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第七十ニ話
腐男子、少しいじける
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エバン君と一緒に食堂に入ると、カウンターで仕切られた奥の厨房の方でエプロン姿のキールが朝ご飯を作ってくれていた。
「キールごめん、俺も手伝うよ」
「いや大丈夫、もう出来たからヤマトとエバン君は席に着いてて」
キールがカウンターの上に完成した朝ご飯を並べていたので、エバン君と手分けしてテーブルへと運ぶ。
大きな長方形の木製テーブルには真新しい白いテーブルクロスがかけられ、テーブルの中央には花が飾られていた。
お皿を横並びに置き、全て並べ終えたところで席に座る。間を開けて左右の席にキールとエバン君が座り、二人に挟まれる形で俺は真ん中に座った。
今日の朝食はポテトサラダのサンドイッチとグリーンサラダ、スクランブルエッグにベーコンを焼いたもの。
どれも凄く美味しそうで、いただきますの挨拶もそこそこにサンドイッチにかぶりついた。
「んんー、美味しい」
「良かった、ヤマトの口にあって。まだあるからどんどん食べて」
「ホント? ありがとー」
左横にいるキールがニコニコしながら、余分に作ってあるサンドイッチが乗ったお皿を俺の前に置いた。
俺の右横にいるエバン君もサンドイッチを一口二口食べ、牛乳と一緒に飲み込んだ。
「本当ですね、美味しいです。キールさん、料理お上手なんですね」
「え、あぁ…………しばらく一人暮らししてたからある程度のものは作れる」
「フーン……まぁ、僕も一人暮らししてましたし料理も得意なので、これ位なら簡単に作れますけどね。
ヤマトさんの胃袋を掴むのは僕だけで充分です」
…………ん? サンドイッチを夢中になって食べてたからよく聞いてなかったけど、エバン君が小声で何か呟いた後、一瞬、場の空気が凍りついたような……
キールはエバン君の方を見て真顔で固まり、エバン君はニコニコしてサラダをフォークで突いていた。
「……キール? ??? どうした……ぅわっ」
固まったまま動かないキールの目の前で開いた手を左右に振っていると、エバン君に腕を掴まれ無理矢理引き寄せられた。
「ヤマトさんも、いつも僕の差し入れの弁当、美味しかったって言ってくれてましたよねー。
そうだ、お昼は僕がヤマトさんのお好きな物作ります、何がいいですか?」
「んー、俺、何でもいいよ。
好き嫌い無いし、エバン君が作るものだったらどれでも美味しいだろうし」
「ヤマトさん……僕、嬉しいです、頑張って作りますね」
エバン君は大きな猫耳をピクピクさせながら、上目遣いで俺の方を見てきた。
わーっ、本当に何度見ても猫みたい……可愛いー。思わずエバン君の頭を撫で撫でした。
「はぅ……ヤマトさんに撫で撫でしてもらえて僕は幸せです……」
「はっ!! ヤ、ヤマト! 撫で撫でなんて羨ま…………じゃない、騙されちゃ駄目だ、ソイツから離れて!」
キールがやっと正気に戻ったのか、慌てて俺とエバン君の間に割り込んできた。
「キール? どうしたんだよ一体」
「そうですよ、邪魔しないであっちへ行ってて下さい」
「ヤマト、さっきの聞いてなかったの!?
