師だ」

 俺は立ち上がって街を見下ろした。

「?」

 ふと何かに気づく。ラルクさんの家のある方の空に、なにか黒いものが浮かんでるような。目を凝らしてみてみれば、それは双子を追ってるというあの黒い影だった。

「なん...見つからないはずなんじゃ...!」
「ん?どうした」
「ザク!あれ見えるか?」
「は?あの飛んでるやつのことか?見えっけど」

 その黒い影は、今まで見たことないほどの低空飛行ですぐにでも着陸しようとしていた。

「もしかして双子がみつかったのか?!な、何とかしないと!ザク!」
「ええ?!やだよめんどくせえ」

 げんなりとしてるザク。俺はそれをキッと睨みつけた。

「さっき手伝うって言ったよな」
「言ったけどよ~飛んでるやつ相手って結構めんどいんだぜ」
「昨日」
「...」
「お前に色々好き勝手された借りは?」

 俺が恨めしそうにその言葉をつぶやき、睨んでやったら流石のザクも気まずそうにした。

「うっ...はあ、わかったって仕方ねえ。舌噛むなよ」
「え、わあっ!!」

 突然腰にザクの手が回り、まるで樽を持ち上げるかのように肩に抱き上げられた。不安定すぎる姿勢なため手足をばたつかせる。

「まっまて、俺は...っ」
「いっくぜーーー!」

 膝を曲げ屈伸するザク。そして、次の瞬間

 ズドン!!!

 なんの脈絡もなく、飛び上がった。その反動で教会の瓦が勢いよく剥がれ飛ぶ。その様子がザクの背中越しにチラッと見えた。しかしそれもすぐに見えなくなり、色とりどりに光る街が目に入ってくる。あまりの早さで身動きが取れずザクにしがみつく事しかできない。

「~~~っ」
「おっ、見えてきたぜ」
「?!」

 少しスピードが緩んだので前の方を向く。言われた通り黒い影まであと100mほどの距離まで迫っていた。俺が歩いたら30分はかかる道を3分もかからずに・・・化け物か。

「黒い影はこっちに気づいてないっぽい?」
「だなー…って、おいおい。ありゃドラゴンゾンビじゃねーの」
「ド、ドラゴン??」

 あの伝説上の生物?!これだけ近くにきてやっとその形が見えてきた。しっかりとした骨格の翼に、ギザギザの歯が並ぶ口、長い尾。しかしところどころ肉が剥がれ、内臓や骨が見えておりグロテスクだ。

「なんか想像よりグロイんだな…」
「まあ、ドラゴンつってもドラゴンの体をゾンビがのっとって動かしてるだけだ、もしくはバラバラのドラゴンの体を結びつけて他の動物の脳みそを入れて動かしてるか。どっちにしろ出来損ないのキメラを消すためだけにしちゃ豪華だぜ」
「...」

 確かにその通りだ。そもそも何故そこまでしてあの双子を追う必要がある?もしかしたら何か企んでるやつがいるのか。

「ザク、この付近に怪しい奴がいないか探せ」
「は?ったく、次から次と」
「文句はいいから仕事しろ」
「イヘヘヘ!!わはーったって!」

 ほっぺを引っ張ってやる。届くのがそこしかなかった、けどそこそこ効いてるようなので良しとする。

「すー」

 ザクが大きく深呼吸をする。一瞬、パチパチっと静電気が体を駆け抜けた。ザクの方を見れば目を閉じて集中している真剣な顔があった。ザクは数秒後目を開け、ある方向を指差した。

「あそこだ、あそこに異様な高周波を放つ何かがある。その周波でドラゴンゾンビを操ってるようだな」
「じゃああそこに」
「多分、今回の犯人がいる」
「...行こう」
「おう」
「でも行くのは俺だけでいい」
「はあ?!」

