上 下
81 / 96
第七十九話

腐男子、お願いされる

しおりを挟む
「ヤマト様、おはようございます。朝食の準備が出来ましたので食堂までお願いします」
「……はーい……」

 ドアのノック音と聞き慣れない声で目を覚まし、かすれた声で返事をしてゆっくりと起き上がった。

(何だろう……疲労感がハンパない……)

 ぐっすり夢も見ず熟睡した筈なのに体がだるく、石でも抱えているかの様に重かった。
 でもまた今日から仕事が始まる。俺はベッドから下り、のそのそと仕事着に着替えて洗面所で顔を洗い、食堂へと向かった。

 食堂へ入ると既にキールが朝食をとっていた。俺はキールの隣の椅子を引きながらおはよう、と挨拶をして席に着いた。すると使用人の人達が慌ただしく俺の目の前に朝食を並べてくれたのでありがたく頂いた。
 今日の朝食はチーズとベーコンが上に乗っているホットケーキとコーンスープ、目玉焼きにグリーンサラダ。
 お腹が空いていたのでどれも凄く美味しく感じた。特にホットケーキの味に感動した。
 ホットケーキって、元の世界ではオヤツでしか食べた事がなかったけど、朝食として食べても美味しいんだなぁ。

 ナイフとフォークで残りのホットケーキを一口大に切り終えミルクを飲んでいると、先に朝食を食べ終えたキールが頬杖をついて俺の方を向き、小声で話しかけてきた。

「ヤマト……昨日の夜のエバン君とのセックス、かなり気持ち良かったんだね」
「…………!!」

 危うく飲んでいたミルクを噴きそうになった。
 必死に心を落ち着かせて、口に含んでいるミルクを二回に分けて飲み込んだ。

「な、何だよキール、イキナリ」
「昨日の夜、トイレに行く途中にエバン君の部屋の前を通りがかったら、ヤマトのあえぎ声が聞こえてきて。
 ヤマトが今まで聞いた事の無い様な声を出してたから、気になってドアを少し開けて覗いちゃった」
「えっ!? キール、覗いてたのかよ!!」
「つい……ね。そしたらヤマト、ペニスに何か挿れられたままエバン君に後ろを突かれて…………出したいよぉって必死になって懇願してて……
 あっ、ヤバイ、思い出したらまた勃ってきた……」

 キールが段々と荒い息遣いになり、口から出たヨダレを指で拭きながら上半身を俺の方へ近づけてきた。

「……俺、ヤマトのあの姿を見た後部屋で何回も一人で抜いちゃったんだ。
 ねぇ、俺とセックスする時も、エバン君と同じ事をヤマトにやってもいい?」
「えっ!? ヤ、ヤダよ……チンコにアレ挿れられるとゾワゾワ寒気がしたし、出したくても出せないし……
 それにキールはあぁいう物使った事ないだろ?」
「エバン君にやり方聞いて月曜まで勉強しておくから。ヤマトが痛くないように俺、頑張るから。
 だから一回だけ、ね、お願い、ヤマト」

 キールは両方の手の平を合わせて頭を下げた。
 俺はカップに入ったコーンスープを飲みながら少し考えた。
 正直、チンコにアレを挿れられるのは勘弁だけど、栓をされている間何度もドライでイッたし、何度も我慢した後引き抜いて一気にイッた時は気絶する位凄く気持ちが良かったのも事実だ。
 相手はキールだし、一回だけなら……別にいいかな……

「…………ん……分かった、一回だけなら」
「ホント!? ‪嬉しい!! ヤマト大好き!!」

 キールは俺の腰に手を回して頬に何度もキスをしてきた。
 手に持ったままのコーンスープがこぼれそうになったので慌ててテーブルへと置いた。
 カウンターの向こうにいる使用人の人達が、微笑みながらコッチを見ていた。



* * * * *



 朝食を食べた後、使用人の一人のマルさんが俺とキールを馬車で本屋まで送ってくれた。どうやら仕事のある日は使用人の人が馬車で送り迎えをしてくれるらしかった。ありがたい。
 マルさんは閉店時間にまたお迎えにあがりますと言い、帰っていくのを見送ってから店の裏口から中へ入った。

 レジカウンターで既に作業をしていたノインさんに挨拶し、キールと二人で手分けして掃除と開店準備をした。
 休み明けの今日は品出しをする本の量が多く、加えて返本作業などもあったので開店前から忙しく、あっという間に時間が過ぎていきその日は終わった。

 閉店作業と明日の準備を終え、ノインさんに帰りの挨拶をしてキールと外へ出ると、既に使用人のマルさんが馬車を本屋の横に止めて待っていてくれていた。
 マルさんに挨拶を先に乗りこみ、後に続いてキールが乗り、俺の横へ座った。
 キールがマルさんにお願いします、と声を掛けると馬車がゆっくりと前へ進みだした。

