牧師に飼われた悪魔様

リナ

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第七章「純潔の一角獣」

★悪魔と牧師の恋の歌

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「で?」
「約束する!!ぜってー破らねーから!」

 見えないしっぽを振り喜ぶザク。仕方なく体を起こし布団をどけた。隣に移動してきたザクが、優しく体中に口付けてくる。昨日とは違って、お互い焦ってない。確かめ合う感じの触れ合いだった。

「ルト、もっとこっち」
「ん」

 ザクの足の間に座る。なんか、近いと照れくさいな。目をつぶってやり過ごそうとしたが、愛撫が始まるとそれも無駄に終わる。

「なあルト、一回って、俺様のが一回ってこと?」
「ん、え?…ああ、えっと」

 一回という約束。もしそれがザク一回分だとしたら。ふと奴の股間を見る。存在感のあるそれを見て、すぐ目をそらす。ダメだ。こいつなら、一日中出さずにやるってことも考えられる。ここはやはり。

「俺ので、一回」
「ルトが出たら終わりか...」
「っんん、わかったらさっさとやれ、もう眠い、からっ、んう!」
「けけ、眠いのは今だけだぜ」

 太腿に赤い舌が伝っていく。その感覚に足が勝手に動いてしまう。声もどんどん我慢できなくなってきた。

「ん、はあ...あっ」
「...ルト..」

 ザクの腕に入る力が強くなる。俺も少しずつ体が熱くなってきてもぞもぞと足を動かし始める。

「ザ...ザクっんんっ」
「...ん」

 どんだけキスすれば気が済むんだよと、顔を上げて睨めば、ザクの赤い瞳がすぐそこにありドキっとした。目のやり場に困りやつの鎖骨あたりに視線を落とす。

「ルト、こっち見ろ」
「・・・やだ」
「なんで」
「恥ずかしい、目、閉じて、しろよ...」
「ん?見てたいじゃん」
「はあ?」
「反応とか嫌がり方とか」
「...お前やっぱ悪魔だな」
「そりゃそうだぜっと、」
「うわっ」

 言葉の最後で押し倒される。俺の頭を押さえて、比較的ゆっくり倒していた気がする。そんな仕草に奴なりの気遣意を感じた。ザクの舌が胸からへそへ移動し、やがてその下にのびる。体が自ずと反応してしまうそこは、もうすっかりできあがっていて、見られるだけでも達してしまいそうなほど恥ずかしかった。追い込むように、つーっと裏側に舌を這わされビクンッと腰が揺れる。

「んもっやだっ..」
「なんでだよ」
「みる、な!馬鹿っ!」
「だからなんでだよ」
「~~っもう、出るってば!」
「はあ?それは困る!」

 ザクが咄嗟に手を伸ばす。その指先は俺の熱くなったそれの根元にいき、出せないように強く握り締められた。せき止められた熱が押し寄せてきて眩暈がする。

「なっっ、ザクっやめ」
「はーいそのまま後ろ向けー」
「ザク!!」

 俺の制止を全く気にせず、そのままベッドにうつ伏せにさせられた。嫌な予感がした瞬間と同時に、下半身への異物感。熱いものが触れてきて、濡れる感覚がする。ガバッと下を向くとザクがそこを舐めていた。なんかもう恥ずかしさを通り越してショックを受ける俺。とりあえず奴の頭をおさえどかそうとするが馬鹿力のせいで全く意味がなかった。

「っザク!やめろっそこ、汚いって!」
「んっ...ふ、ろあがりだろ?」
「そこでしゃべんなっ」

 馬鹿!!そう言おうとしたが結局言葉は出せずに終わった。与えられる感覚に耐えるしかできないこの状況は辛すぎる。腕を下に伸ばしせめて自身の熱くなったものだけでも開放しようとするが、ザクの指が邪魔で思うように動かせない。瞳に大粒の涙が溜まっていく。

「~~ざくっ...ううっ、くる、しいっ」
「・・・はあ。お前が言ったんだろ?一回って」
「っ...こんなっ」

 確かに、一回とはいったがこんな風に焦らされるなんて聞いてない。頭を横に振り、限界だと伝える。ザクはため息をつき俺の体から離れた。ただし、根元を抑える指はそのまま。

「わかった」
「!!」
「じゃあ、可愛くおねだりしてくれたら出させてやるよ」
「はあああ?!」

 何言ってんだコイツ!信じられんという顔で見てると肩をすくませるザク。

「まあ、俺様はまだまーだ、ゆっくり攻めてやってもいいと思ってるんだぜ?」
「ー...っう」

 ニヤニヤと楽しそうに笑う。悪魔らしいザク。俺はそれをただ睨むことしかできなかった。だって俺の吐き出す答えなんて一つしかない。苦しいほど熱くなった下半身をなるべく考えないようにして俯く。