 何言ってんだ?!と問い返される。当たり前の反応だろう。俺はもぞもぞと動き上半身を起こした。

「お前はこれを動けなくしてから来い」

 今すぐにでもラルクさん家に降りようとしてるドラゴンを指差す。もう街灯に翼がかすりそうなほどの低空飛行になっていた。

「なっ?!いや、ちょ、簡単に言ってくれるけどコイツ…って、聞けよ!!」
「ほら、降りるからもう少し地上に」
「ルト!」

 散々振り回されとうとう我慢できなくなったのだろう。ザクが声を荒げて俺の名前を読んだ。

「ルト、お前なあ!」
「時間がないのはわかるだろ。二手に分かれて動いたほうが効率的だ。それに、まあ大丈夫だって。危なくなっても今度はザクが来てくれるだろ?」

 今度はキメラじゃなくて、お前が助けに来い。そういえばザクは目を丸くした後大きくため息をついた。

「........はあ。危なくなったら逃げるんだぞ。俺様もできるだけ早く片付けるから」

 苦虫を噛んだような顔をしながら地上に近づいていくザク。納得してくれたようだ。近くの家の屋根におろされ俺は空を飛んでるザクに見下ろされる形になる。

「いいか!お前は俺様のだからな!変な奴に拐われたりすんなよ!」
「しないって」

 お前のものじゃないし。そう言ってやろうと思ったのにもうザクの姿は消えていた。

「はあ。―――よし!」

 そして俺も、先ほど指差された方(公園の奥の方)に向かって走り始めた。


 ***


「ベータ、目標に接近中、距離30、12秒後に戦闘開始」
「ふむ」

(なんだあいつら..)

 ザクがいっていた場所に向かうと、そこに待ち受けていたのは機械のように全く感情の入ってない様子で言葉を発するナース姿の少女と偉そうに頷く白衣を着た男だった。

(多分、あいつらが犯人だよな)

 白衣の男の足元に四角く大きい鉄の塊っぽいのが置いてある。それがザクの言っていたドラゴンを操ってる高周波機械、なのだろう。ということはあの白衣男が双子を追う犯人か。飛び出すタイミングを見計らっていると少女がぴくりと体を揺らし、空を見上げた。

「エマージェンシー。不確定要素乱入、ベータ妨害を受けてます」
「ふむ、排除命令」
「攻撃レベルを一段階向上...状況改善されません」
「ほう?手強いな」

 (不確定要素ってザクのことだよな?)

 よし妨害はうまくいってるみたいだ。俺もそろそろ動かないと。音を立てないよう草むらの中で身構える。見たところ二人共人間に見える...けど悪魔が化けてる可能性もあるためポケットの聖書を取り出しておいた。

「ベータ、損害拡大、自己修復限度を超えています、一度撤退し体制を整え直す事を推奨します」
「いや続行する。うるさい犬に嗅ぎつけられた、この機を逃せばもう実験は行えまい」
「ベータ最終命令、破壊続行」
「ふふ、イレギュラーこそ実験の醍醐味だ...そう思わんかね?ルト牧師?」
「!!!」

 草むらの中でびくりと震える。

(いっ今、俺の名前を呼んだ・・・?!)

 焦ったせいで手元がずれ聖書を落としてしまう。聖書が落ちる瞬間ジャリっと大きな音が出た。ゆっくりとこっちを向く白衣男。蛇に睨まれたかのように、俺の体は固まっていた。

「ようこそルト牧師、吾輩の実験のただひとりの観客だ、歓迎するよ」

 手品師のように仰々しく白衣をめくり頭を下げる。少女はこっちを向かずにドラゴンに指示を与え続けていた。

「観客だと」
「そう、吾輩の可愛い実験動物同士の殺し合いさ」
「っ!!」
「いやあ、作っておいてあれだが人間なんかを材料にしたせいでいくらか脆いキメラになってしまってな。ベータのちょうどいい力試しになるかと思って処理せずにいたわけだ」
「あんたが、カプラたちを?!」
「そうだ。吾輩はアルベルト・カッター。モンスターミキサーと呼ばれてたりする。こっちのはシグマ、助手だ。」
「も、モンスターミキサー?」
「君に分かるように言うなら、存種を組み合わせ創造主を超える種を作ろうと目論んでる異端科学者、というところか?」
「創造主を超える?頭がおかしいんじゃないか」

 睨んでやるとハハッと乾いた笑いを響かせた。

「はは、レインの報告通りだな」
「!!?」

(レイン??!)

 一気に体中から血の気が引いていくのがわかる。拳を握り締めすぎて白くなっていた。

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