エバン君……いや、エバン、ヤマトの前で猫かぶって……んぐっ!」
エバン君が急に席を立ち、何故かキールの口を両手で塞いだ。
「キールさん……ちょっと廊下で話しましょうか」
「んん! んんん!」
「……? どうしたんだよ、キールもエバン君も……」
俺の心配をよそに、キールはエバン君に引きずられるように廊下の方へと出て行ってしまい、食堂には俺一人だけになってしまった。
(何だよ二人共……ここで喋れば良いのにわざわざ廊下に……
はぁ……さっさと食べて片付けよう)
一人残された俺は無言で朝食を食べ進め、空の食器を洗ってキール達が出たドアとは別のドアから出て食堂を後にした。
(……今日は何しようかな……庭と玄関周りが片付いてなかったから、外の掃除でもしようかな)
俺は玄関を出て、玄関周りを簡単に掃いた後に隅の方に置いたままになっていたゴミ袋と小さな鎌を手に取り、あちこち転々と生えている雑草を刈っていった。
中腰になって移動しながら手で抜いたり鎌でザクザク掘ったりしていたけど、範囲が広すぎて中々終わらない。
しかもかがんで草刈りしているうちに腰も痛くなってきた。
やっぱり一人じゃ無理かなぁ……
キールやエバン君にも手伝ってもらおうかな。
でもあの二人、俺を置いて廊下で何かを話してたし……
何だか自分が仲間はずれにされたような気分になって悲しくなってきた。
(……まぁいいや、後からキールに聞いてみよう)
手と足に付いた土を払いながら立ち上がり、休憩がてら門の外へと歩いて行き、気分転換に家の周辺を散歩する事にした。
ここの家も本屋と同じく街道に面している。周囲には他に家も店も無く、見晴らしが良かった。
忙しなく行き交う人達や馬車を眺めながら、俺は街道の端っこをのんびり散歩した。
散歩ついでにゴミを拾っていると、ヤマト君、と声をかけられた。
聞き慣れた声のした方向へ目をやると、馬車の御者席に乗っているディルトさんが馬車を止めて手を振っていた。
俺は嬉しくてつい、駆け足で馬車まで行き、御者席に上がりディルトさんの横に座った。
「ヤマト君、街道のゴミ拾いしていたのかい? 偉いね」
ディルトさんは大きな手で俺の頭を撫で撫でしてくれた。あぁ……癒されるし凄く嬉しい。
「ディルトさん、仕事はもう終わったんですか?」
「あぁ、ただいま、ヤマト君。
明日も夜の仕事だから、ご飯とシャワーを済ませた後少し寝させて貰うよ」
ただいま、の言葉にちょっとジーンとしてしまった。
ディルトさんも今日からあの家で一緒に暮らすんだよなぁ。
そんな事を考えながらぼーっとディルトさんの顔を見ていると、ディルトさんは笑みを浮かべて
「……仕事から帰って愛する人が出迎えてくれるのは……やはりいいものだな……」
そう言いながら俺の肩を抱き寄せ、口にキスをした。
「んっ……ディルトさん……」
「……あともう少しだけ、君を独占させてくれるかい?」
ディルトさんは俺の頭の後ろを手で支え、ゆっくりと何度もキスをしながら押し倒してきた。
「キールごめん、俺も手伝うよ」
「いや大丈夫、もう出来たからヤマトとエバン君は席に着いてて」
キールがカウンターの上に完成した朝ご飯を並べていたので、エバン君と手分けしてテーブルへと運ぶ。
大きな長方形の木製テーブルには真新しい白いテーブルクロスがかけられ、テーブルの中央には花が飾られていた。
お皿を横並びに置き、全て並べ終えたところで席に座る。間を開けて左右の席にキールとエバン君が座り、二人に挟まれる形で俺は真ん中に座った。
今日の朝食はポテトサラダのサンドイッチとグリーンサラダ、スクランブルエッグにベーコンを焼いたもの。
どれも凄く美味しそうで、いただきますの挨拶もそこそこにサンドイッチにかぶりついた。
「んんー、美味しい」
「良かった、ヤマトの口にあって。まだあるからどんどん食べて」
「ホント? ありがとー」
左横にいるキールがニコニコしながら、余分に作ってあるサンドイッチが乗ったお皿を俺の前に置いた。
俺の右横にいるエバン君もサンドイッチを一口二口食べ、牛乳と一緒に飲み込んだ。
「本当ですね、美味しいです。キールさん、料理お上手なんですね」
「え、あぁ…………しばらく一人暮らししてたからある程度のものは作れる」
「フーン……まぁ、僕も一人暮らししてましたし料理も得意なので、これ位なら簡単に作れますけどね。
ヤマトさんの胃袋を掴むのは僕だけで充分です」
…………ん? サンドイッチを夢中になって食べてたからよく聞いてなかったけど、エバン君が小声で何か呟いた後、一瞬、場の空気が凍りついたような……
キールはエバン君の方を見て真顔で固まり、エバン君はニコニコしてサラダをフォークで突いていた。
「……キール? ??? どうした……ぅわっ」
固まったまま動かないキールの目の前で開いた手を左右に振っていると、エバン君に腕を掴まれ無理矢理引き寄せられた。
「ヤマトさんも、いつも僕の差し入れの弁当、美味しかったって言ってくれてましたよねー。
そうだ、お昼は僕がヤマトさんのお好きな物作ります、何がいいですか?」
「んー、俺、何でもいいよ。
好き嫌い無いし、エバン君が作るものだったらどれでも美味しいだろうし」
「ヤマトさん……僕、嬉しいです、頑張って作りますね」
エバン君は大きな猫耳をピクピクさせながら、上目遣いで俺の方を見てきた。
わーっ、本当に何度見ても猫みたい……可愛いー。思わずエバン君の頭を撫で撫でした。
「はぅ……ヤマトさんに撫で撫でしてもらえて僕は幸せです……」
「はっ!! ヤ、ヤマト! 撫で撫でなんて羨ま…………じゃない、騙されちゃ駄目だ、ソイツから離れて!」
キールがやっと正気に戻ったのか、慌てて俺とエバン君の間に割り込んできた。
「キール? どうしたんだよ一体」
「そうですよ、邪魔しないであっちへ行ってて下さい」
「ヤマト、さっきの聞いてなかったの!?