「~~っ」
「っけけ、どうする~?」
「ルトー?睨むのはおねだりじゃねーぞ」
「...っ」
「ほら、言ってみ?ここにザク様のをいれてくださいって」
「っ!!!」

 言えるか馬鹿!!!!・・・と、言いたいところだったが、割と本気で限界だった。これ以上焦らされるなんて考えるだけで気が狂いそうだ。覚悟を決め、仰向けになる。さっきまで舐められていた部分を指で触りなるべく小さな声でぼそっと言った。

「っ...こ、ここに...ザクの」
「俺様の~?」
「...い、」
「い~?」
「ーーっいれろ!!馬鹿ザク!」
「ああ?最後がダメだな、おしい~」

 せっかくあんなに頑張って言ったのに、ザクは面白そうに笑ってるだけだった。

(このっっ悪魔!!!)

 聖書で叩いてやろうかと思ったその時

「ま、いいや。初めてだったんだしこんなもんか」
「!!!」

 ぐちゅっと熱いものがあてがわれる。ま、まさか・・・思考が追いつくと同時に、それに貫かれた。

 ググッぐちゅんっ

「ーっああああっ??!...っくう、い、ハアッ」
「あ?痛かった?」
「いっ...あ、っ」

 内臓を押し上げるような圧迫感に、言葉がうまく吐き出せない。魚のようにパクパクと口を動かし続けた。

「はあっ、はっ」

 かなりの質量が体の中を押し上げてくる。この感覚は二度目だが、慣れる、ことはできなかった。というか一生慣れられない気がする。ぜえぜえと必死に息を整えていると、ザクがいれたまま上半身を倒してきた。ちゅっと優しく俺の頬に口づけてくる。

「おい、大丈夫か、ルト」

 昨日の今日でほぐれていたのか痛みはない。ただ単に腹を押し上げる息苦しさがつらい。生理的な涙が溢れてくる。

「ルト~」
「っん、ば、か...」
「泣くなよ、ほら」

 俺が流した分の水分を補給させるためなのか、ザクが口伝いで水をのましてくる。さっさと終わらせて自分で飲ませたほうが早いだろ...と内心つっこむ程には余裕が出てきた。あと、自身の根元を押さえてる指のことも思い出した。いい加減解放してくれと抗議する。

「もうっいい、からっ!!..指、どけろって」
「だーめ、ゆび、外したら出すだろ」
「~~っ、でもっ..も、」

 俺結構限界なんだけど、とつっかえながら言うと

「わかってる、長引かせねーから」

 何故か顔をしかめさせたザクが動き出した。最初から動きがかなり激しい。それによってこみ上げてくる快感に俺はもう声を我慢する事はできなかった。

「ううっ...んんああっ..い、ああっ」
「ルト...ハア..ちくしょっ、かわい・・・っ」
「くない!んんっ、あ、ううっ!」
「ハア...最高、、ルト、イキたいか?」
「あっ、たり、ま...あああっ」

 動くたびに声が途絶え言葉にならない。それでも通じたようでザクは薄く笑う。そして中に入ってるザクのそれが熱く脈打ってるのを感じた。そろそろ限界に近いのだろう。見上げると不敵に笑うザクと目が合った。行為の途中、汗で顔にひっついた髪をどかしてくれる。汗ばんだ筋肉、喋る度に動く喉仏、不敵に笑う顔。より鮮明に見えた赤い悪魔の姿に俺は見蕩れてしまった。

「ルト」

 突き上げながらザクが口を開いた。牙の見える口元が俺の目の前まで来る。お互いの吐息を感じる距離。こうやって交わっていると、今日のすれ違いが何でもないことに思えた。騙し騙されすれ違う俺達だけど・・・それは人間と悪魔だからじゃない。人間同士でもすれ違うし騙し合う。相手が誰であろうと不安になる。

(悪魔とだからうまくいかないわけじゃない・・・これが、普通なんだ)

 相手を想い不安になったり、触れ合って愛しいと思うこと。

(これが恋をする・・・ってことなんだ)

