僕と執事と異世界迷宮

沼木ヒロ

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痴漢プレイ

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「好き……とはつまり、友人としてではなく、恋愛対象として好き、だと……?」

 完全にアウェイな状態の一ノ瀬が、二人に歩みよりながら、中指で鼻柱にかかっているフレームをクイッと押し上げた。眼鏡の奥の眼光が鋭く光っていて、千尋はそれに気付いてゾッとする。

「あぁ、勿論ソッチの方……
 アンタは確か、千尋専属の」
 「執事の一ノ瀬と申します。千尋様がいつもお世話になっております」
「いえ、俺の方こそ千尋には色々助けてもらっちゃって」

 千尋を間に挟み、上背がある一ノ瀬と宗介が千尋の頭の上の方で向かい合って話をしている。
 千尋は邪魔かもしれない、そう思い二人から離れようとすると宗介に手首を掴まれた。

「おっと、どこ行くんだよ、千尋。
 力を合わせてとっとと部屋ここの試練をクリアしよーぜ」
「し……試練……そういえばここの試練内容って何なの?」
「コレ」

 宗介が千尋の目の前に試練内容が書かれてある手紙を見せた。そこには

『三人で電車痴漢プレイをする』

 とあった。千尋は思わず二度見した。

「んな……何なの、この痴漢プレイって……!」
「そのまんまだろ。二人が痴漢役で、一人を攻めるんだろうな。あと二人揃うまで待ってたんだけど、千尋達でホント良かった。
 俺、痴漢役で千尋の身体を触りたい」
「私も痴漢役をさせて頂きます。
 千尋様は私と宗介様に挟まれる形にしましょうか。
 千尋様、私の方を向いて頂けますか?」

 適応能力が高すぎる二人に千尋はあっけに取られた。そして有無を言わさず二人に身体を引っ張られ、一ノ瀬の方を向いて二人に挟まれる形で立たされた。
 すると突然、石造りの試練部屋が通勤電車の風景へと変わり、三人は沢山のスーツ姿の人達に囲まれ、一ノ瀬の背後には電車のドアが現れ、窓ガラスの外の景色が流れ、足元がガタガタと揺れている。
 千尋は不安定に揺れる身体を支える為、目の前の一ノ瀬の胸元を掴みつつ、周りを見た。

「えっ!? あれ? 何で!?
 僕達電車の中だ……!
 もしかして外の世界へ出られた!?」

 目を見開き、キョロキョロと周囲の様子を見た千尋の頬と口元が緩んだ。
 周りの乗客達は息をして生きている。人形ではない。
 スマートフォンでゲームをしている学生、コンパクトを開き口紅を塗っているOL、折り畳んだ新聞を読んでいる中年サラリーマン……
 しかし、期待に満ちた千尋とは反対に、一ノ瀬と宗介の表情は厳しいままだった。

「……いや、これ幻覚じゃね?
 神パワーってやつで臨場感出してる感じがする」
「十中八九そうでしょうね。
 あの変態神様は出会った最初の頃、千里眼でしっかりチェックさせてもらうと言っていましたから。
 部屋ここの試練内容も、我々が今から行う行為も何処からか見ているのでしょう。悪趣味な……」
「そ、そっか……そうだよね……」

 一ノ瀬の胸の辺りを掴んだまま、千尋はガクッと肩を落とした。
 千尋も突然変わったこの景色や人々が幻想なのかもしれないと思ったが、周りの人達の様子や電車の揺れがやけにリアルな為、元の世界へ戻れたのかと淡い期待を持ったのだった。この電車の中というリアルな幻想の中で、三人で痴漢プレイをしろという事らしい。現実はそう甘くは無かった。

 目に見えて分かりやすく意気消沈し肩を落としている千尋を背後から見ていた宗介が、突然千尋のうなじを舌でベロン、と舐めた。

「ひっ……!」
「可愛い反応で嬉しいなぁ。
 あーー……千尋……ずっとこうしたかった」

 宗介は舌で舐めた後、千尋のうなじに位置を少しずつかえながら何度もキスをした。
 うなじにキスされたり、舐められたりした事が無い千尋はゾワゾワする感覚に戸惑い、固まった。声を出そうとしても後ろにいるのが自分の知っている宗介ではない様な気がし、どこか恐怖に思って声を発する事が出来ない。
 すると、千尋からの抵抗が無いので許されていると判断した宗介は後ろから手を回し、千尋の胸元を弄りだした。

「俺さ、千尋の事いつも考えてた。
 千尋の顔と体育の時の着替えで見た裸を思い出しながらオナニーしまくった。
 まさかこうやって実物に淫らな行為ができる日がくるなんてさぁ……スゲー嬉しい」
「んっ、あ……や、やめ」

 宗介は千尋のブラウスのボタンを外しながら、耳穴の中に舌を挿れ、直接水音を聴かせた。耳の後ろと腕に一気に鳥肌が立つ。
 一ノ瀬も無言のまま、千尋の少し膨らんでしまった 辺りを指でなぞり刺激した。その双方の刺激に千尋は思わず声が出た。

「あっ……ん……」

 周りの乗客に気付かれない様に、自身の手で口を塞いだ。例え周囲の乗客が幻想のたぐいだったとしても、自分が男に身体を触られて喘いでいる所を見られたくないと思ったからだ。

「口を塞いで声を我慢なさる千尋様、そそりますね」
「口塞いでんの? もっと千尋のヤラシー声聞かせてよ」
「どこまでやったらクリアなんでしょうねぇ?」
「さぁ…………
 取り敢えず、奥の扉のロックが解除されるまで、千尋の身体を痴漢しまくればイイんじゃね?」
「名案ですね。それではもっと啼いて頂きましょうか」

 一ノ瀬と宗介はニヤリと笑い、嫌がる千尋の身体を弄んだのだった。
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