上 下
8 / 96
第六話

腐男子、本屋の店主に会う

しおりを挟む
「はぁっ……はぁっ……」

 どれ位の時間走っただろうか。
 無我夢中で走っていたら、いつの間にか街道に出ていた。
 結構な距離を走ったから、ここまでくればもう大丈夫だろう。
 俺は街道横にある、青々と茂っている木の下に座り、陰になっている部分で少し休む事にした。

 この世界に来てまだ間もないってのに早速時間停止の能力を使ってしまった。
 確か一日に一回しか使えなかったハズ。
 再び先程の様な事が起きてしまったら一貫の終わりだ。
 しかし、この世界には男しかいないらしいけど、皆が皆さっきの熊男やエルフ男の様にいきなり襲ってはこない……と信じたい。
 とにかく今は食べ物が欲しい。あと水も飲みたい。
 お腹が空きすぎて、喉も乾きすぎて死にそうだ。
 体育座りで下を向いて項垂うなだれているうちに段々と眠気が襲ってきて、俺は疲れからそのまま眠ってしまった。


* * * * *


「……ねぇ……ねぇキミ、大丈夫?」
 誰かが俺の肩を揺すっていた。
 はっと気がついて目を覚ますと、目の前にランプを持った、茶髪のくりんくりんした頭の、背の小さい男の子がかがんでこちらを覗き込んでいた。
 辺りは一面真っ暗になっている。夜まで眠りこけていたようだ。
 男の子の背には大きなリュックの様なものが背負われていた。
 
 ふと、先程のエルフ男達との出来事がフラッシュバックし、思わず後退りしてしまった。

「あ、ごめんね、驚かしちゃったかな。
 僕はノイン。
 この街道の先にある本屋を営んでて、仕入れ先から帰って来たところなんだ」

 本屋?
 この世界にも本屋があるのか……
 こんな小さいのに本屋営んでるって、凄いな。
 さっきのエルフ男達の事もあるし、一応念の為鑑定能力を使ってみた。
 再び目の前に色々な情報が表示されたので、参考になりそうな項目だけ流し見る。


【名前 ノイン】
【年齢 75歳(人族ヒューマン年齢だと24歳位)】
【種別 ドワーフ】
【性行為時立場 受け】
【性的嗜好 ?】


 お、さっきのエルフ男達と違ってこの人は受けだ。
 年齢は人族ヒューマンでいうと24歳……背が小さくて少年みたいな見た目なのはドワーフだからか。
 最後の一行はハテナになってるけど、俺が襲われる心配は一先ひとまず無さそうだ。

「いえ、こちらこそすみません。俺、ヤマトっていいます。
 実は気がついたら森の中で倒れていて、何故倒れていたか全然思い出せなくて。
 とりあえずあてもなく、ここまで歩いてきたんです」

 そう話すとノインさんは
「……そう、それは大変だったね。
 何か悪い事に巻き込まれたのかな。
 この辺は昼は比較的安全な場所なんだけど、夜は時々モンスターが出没するからここで寝るのは危険だよ。
 よかったら僕の本屋の二階、一部屋空いているから、そこに泊まっていくといい」
 と言いながら俺の肩をポンと叩き、コッチコッチと手招きして歩き始めた。
 
 こ、この人……良い人だ……!
 嬉しさと感動のあまり涙が少し出た。
 ブレザーの袖でゴシゴシ目元を拭き、俺は小走りでノインさんの後を追った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

病んでる愛はゲームの世界で充分です!

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
ヤンデレゲームが好きな平凡男子高校生、田山直也。 幼馴染の一条翔に呆れられながらも、今日もゲームに勤しんでいた。 席替えで隣になった大人しい目隠れ生徒との交流を始め、周りの生徒たちから重い愛を現実でも向けられるようになってしまう。 田山の明日はどっちだ!! ヤンデレ大好き普通の男子高校生、田山直也がなんやかんやあってヤンデレ男子たちに執着される話です。 BL大賞参加作品です。よろしくお願いします。 11/21 本編一旦完結になります。小話ができ次第追加していきます。

無自覚美少年のチート劇~ぼくってそんなにスゴいんですか??~

白ねこ
BL
ぼくはクラスメイトにも、先生にも、親にも嫌われていて、暴言や暴力は当たり前、ご飯もろくに与えられない日々を過ごしていた。 そんなぼくは気づいたら神さま(仮)の部屋にいて、呆気なく死んでしまったことを告げられる。そして、どういうわけかその神さま(仮)から異世界転生をしないかと提案をされて―――!? 前世は嫌われもの。今世は愛されもの。 自己評価が低すぎる無自覚チート美少年、爆誕!!! **************** というようなものを書こうと思っています。 初めて書くので誤字脱字はもちろんのこと、文章構成ミスや設定崩壊など、至らぬ点がありすぎると思いますがその都度指摘していただけると幸いです。 暇なときにちょっと書く程度の不定期更新となりますので、更新速度は物凄く遅いと思います。予めご了承ください。 なんの予告もなしに突然連載休止になってしまうかもしれません。 この物語はBL作品となっておりますので、そういうことが苦手な方は本作はおすすめいたしません。 R15は保険です。

勇者の股間触ったらエライことになった

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。 町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。 オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

平凡くんの憂鬱

BL
浮気ばかりする恋人を振ってから俺の憂鬱は始まった…。 ――――――‥ ――… もう、うんざりしていた。 俺は所謂、"平凡"ってヤツで、付き合っていた恋人はまるで王子様。向こうから告ってきたとは言え、外見上 釣り合わないとは思ってたけど… こうも、 堂々と恋人の前で浮気ばかり繰り返されたら、いい加減 百年の恋も冷めるというもの- 『別れてください』 だから、俺から別れを切り出した。 それから、 俺の憂鬱な日常は始まった――…。

全寮制男子高校生活~行方不明になってた族の総長が王道学園に入学してみた~

雨雪
BL
スイマセン、腐男子要素どこいった状態になりそうだったんでタイトル変えました。 元、腐男子が王道学園に入学してみた。腐男子設定は生きてますがあんま出てこないかもです。 書いてみたいと思ったから書いてみただけのお話。駄文です。 自分が平凡だと本気で思っている非凡の腐男子の全寮制男子校での話。 基本思いつきなんでよくわかんなくなります。 ストーリー繋がんなくなったりするかもです。 1話1話短いです。 18禁要素出す気ないです。書けないです。 出てもキスくらいかなぁ *改稿終わって再投稿も終わったのでとりあえず完結です~

総受けなんか、なりたくない!!

はる
BL
ある日、王道学園に入学することになった柳瀬 晴人(主人公)。 イケメン達のホモ活を見守るべく、目立たないように専念するがー…? どきどき!ハラハラ!!王道学園のBLが 今ここに!!

処理中です...