 赤い瞳に魅せられながら、そんな事を思った。

「ああっ...ザク」
「ハア...ルト、..ルトは、俺様だけに愛されてればいいんだ」
「ザクっ、んっ、あっ..ん、あっああああ!!」

 今までにない速さで突かれ思考が止まる。ぐぐっとザクのが大きく膨れ上がった。

「っく...ルトっ」

 名前を呼ばれた時、指が離され、俺はやっと溜まりに溜まった欲望を解き放つことができた。

 どくっどくんっ

「う、あっああああああっ」

 散々焦らされた快感は体を大きく震わせて、ザクの自身が埋まっている後ろも強く締め付けてしまう。

「ルト...っう...」

 その締め付けにザクが低く唸った。俺の中でビクビクと暴れるそれが一際大きく脈打ち

 どくんっどぷっ、どくっ

 あっけなく弾けた。じんわりと中が熱く濡れてくる感覚を感じながら、脱力する。全てを出し切るように腰を揺らしてくるザクのしつこさに苦笑いしつつ、この熱い液体は求められた証拠なのだと少し嬉しくなった。

(てか、また中・・・)

 そこまで考えた所で、俺は意識を手放した。


 ***


「最悪。」
「すいません」
「死ね。」
「すんませんでした」
「...馬鹿。」
「好き(*´∀`*)」
「調子に乗るな!!!」

 ベッドで隣に寝転がっていたザクを蹴落とす。背中から落っこちてそれなりに派手な音がした。いい気味だ。窓の外から鳥たちのさえずる声が聞こえてくる。もう朝だった。いい天気で雲一つない。だが、腰は痛いし、体中色々あとが付いてるしで、最悪だった。あれ、なんかこれデジャブ・・・。

「もうお前とはやらない」
「えええ?!そりゃないだろ?!」
「ふん」
「るーとー!」

 ベッドから出る。すると不思議なことに腹に違和感がない。

(あれ、中に出されたはずなのに)

 よくよく見れば、痕は残っているが比較的体は綺麗になっていた。あれ、シャワーに入ったっけ、俺。

「あ、掻き出しといたぞ」
「!!!」
「なんか聞いたんだけど、人間の雄って中で出すと腹壊すんだって?」
「...っ」

 誰のせいだよ!とか思いながら少し感心した。前回はお前、そんなこと知らずに放置していたのに。俺の為を思って行動してくれたようで少しだけ嬉しかった。ほーーーんの少しだけど。(ぶっちゃけ中で出すなと言いたいところだ。)

「って!その情報ってまさか栗毛の」
「ん?そうそうアイツに聞いたんだよって、どこ行くんだよルトー!」
「知るか!!バカ!!!」

 感心したあとにとんでもないことを言われ、ショックを隠せない。

(そんな話したのか、あの男と!まさか触ったり、き、キスとかしてないよな??)

 とりあえず部屋を飛び出し廊下にいく。すると廊下で何かとぶつかり俺は後ろに倒れそうになった。

「おっと、大丈夫か、ルトよ」
「だ、だいじょ・・・!?し、シオン!???」
「やあ、おはようルト」
「お、おは」

 そう言いかけ、とあることに気づく。

 今、俺、裸だった。

 シオンから隠れようと廊下に戻ろうとする、が体を支えてくれるシオンの腕が俺から離れようとしなかった。

「え??」
「ルト、お前はいつから裸で寝る習慣が?というより、この匂いは...」
「あ、あの、えっと、シオ...」
「ルトー!今度からは中で出さねーからー!だからやらないなんて言うなよー!」

 大音量で衝撃の事実を明かすザク。俺は顔を真っ赤にさせ、シオンの方を見れなくなった。

(あんの、バカ!!!!)

 少し経ってから、支える腕がふるふると震え始め・・・俺はおずおずと顔を上げた。

「・・・シオン?」
「こ、この犬!!!!よくもルトを!!」
「あ?お前来てたのかよ」

 ザクも廊下に出てきて三人並んだ。

「この匂い、おかしいと思えばっっわたしの大事なルトを!!汚したのか!!犬の分際でー!!」
「いや、おち、おちつけシオ・・・」
「ルトは黙っていなさい!」
「は、はい」
「で?弁解はないのか?犬よ!」
「あんだよ、俺達は同意の上だぞ」
「ほう?」
「“今回は”な」