 ポツンポツン、と等間隔で立っている魔石を使った灯りが暗い夜の街道を照らしている中、馬車の車輪が土を跳ねあげながら回る音だけが辺りに鳴り響いていた。
 この辺りは夏でもそんなに気温も上がらず、昼夜とわずカラッとしているので過ごしやすい。
 馬車に揺られながら、ガラスが無い窓枠から入ってくる涼しい夜風が気持ち良くてうつらうつらとしていると、キールが手をギュッと握りしめキスをしてきた。

「っ……! だ、駄目だって」
「何で? マルさん、見てないよ」

 キールに抱き寄せられ、更に何度もキスをされた。
 舌が口の中にズルッと入ってきて、嫌がって逃げている俺の舌を絡み取り、円を描くように段々と激しく舌を動かしてきた。

「ん……ふぁ……あ……!」
「ハァ……好き、ヤマト好き」

 キールが舌をすぼめて口の中に出し入れし、セックスを連想させるように舌を動かしてきた。
 一気に下半身に血液が集まって硬くなっていくのが分かる。それをキールは目ざとく見つけ、服の上から掴まれ、手で擦られた。

「ん……あっ! や、やめ……」
「フフ、キスだけでこんなにガチガチにしちゃって。可愛いなぁ、ヤマト。
 今日のセックス担当はディルトさんだっけ? でもディルトさん、今日も夜勤らしいから、明日の朝方までこの状態で待つ?」

 キールに指でコスコスされながら再びディープキスで口の中を犯され、馬車の座席にゆっくりと押し倒された。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

王道学園のモブ

四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。 私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。 そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。

全寮制男子高校生活~行方不明になってた族の総長が王道学園に入学してみた~

雨雪
BL
スイマセン、腐男子要素どこいった状態になりそうだったんでタイトル変えました。 元、腐男子が王道学園に入学してみた。腐男子設定は生きてますがあんま出てこないかもです。 書いてみたいと思ったから書いてみただけのお話。駄文です。 自分が平凡だと本気で思っている非凡の腐男子の全寮制男子校での話。 基本思いつきなんでよくわかんなくなります。 ストーリー繋がんなくなったりするかもです。 1話1話短いです。 18禁要素出す気ないです。書けないです。 出てもキスくらいかなぁ *改稿終わって再投稿も終わったのでとりあえず完結です~

総受けなんか、なりたくない!!

はる
BL
ある日、王道学園に入学することになった柳瀬 晴人(主人公)。 イケメン達のホモ活を見守るべく、目立たないように専念するがー…? どきどき!ハラハラ!!王道学園のBLが 今ここに!!

無自覚美少年のチート劇~ぼくってそんなにスゴいんですか??~

白ねこ
BL
ぼくはクラスメイトにも、先生にも、親にも嫌われていて、暴言や暴力は当たり前、ご飯もろくに与えられない日々を過ごしていた。 そんなぼくは気づいたら神さま(仮)の部屋にいて、呆気なく死んでしまったことを告げられる。そして、どういうわけかその神さま(仮)から異世界転生をしないかと提案をされて―――!? 前世は嫌われもの。今世は愛されもの。 自己評価が低すぎる無自覚チート美少年、爆誕!!! **************** というようなものを書こうと思っています。 初めて書くので誤字脱字はもちろんのこと、文章構成ミスや設定崩壊など、至らぬ点がありすぎると思いますがその都度指摘していただけると幸いです。 暇なときにちょっと書く程度の不定期更新となりますので、更新速度は物凄く遅いと思います。予めご了承ください。 なんの予告もなしに突然連載休止になってしまうかもしれません。 この物語はBL作品となっておりますので、そういうことが苦手な方は本作はおすすめいたしません。 R15は保険です。

病んでる愛はゲームの世界で充分です!

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
ヤンデレゲームが好きな平凡男子高校生、田山直也。 幼馴染の一条翔に呆れられながらも、今日もゲームに勤しんでいた。 席替えで隣になった大人しい目隠れ生徒との交流を始め、周りの生徒たちから重い愛を現実でも向けられるようになってしまう。 田山の明日はどっちだ!! ヤンデレ大好き普通の男子高校生、田山直也がなんやかんやあってヤンデレ男子たちに執着される話です。 BL大賞参加作品です。よろしくお願いします。 11/21 本編一旦完結になります。小話ができ次第追加していきます。

姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王

ミクリ21
BL
姫が拐われた! ……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。 しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。 誰が拐われたのかを調べる皆。 一方魔王は? 「姫じゃなくて勇者なんだが」 「え?」 姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?

風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。 俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。 そう、“副”だ。あくまでも“副”。 だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに! BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。

処理中です...