エバン君……いや、エバン、ヤマトの前で猫かぶって……んぐっ!」
エバン君が急に席を立ち、何故かキールの口を両手で塞いだ。
「キールさん……ちょっと廊下で話しましょうか」
「んん! んんん!」
「……? どうしたんだよ、キールもエバン君も……」
俺の心配をよそに、キールはエバン君に引きずられるように廊下の方へと出て行ってしまい、食堂には俺一人だけになってしまった。
(何だよ二人共……ここで喋れば良いのにわざわざ廊下に……
はぁ……さっさと食べて片付けよう)
一人残された俺は無言で朝食を食べ進め、空の食器を洗ってキール達が出たドアとは別のドアから出て食堂を後にした。
(……今日は何しようかな……庭と玄関周りが片付いてなかったから、外の掃除でもしようかな)
俺は玄関を出て、玄関周りを簡単に掃いた後に隅の方に置いたままになっていたゴミ袋と小さな鎌を手に取り、あちこち転々と生えている雑草を刈っていった。
中腰になって移動しながら手で抜いたり鎌でザクザク掘ったりしていたけど、範囲が広すぎて中々終わらない。
しかもかがんで草刈りしているうちに腰も痛くなってきた。
やっぱり一人じゃ無理かなぁ……
キールやエバン君にも手伝ってもらおうかな。
でもあの二人、俺を置いて廊下で何かを話してたし……
何だか自分が仲間はずれにされたような気分になって悲しくなってきた。
(……まぁいいや、後からキールに聞いてみよう)
手と足に付いた土を払いながら立ち上がり、休憩がてら門の外へと歩いて行き、気分転換に家の周辺を散歩する事にした。
ここの家も本屋と同じく街道に面している。周囲には他に家も店も無く、見晴らしが良かった。
忙しなく行き交う人達や馬車を眺めながら、俺は街道の端っこをのんびり散歩した。
散歩ついでにゴミを拾っていると、ヤマト君、と声をかけられた。
聞き慣れた声のした方向へ目をやると、馬車の御者席に乗っているディルトさんが馬車を止めて手を振っていた。
俺は嬉しくてつい、駆け足で馬車まで行き、御者席に上がりディルトさんの横に座った。
「ヤマト君、街道のゴミ拾いしていたのかい? 偉いね」
ディルトさんは大きな手で俺の頭を撫で撫でしてくれた。あぁ……癒されるし凄く嬉しい。
「ディルトさん、仕事はもう終わったんですか?」
「あぁ、ただいま、ヤマト君。
明日も夜の仕事だから、ご飯とシャワーを済ませた後少し寝させて貰うよ」
ただいま、の言葉にちょっとジーンとしてしまった。
ディルトさんも今日からあの家で一緒に暮らすんだよなぁ。
そんな事を考えながらぼーっとディルトさんの顔を見ていると、ディルトさんは笑みを浮かべて
「……仕事から帰って愛する人が出迎えてくれるのは……やはりいいものだな……」
そう言いながら俺の肩を抱き寄せ、口にキスをした。
「んっ……ディルトさん……」
「……あともう少しだけ、君を独占させてくれるかい?」
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