 さっきの腹いせに、ぼそっとつぶやいてやる。その言葉でシオンはまた怒りを爆発させた。

「今回とは何だ!!説明しろ!!!」
「えーっと...」

 目線を泳がせどこともない天井を見るザク。それを血管を浮かせて怒鳴るシオン。ちょっと面白い図だった。ていうか、いい気味。

「最初がーそのー」
「最初がなんだ!!」
「無理矢理奪っちゃった★」

 てへぺろと舌を出すザク。その姿をみてシオンは怒りを爆発させた。

「死ね!この獣!!!!!」
「けけっ怒り方がルトと似てんな~」
「ふざけるな!!少しは反省の素振りを」

 いつもは隠してるはずの角を、額からのぞかせ怒っているシオン。楽しそうにひらひらとシオンからの攻撃を避けるザク。

「...はははっ」
「?」
「!?」
「なんだかんだで、仲いいのかもしれないなお前らって」

 俺はこみ上げてきた笑いを抑えず、場違いに笑ってしまった。それに驚く二人。しかしそのあとシオンが攻撃の手を止め自身の上着を俺にかけてくれた。

「ルトの笑顔が、やっと見れたな」

 綺麗な顔に優しい微笑みが広がる。拾われた当初も、この笑顔に安心させられた覚えがある。

「シオン..」
「昨日からずっと、困った顔ばかりさせていたから・・・嬉しいぞ」
「シオン・・・俺さ」
「わたしは今日の昼の公演で次の街へ移動しなくてはいけない。ルト達とはもう会えないだろう。」
「..!!」
「とは言ってもまた公演をしにまた街を訪れることはあるだろう。その時は見に来てくれるか?」
「!!も、もちろん!」
「そうか」

 にこりと、微笑み、優しく額に口づけられる。その時思い出した。

 小さい頃、俺が寝込んだときよくこうやってシオンが口付けてくれた。おまじないのようなもので、それをすれば必ず治ったのだ。懐かしい、暖かい記憶。背後にいたザクがびくりと体を揺らしたのを目の端で捉えながらふと考えこんだ。

(確か、一角獣にとって、角へのキスは親愛の印なんだよな)

 膝立ちで口付けてきたその顔に近づく。

 ちゅ

 そして白銀に光る角に軽く口づけた。驚きに目を開くシオン。衝撃で石化するザク。

「ルト…?!」
「いってらっしゃい、シオン」

 驚くシオンを起こしてあげながら声をかけた。照れくさいので背中を押し玄関に向かわせる。ザクは動こうとしない。いや、ショックで動けないのか。

「シオン、俺はここにいるから、いつでも寄ってくれ」
「ああ、ルト。ありがとう嬉しいよ」

 抱きしめられ香水が体を包んだ。昨日と違い少し気分の明るくなる香水だった。

「ルトも、何かあればすぐに言いなさい」
「うん」
「すぐに助けに行くからな」
「ああ」
「あの獣に何かされそうになったら」
「~~も、もう行けって!遅れるぞ!」
「そうだな、ではなルト」
「ん、またな」

 手を振って送る。何度か振り返ったあと、シオンは教会から去っていった。ため息をついて玄関の中に入る。

「あ、これ・・・上着」

 借りたままだった!!しまった!

「仕方ない・・・昼の公演で返すか・・・」
「ルト!」
「ん?ぶわっ」

 名前を呼ばれ次の瞬間倒れていた。ザクに押し倒されたようだ。

「な、なんだよ!」
「浮気!今の浮気だろ!てか大胆すぎる!!旦那の前で堂々と浮気しやがって」
「は?お前といつ付き合いましたか」
「なあ?!冷たいこと言うなよ!三度もえっちした仲だろ~!」
「最初のはカウントしません」
「うぐぐ」

 なんとか体を引き剥がし体を起こす。隣をチラッと見れば、むくれているザクが押し倒した姿勢のまま動きを止めていた。

「その節は、真に申し訳アリマセンでした・・・」

 どうやら十分反省したようだ。俺はため息をついて、ザクの前髪をどける。朝起きたばかりなので眼帯もしてない。不思議そうに俺を見つめてくるザクの視線をなるべく感じないようにして、額に口づけた。

 ちゅ

「っ!!!」
「ほら、これでいいだろ」

 シオンにやった時より少しだけ長めにしてやる。するとザクはぱあっと顔を輝かせて、熱くなった腰を押し付けてきた。

「~~~ルト!!」
「うわっ!何発情してるんだよ!!」
「もういっかい!」
「ーっ!!だからやらないってば!馬鹿ザク!」

 俺の言葉を全く聞かないザクに、なんとか聖書を叩きつけて黙らせるまで、もみくちゃにされるのだった。




 その後、俺達はシオンの公演を見に行った。

 ザクは嫌がりつつも最後まで黙って聞いていたのを見ると、歌は嫌いじゃないみたいだ。そんなことを考えていたら、二時間の公演はあっという間に過ぎていった。シオンに上着を返し、軽く挨拶を交わし俺達は別れた。

 帰り道、俺はザクとどこの言葉かもわからない外国の恋の歌を一緒に歌って帰った。

「~♪」

 悪魔と牧師の恋の歌も、どこかの国にはあるのだろうか…なんて思いを馳せながら。


 end
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